日本基準ではなく、グローバル基準で考えるという気づき
木村:向井さんから見て、日本人が受賞するための鍵についてどう思われますか?
向井:日本基準ではなくて、グローバル基準で考えるということではないかと思います。日本国内のクリエイティブは、日本人のインサイトに基づいて、あるいは日本のトレンドに基づいて考えていくものですが、国際広告賞であることを考えると、もっとユニバーサルにみんながそうだなって納得できるように考えるべきだなと思います。視野の持ち方、視点の持ち方をよりグローバルでの共感性で考えていかないといけない。クリエイティブをつくるときに、例えばカンヌライオンズで審査するアジア人以外の人がどう感じるかというところまで突っ込んだ話をすべきだと思います。
木村:日本といえば2024年は、15カ国代表の20代の若手が課題を与えられて競い合うヤングロータスで、高橋かのん・宮崎琢也ペアがショートリストに勝ち残りました。壇上で堂々とプレゼンテーションして、最終的には会場のオーディエンスの投票で決まるポピュラーボートで、日本が1位になりました。
向井:ヤングロータスは盛り上がるし、日本人として本当にうれしかったですね。ヤングロータスの審査は初めて見たのですが、あぁ、若者たちが頑張っている!その姿はこれからの広告の未来に向けて、非常に良いものだなと感じました。
2024年に開催された「アドフェスト」での「ヤングロータス」
木村:私も先日、ヤングロータスの日本代表を決める審査をさせていただきました。プレアドフェストというイベントでショートリストを発表したのですが、何十組もの参加者たちが次々にやってきて自分たちの案のどこがよくて何が足りないのかを真剣な眼差しで聞いてくるんです。本番には1組しか参加できませんが、日本代表に選ばれなくてもそのパワーがあればみんなグローバルで戦っていけると思いました。
さて、向井さんはアドバタイザーが国際広告祭に参加する意味はなんだと思われますか?
2025年2月に行われた「プレアドフェスト」の様子。
向井:今回のアドフェスをはじめ、カンヌライオンズなど、その後もいろいろと学ぶ中で、広告コミュニケーションというのは単なる表現ではない。製品や概念を世の中に広めるための、その手法としていかに新しいものを考えていくかということであり、ビジネスに直結するものなんだとあらためて思いました。アドバタイザーがその辺りの知見をちゃんと持ちながら自分たちが何をすべきか、どのように表現をしていくべきか、そのために誰と一緒に組むべきかということを明確にすることが、自社の事業の発展につながるのだと考えると、私たちが国際広告祭に参加することには大きな意味があるように思いました。
木村:国際広告祭は個人のクリエイティビティをアップデートするのにも、組織の競争力を高めるのにも役に立つということですね。向井さんは、今年のアドフェストには参加されますか?
向井:今年私は参加しませんが、部内から3~4人のメンバーに出てもらおうと思っています。これまではクリエイティブの担当だけが参加していたのですが、そうではなく、メディアもしくはオウンドサイトのメンバーにも出てもらおうと思っています。それはなぜかと言うと、前回参加した時に、これは単純にクリエイティブな表現ということではなくて、いろいろな意味でのコミュニケーションの新しい手法であり、マーケティングとしての大事な視点だなと思ったからです。なので、そういう視点を貪欲に仕入れる場だという意味を持って、何かそんなことを感じてもらいながら、私たちの組織を強くするために学んできてほしいと伝えています。
木村:3月のアドフェストで、向井さんの部内の方と、会場やパーティでお話できるのを楽しみにしています。今日はありがとうございました。
