味の素が販売している炊飯器専用調理料「白米どうぞ」が売れている。お米を炊飯する際に入れると糖が穏やかに吸収されるご飯が炊けることもあり、糖質ケアを必要としている消費者の間でも話題になっているという。発売後、半年で60万食を突破した「白米どうぞ」ヒットの仕掛け人に、売れるまでの背景を聞いた。
※本記事は『販促会議』2025年2月号 連載「ヒットの仕掛け人に聞く」への掲載内容から抜粋してお届けします。
糖質ケアをしていてもおいしく白米を食べられるように
──「白米どうぞ」はどのような商品なのでしょうか。
「白米どうぞ」は2024年3月に味の素から発売した炊飯器専用調理料です。最大の特徴は、炊飯器でお米を炊く際に入れると、糖が穏やかに吸収されるご飯が炊けること。酵素の働きで白米のでんぷんが分解されにくい構造になることで、おいしさはそのままに、糖が穏やかに吸収されるご飯が炊けるという仕組みになっています。
これまで糖質を下げた白米を食する場合は“糖質オフ米”や玄米、もち米などを選ぶしかなかったですが、炊飯器専用調理料としてGI値を下げたお米を食べられるようになったのは日本初です。
2024年3月に発売して以来、味の素が運営する自社通販のみで販売を行っていますが、半年で60万食を超える実績を残しています。味の素の製品は小売で販売されることがメインであるなかで、自社通販専売の製品がここまで売れることは珍しいと思っています。
発売まで9年 技術開発と調査に注力した
──日本初の製品とのことですし、開発にもそれなりに時間を要していそうです。
実は発売までには9年かかっています。先ほども申し上げたとおり、糖質を気にしながらお米を食べる場合は糖質オフ米や玄米、もち麦を選ぶ方法がほとんど。糖質ケアを行う人たちが白米をおいしく食べたいと思っても、難しかったのです。技術的にも、白米の味を落とさず、かつ糖質ケアができるものは存在していませんでした。
しかし、糖質は摂り過ぎると健康課題が生じる恐れもある栄養素。健康意識の高まりとともに、糖の吸収を抑制する機能があるとされる関連製品の国内市場規模は、2015年から年平均で約13%伸長しています。2022年には約943億円にまで拡大しました。つまり糖質ケアのニーズは高まっているのに、お米でそのニーズを満たすことは難しかったのです。
味の素が着目したのはこの「糖質ケアをしながら、おいしいお米が食べたい」というニーズ。9年かけてようやくそのニーズに応えられる製品を発売することができました。
──ニーズを理解する際に、意識して行ったことはありましたか。
調査にかなりの時間をかけました。味の素の商品開発では、消費者の生の声を聞く定性的なインタビュー調査を重視することが1つの特徴としてあります。「白米どうぞ」の開発にあたっても、デプスインタビューは力を入れた部分でしたね。
とくに「白米どうぞ」のターゲットは、“糖質ケアが必要な人”と“糖質ケアをしている人と一緒に暮らしている人”と明確です。なので、より良い商品にするためにも、ターゲットの皆さんの声を拾う必要があると考えていたので、発売前のターゲットへのヒアリングは徹底的に行いましたね。
発売半年で60万食突破 想定以上に売り上げられた理由
──ターゲットは明確だったとのことですが、売上の目標はどのように設定していたのでしょう。
「白米どうぞ」は2024年3月に発売してから半年で60万食を達成しました。販売チャネルは自社通販に絞っての展開ですが、予想外の売れ行きではあります。本来であればもう少し先に達成する数値だと見込んでいたのが正直なところです。
ですが、「白米どうぞ」はたしかにターゲットが明確ですし、一度製品を認知してもらえれば新規獲得に繋がることはある程度予想していました。また、商品を届けたい対象が明確だということは、不特定多数に流通で販売しなくても自社通販を訪れて購入していただく流れがジャーニーとして想像もつきやすかったですね。
ターゲットのニーズにハマっただけではなく、売りまでの見立てが立てやすかったのも、ヒットの要因として考えています。
──ニーズを満たす商品とのことですが、それでも製品の認知を獲得する施策は必要だと思います。どのようなことに注力なさったのでしょうか。
味の素は、普段流通に並んでいる製品や代表的なブランドも展開していますが、「白米どうぞ」はまだ知られていないブランドですし、それらと比較しても広告・宣伝やプロモーションに多くの予算を割けるわけではありません。そこで注力したのがPRです。メディアに取り上げてもらうための仕掛けを戦略的につくっていきました――
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