日本全国に視野を広げ、『物語』を発信していきたい
総合出版社が活用可能な資源は多々あるが、一方で出版社との付き合いが少ない企業からすれば、どんな提案をしてくれるのかがわかりづらい面もある。
そこで講談社では、より出版社の資源の活用を促進するため、コンテンツ提供型コンサルティングサービス「KiisS」(キーズ)や、マーケティングリサーチや調査・分析サービス「講談社メディア・コミュニティ・ラボ(MCL)」、デジタルマーケティングサービス「OTAKAD」(オタカド)など、パッケージ化したサービスの開発も近年、強化してきた。
こうしたパッケージ商品も活用しつつ、「具体的な施策に落ちる前段階の課題の共有時点から参加させてもらえると、総合出版社ならではの提案ができるはず」(佐藤氏)という。
講談社 ライツ・メディアビジネス本部 局次長 兼 メディアプラットフォーム部 部長の長崎 亘宏氏は「今回のメディアアワードでは、『佐賀県副知事 島耕作」による佐賀県の情報発信企画や、香川県の海老専門の水産会社海老乃家と『with class』がコラボした商品開発の事例など、地方自治体や地域企業の企画も受賞しました。日本全国に視野を広げると、まだまだ出会えていない魅力的な街や企業がたくさんあるはず。いかにして、それらとの接点を作り、共に『物語』を発信していくのかが次の課題と考えています」と語る。
Webメディア『with class』と海老専門ブランド「海老乃家」がコラボし、読者の声を聞きながら開発された「揚げない天然海老フライ」。
また地方創生文脈での地方自治体とのコラボや地域の企業との共創を考える上では複数抱える、各メディアブランドの専門性が大きく生きるはず、と長崎氏は考えているという。
「ファッションや美容に強い『ViVi』が、『セレッソ大阪ヤンマーレディース』とコラボしたように、各メディアが持つ世界観とコンテンツを、それぞれの地域特性と融合させる提案も可能なはず」(長崎氏)との考えがあってのことだ。
佐藤氏も「東海道新幹線の周年企画に『現代新書』での書籍化を提案し、30名の作家やタレントさんをアサインしたように、領域をまたぐコラボ提案には大きな可能性を感じている」と話す。
東海道新幹線の開業60周年を記念し、東海旅客鉄道と講談社現代新書がコラボレーションし、30名の執筆陣が「新幹線の思い出」を紡いだ、特別な現代新書を刊行した。