「単なるアナログメディアは過去の姿」 今勝てるDM活用方法

デジタルマーケティングが主流となる現代において、従来のダイレクトメール(DM)は一見アナログな手法と捉えられがちだ。しかし、デジタルデータとの親和性や強力なコンバージョン力などの特性を軸に今も力強く進化を遂げている。郵便料金の値上げや制作コストの高騰といった課題に直面しながらも、DMがどのようにその価値を高め、役割を果たしていくのか。日本ダイレクトメール協会専務理事の椎名昌彦氏が解説する。

※本記事は『販促会議』2025年3月号 特集「デジタル時代におけるDMの価値を再考する」への掲載内容から抜粋してお届けします。

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椎名昌彦氏

一般社団法人日本ダイレクトメール協会
専務理事

1979年、大学卒業後に電通入社。1985年、ダイレクトマーケティング専門広告会社、電通ワンダーマンの設立と同時に出向。2005年に電通に復帰後は通販、ダイレクトビジネス全般の業務の傍ら、グループ事業設立プロジェクトにも関与。2011年、一般社団法人日本ダイレクトメール協会専務理事就任。日本郵便主催「全日本DM大賞」最終審査委員。

DMの平均開封率は75%、閲読後の行動喚起率は20%前後

皆さんはどれくらい、DMの魅力を理解なさっているでしょうか。私が考えるDMの最大の強みは「確実に届く」ことと「訴求力」です。他のメディアと比較しても、そのリーチ力と行動喚起力は段違いです。

実際に日本ダイレクトメール協会の調査では、宛名付きDMの開封・閲読率は75%以上、閲読後の行動喚起率も20%前後と高い水準を記録していることがわかりました。メールやSNSなどのデジタルマーケティング施策ではあまり見ない数字ですよね。

ですが、デジタルでのコミュニケーションが主流の今では、DMのようなアナログメディアを活用しようという考えに至る方は少ないと思います。費用対効果を厳しく追うあまり、効果測定が容易なデジタルコミュニケーションに注力することも当然の流れだと理解できます。

しかし、マーケティングの担当者の皆さんの中には、デジタルアプローチでのコンバージョンに限界を感じていることも多いのではないでしょうか。データをもとにターゲティングしたはずなのに「見られない」「その先のアクションに続かない」ことに気づき始めている人もいるはずです。

そういった課題を持っている場合は、一度DMという選択肢を考慮してみてもよいと思います。冒頭でも述べた調査結果を見ても、DMはデジタルで抱える到達率、コンバージョン力の課題を補完し得るものになるはずです。

イメージ 表 図 DMとデジタルメディア(Eメール)

図 DMとデジタルメディア(Eメール)

なぜDMは強大なコンバージョンパワーを持つか

このコンバージョンパワーを実現する理由のひとつが、デジタルでは伝えられない「リアルの力」です。手元に実物が届き、デザインは作り込まれ、なおかつ宛名に自分の名前が書かれている。この特別感はデジタルコミュニケーションでは提供できないものだと思います。不特定多数に送られることがわかるメールマガジンと比較しても、受け手が得る「特別扱い感」も大きくなるでしょう。

また、この“実物で届くOne to Oneコミュニケーション”は若年層にも大変有効であることがわかっています。若年層に向けたマーケティングコミュニケーションを行う際に最初に想起するのはデジタル、とりわけSNSだと思いますが、なぜ若年層にDMが響くのでしょうか。

大きな理由は「新鮮さ」です。デジタルネイティブ世代にとって、物理的な郵送物が自分宛てに届くという経験は多くありません。さらに、内容が優れたデザインだったり、自分に合うようにパーソナライズされていると「私のために手間をかけてもらった」と感じる傾向が強いことが調査から明らかになっているのです。

制作コスト高騰は逆風か? 今勝てるDM活用方法

DMの持つ高コンバージョンメディアとしての特徴を述べてきましたが、高コストという弱点もあります。現在DMが直面している最大の課題は、郵便料金の値上げや制作コストの高騰です。

しかし、こうした逆風下でも、コスト効率を最大化するための方法は存在します。それが、AIやビッグデータを活用したターゲティングの精度向上です。要は、無駄打ちを防ぎ、限られた予算で通数を減らしながら高い成果を得られるように戦略を練ることがポイントになります。

実際に自社の1stPartyデータだけではなく、ECプラットフォームや大手ポイントサービスが持つ膨大な購買データを活用し、スコアリングで高いコンバージョンが見込める層に絞り込んでDMを送る手法で成功する事例が増えています。

データを用いてターゲットを絞り込むことのメリットは、単にコストを削減することだけはありません。DMの内容をより個別化・最適化して受け手の興味を引きやすくなるコンテンツ制作にも繋げることができ――

本記事の全文は、月刊『販促会議』3月号本誌 、もしくはデジタル版(ご購読が必要です)にてお読みいただけます。

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