「飲まない人」の新市場創出 渋谷スマートドリンキングプロジェクトの挑戦と展望

社会の価値観が変わる中で求められる新しい飲み方

社会の価値観は、いま大きく変化しています。2024年、昭和と令和のギャップを描いたドラマが話題になりましたが、実際にこれまでの常識を改めて見直す時期にきています。企業のコンプライアンスが厳しく問われる中、お酒の飲み方やその影響についても見直されるべき時代になりました。

お酒は、人を解放することもあれば、時には課題を生むこともあります。渋谷ではハロウィーンが象徴的なイベントとして取り上げられますが、日常的に路上飲酒の問題が発生し、マナーの悪化や不適切な行動が顕著になっています。

コロナ禍を経て、路上での飲酒などが増加したことで、ゴミの放置が深刻化し、空き缶やペットボトルが散乱するなど、街の景観にも影響を与えています。こうした問題に対して、単に規制を強化するだけでは根本的な解決にはつながらず、渋谷区や地域も、新たなアプローチの必要性を認識しています。

そこで重要になるのが、「飲めるか、飲めないか」ではなく、「何を選び、どう楽しむか」という視点です。

まさに飲み方の多様性の推進です。「スマートドリンキング」「スマドリ」という考え方が示すように、お酒を飲む・飲まないは個人の自由であり、その選択が尊重される文化が求められています。

これまで、飲み会の目的は“お酒を飲むこと”が中心に置かれてきましたが、本当に大切なのは、時間や空間を共有し、コミュニケーションを楽しむことではないでしょうか。飲み方の選択肢が広がり、多様な楽しみ方が受け入れられることで、街や企業にとっても、より心地良い環境が生まれていくはずです。

こうした視点の変化が、結果的に路上飲酒の問題解決にもつながる可能性があります。飲酒の有無にかかわらず、誰もが安心して楽しめる環境を整え、「飲み方の多様性」を自然に受け入れる文化を醸成することが、持続可能な街づくりにつながるのではないでしょうか。

今回は、2022年にスタートした「渋谷スマートドリンキングプロジェクト」の事例をもとに、渋谷未来デザインやスマドリ(アサヒビールと電通デジタルにより設立された合弁会社)、賛同企業、大学、渋谷区や商店街などの産官学民の共創による実践事例を紹介します。

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長田新子(渋谷未来デザイン 理事・事務局長/NEW KIDS 代表)
長田新子(渋谷未来デザイン 理事・事務局長/NEW KIDS 代表)

AT&T、ノキアにて通信・企業システムの営業、マーケティング及び広報責任者を経て2007年にレッドブル・ジャパンに入社。コミュニケーション統括責任者及びマーケティング本部長(CMO)として10年半、エナジードリンクのカテゴリー確立及びブランド・製品を市場に浸透させるべく従事し2017年に退社。2018年から渋谷区が主体になり設立された渋谷未来デザイン理事・事務局長として、都市の多様な可能性をデザインするプロジェクト活動を推進。コロナ禍で渋⾕区公認「バーチャル渋⾕」を⽴ち上げ、「バーチャルハロウィン企画」は第7回JACEイベントアワード最優秀賞「経済産業⼤⾂賞」(2020年度)を受賞。2023年に日本アドバタイザーズ協会デジタルマーケティング研究機構の第11回Webグランプリ にて「Web人賞」、都市のXRスポーツイベント「AIR RACE X」はSPORTS INNOVATION STUDIOコンテストにて「パイオニア賞」受賞。2018年には、NEW KIDSを立ち上げ、ブランド、コミュニティ・アスリート・イベント関連のアドバイザーや講演活動等を行いながら、行政活動支援、業界発展からスタートアップ支援まで幅広く行なっている。

長田新子(渋谷未来デザイン 理事・事務局長/NEW KIDS 代表)

AT&T、ノキアにて通信・企業システムの営業、マーケティング及び広報責任者を経て2007年にレッドブル・ジャパンに入社。コミュニケーション統括責任者及びマーケティング本部長(CMO)として10年半、エナジードリンクのカテゴリー確立及びブランド・製品を市場に浸透させるべく従事し2017年に退社。2018年から渋谷区が主体になり設立された渋谷未来デザイン理事・事務局長として、都市の多様な可能性をデザインするプロジェクト活動を推進。コロナ禍で渋⾕区公認「バーチャル渋⾕」を⽴ち上げ、「バーチャルハロウィン企画」は第7回JACEイベントアワード最優秀賞「経済産業⼤⾂賞」(2020年度)を受賞。2023年に日本アドバタイザーズ協会デジタルマーケティング研究機構の第11回Webグランプリ にて「Web人賞」、都市のXRスポーツイベント「AIR RACE X」はSPORTS INNOVATION STUDIOコンテストにて「パイオニア賞」受賞。2018年には、NEW KIDSを立ち上げ、ブランド、コミュニティ・アスリート・イベント関連のアドバイザーや講演活動等を行いながら、行政活動支援、業界発展からスタートアップ支援まで幅広く行なっている。

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