AI分析プラットフォーム「dotData Insight」は、データから自動で顧客の特徴を抽出し、生成AIと連携して深いインサイトや施策立案をサポートする。人手では気づかなかったインサイトを誰でも簡単に導き出せる点が特長だ。
2024年12月11日に開催された「AI×マーケティングサミット2024」(宣伝会議主催)では、「dotData」の販売代理店であるNEC データドリブンDX統括部 上席プロフェッショナル 遠藤国枝氏が登壇し、同ツールを活用したマーケティングの戦略立案や顧客アプローチについて解説した。
AIが見出す人手では気づきにくいインサイト
遠藤氏はまず、DXが企業変革を推進する具体例として動画配信サービス企業のケースを挙げた。コンテンツ配信のデジタル化を通じて、顧客の視聴傾向に関する膨大なデータを取得し、これらのデータを分析することで、「どの属性の顧客が、どのような種類のコンテンツを好むのか」といったインサイトを導出。このインサイトをもとにしたオリジナル作品の制作・配信を行うという独自のビジネスモデルを構築している。これに対し、「顧客を深く理解することが、ビジネスモデルの変革につながっている」と遠藤氏は説明する。
NEC データドリブンDX統括部 上席プロフェッショナル 遠藤国枝 氏
そして、こうした顧客インサイトを誰でも自動的にデータから生み出せることこそが、「dotData Insight」の強みだと遠藤氏は強調する。従来、データ分析においてインサイトにつながる有効な特徴を抽出する作業は、データサイエンティストが仮説立案と検証を手作業で繰り返し行う必要があり、時間と手間を要する作業であった。
わかりやすい例でいえば、「野球場でポテトを購入する人」の特徴を分析する場合、売上や気象などのデータを組み合わせて手作業で数十の仮説を立てて検証し、専門家の経験と知見に基づき、インサイトを考える必要があった。
それが「dotData Insight」では、目的変数(このケースでは、ポテトの売り上げ量)を設定するだけで、AIが膨大なデータの組み合わせを自動的に探索し、目的と相関性の高い特徴を出力する。その結果、「ビールを1200円以上買う男性が購入しやすい」「気温が28度以下で曇りの日には購入されやすい」などの人間の想像の範囲外にある条件や、判断のポイントとなる閾値まで自動的かつ容易に探索することが可能となる。
また、直感的な操作で特徴的なセグメントを組み合わせて納得感のある条件を設計することや、生成AIと対話形式のやり取りを通じて、抽出した特徴に基づいて仮説の立案や施策の検討を支援できることも特長だ。
マーケターの経験不足もカバー
ここまでの話を振り返り遠藤氏は、マーケターにとっての「dotData Insight」のメリットを、「仕事の進め方」と「仕事の成果」の2つの観点から説明した。
「仕事の進め方においては、特徴の抽出や効果の試算をツールが自動で実施するため、マーケターは顧客理解やデータ解釈に専念できる点が大きな利点に挙げられます。また、データ投入後は最短10分で結果が得られるため、様々な仮説を考えながら分析することが可能です」(遠藤氏)
一方、成果面では、マーケターの経験不足を補完する点を挙げた。近年、マーケティング分野の人手不足が指摘されているが、AIの活用によりマーケターとしての経験が少ないメンバーでも一定の成果を期待できるほか、得られたインサイトをマーケターの新たな視点や知見として蓄積し、今後の発想力を広げるメリットも示した。
「MA(マーケティング・オートメーション)ツールを導入していても、上手く活用しきれていないという課題をお聞きすることもあります。しかし『dotData Insight』で得られたインサイトをMAツールへ投入したり、予測AIへ拡張する活用方法も考えられます。成果への寄与はもちろんのこと、今よりも楽に仕事を進める、また創造力を高めるツールとしても活用いただけると思います」(遠藤氏)
AIがマーケターとデータのハブに
講演では、具体的な活用事例として、ローソンの取り組みが紹介された。同社はレシートに印刷し配布するクーポンの内容を顧客ごとに最適化するなどの取り組みにより、商品購入率の向上を実現。会員データや類似商品の販売データをdotDataに投入して分析し、利用率向上への寄与が考えられるペルソナ像と、それに合わせた最適なデザインを導き出した。AIの活用によりこれまでは数週間かかっていた分析が短時間で完了するようになり、マーケティングのPDCAサイクルも迅速に回せるようになったという。
そして、導き出されたインサイトをもとに、デザインの異なる3種のクーポンを作成。さらに、配布すべきターゲットの予測分析結果と組み合わせ、購入率を12倍に引き上げることに成功した。さらにこの成果は、顧客ペルソナの理解を深め、メーカーの商品開発やマーケティング活動の強化にもつながったという。
この例のように、マーケティングプロセスにおける「dotData Insight」は、MMM(Marketing Mix Modeling)をデータ側面で補完し、的確な打ち手を探るための重要なインサイト探索ツールとなる。例えば、「効果の分解」においては、過去のプロモーションデータを投入することで、「どの顧客にどの条件で施策を打った結果、行動に結びついたのか」を特定できる。また、生成AIとの連携で施策の立案を支援するほか、予測については「dotData Enterprise」を用いることで可能となる。
最後に遠藤氏は、「dotData Insight」の今後について次のように述べた。
「あらゆる組み合わせから有用な特徴を探索し出力する『dotData Insight』、それを解釈して業務に落とし込むマーケターのドメイン知識や生成AIが持つ世界知識など、これらを組み合わせることでこれまでよりも効果的なマーケティングにつながると考えています。『dotData Insight』が、マーケターやリサーチャーとデータをAIでつなぐハブになれたらと思っています」
お問い合せ
NEC
データドリブンDX統括部
Mail:contactus@dotdata.jp.nec.com
URL:https://jpn.nec.com/solution/dotdata/product/insight/index.html
