日本人の4割以上は飲めない体質?
このプロジェクトを通じて、私自身も多くの気付きを得ました。アサヒビール社の全国調査によると、日本の20歳~70歳の約9000万人のうち、「頻繁にお酒を飲む」人は約2000万人。「あまり飲まないライトユーザー」も同じく約2000万人おり、「飲まない・飲めない」人は約5000万人にのぼります。
つまり、お酒を飲めない人は決してマイノリティではありません。しかし、従来の飲み会文化では、飲めない人が「飲めなくて、すみません」と言わなければならない場面が多くありました。
一方で、「飲める人も常に飲みたいわけではない」という意識も広がっています。「飲む・飲まない」の選択を尊重し、気兼ねなく楽しめる環境をつくる必要が今迫っているのです。
渋谷から生まれた新たな文化、その先へ
2022年度の優れたマーケティング活動を表彰する、第15回「日本マーケティング大賞」では、「スマドリバー渋谷」がグランプリを受賞しました。適正飲酒の啓発活動を渋谷未来デザインや企業、大学、地域団体と連携して推進したことも評価の一因となったと聞き、自分ごとのように嬉しく感じています。
Z世代を中心に話題を生み、飲めない人だけでなく、飲める人の意識も変え、「一緒に楽しめる社会」への第一歩を実現した点が注目されました。特に、「飲まない人の新市場創出」への挑戦が、新たな価値観を生み出すマーケティングの好例として高く評価されています。
もちろん、受賞の主体はスマドリ社ですが、渋谷での実践が社会全体の価値観を変えるきっかけとなり、共創の重要性を示す機会になったことは、私たちにとっても大きな意味を持ちます。そして、この流れを単なる成功事例で終わらせるのではなく、さらに広げていくことが、私たちに課せられた役割だと考えています。
責任あるドリンクカルチャーとして、未来へ
本プロジェクトが目指すのは、「お酒を『飲む・飲まない』の選択を自由にし、誰もが気兼ねなく楽しめる社会をつくること」。
ノンアルコールをただ推奨するのではなく、飲み方の多様性を尊重し、個人の意思が守られることが当たり前の社会を築くことが目的です。そして飲み方から人々のマナー含めた行動に発展していってくれたらと思っており、渋谷から始まったこの動きが、全国へ、そして世界へと広がることを願っています。
最後になりますが、このプロジェクトで大事な要素はマーケティングの新たな役割です。このチームはマーケティングの視点を持ったメンバーが重要な役割を担っています。これからの時代、マーケターに求められるのは、単に「売る」ことではなく、「社会の価値観を変える」視点を持ち、共創活動などを通じて社会課題解決や新たな文化を生み出すこと。
この活動は、渋谷から社会的な意義を発信するのみならず、Z世代の巻き込みとブランド訴求、地域、大学や企業連携による関係人口の増加と市場の広がりなどがWIN-WINのケースが生まれています。このような産官学の取り組みが、未来のマーケティングの在り方を考えるヒントになればと思っています。
