「広告は信頼されていない」危機感あらわに JAA緊急提言の真意とは

業界へ投げかけた「大きな疑問」

日本アドバタイザーズ協会(JAA)は2月4日付で、「広告業界への緊急提言:信頼回復と健全な発展に向けて」と題した声明を発表した。スポンサーによる相次ぐCM出稿停止に発展したフジテレビ問題が契機のひとつだが、本件にかかわらずSNSを含めたメディアや広告への信頼が揺らいでいる近年の状況に警鐘を鳴らした格好だ。

JAAは出稿量の多い大手広告主らで構成される公益社団法人で、会員数は265社(2024年12月31日現在)。フジテレビへの出稿を止めている企業も多く含まれる。

緊急提言は「人権擁護の徹底」「ファクトチェックの徹底」「集団的暴力による被害の抑止」「メディアリテラシーの向上」の4つからなる。具体的には、人権擁護の例として「人権方針」の策定や教育・研修の実施、SNSなどで拡散する憶測に左右されずファクトチェックを行うこと、誹謗中傷に加担しないことなどを挙げた。また生活者のメディアリテラシー向上のための啓発や情報発信に取り組むべきとした。

「広告業界は、広告主の宣伝予算を起点として成り立っています。その立場と責任を自覚し、業界を構成する皆様に『大きな疑問』を投げかけました。皆で襟を正しましょうということです」とJAAの中島聡専務理事は話す。

契約の不徹底など多くの課題

その一例として挙げるのが、広告会社と制作会社、フリーランスを含めたスタッフとの受発注に伴う契約の不徹底だ。「例えばNETFLIXのほうがしっかりした契約が行われています。海外の仕事もしているフリーのディレクターなどは、日本のテレビ番組の仕事はしたくないという声を聞くこともある。国内でも映画業界はスタッフの労働環境の適正化に取り組み始めていると聞きます」(中島氏)。

主にネット広告をめぐるアドフラウド(広告詐欺)への対応やブランドセーフティ(広告出稿によるブランド棄損リスク)なども広告への信頼にかかわる重大なテーマと認識している。また、JAAが現在進めている「広告の定義を再考するプロジェクト」では、このたびの声明の内容も反映したものになりそうだ。「広告は『うざい』と思われ、すでに生活者に受け入れられる素地はないのでは、という意識がある」と中島氏は危機感をあらわにする。

フジテレビをめぐる一連の問題については、「事実関係が明らかにならないうちにお伝えできることはない」としつつも、水面下では対応に追われた。CM差し止めは企業ごとの判断によるものだが、前例のない事態にどのように対応すべきかについて情報がないことから会員間の情報共有を実施した。

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