韓国の流行りから学ぶ、ヒットトレンドが生まれる秘訣・10箇条

「韓国トレンド研究室」、第8回目の後編です!後編では前編で紹介した流行などから見えてくる「ヒットトレンドが生まれる秘訣・10箇条」についてお話しします。

2. トレンドからみる、ヒットの秘訣・10箇条

本当はカムジャパン、コグマパン、ヨアジョン、タンフル、パラサイト、新感染……

まだまだ、紹介したいトレンドが本当にたくさんありますが、今回はこのあたりで切り上げて、事例に共通して言える「トレンドが耐えず生まれ続ける秘訣」をまとめていきます。

①海外から輸入したものも自国流にアレンジ

前編で紹介したように、トレンドの中には、実は「韓国発祥」ではないものがたくさんあるのですが、日本では「韓国で流行っているもの」として紹介されています。

その理由のひとつに「自国流のアレンジが加わる」というのがあります。

基本的に日本では、海外で流行っているものは「そのまま」の状態で上陸し、伝播していきます。しかし韓国では、上陸したものは、自国でどんどんアレンジを加えて伝わっていきます。

例えば、ドバイチョコレートも、「ドバイチョコクロワッサン」「ドバイチョコクッキー」「ドバイチョコフィナンシェ」……と、国内でどんどん進化して、それに伴い流行していくのです。

②目の付け所の筋の良さ

①で紹介したように、韓国のトレンドは、韓国が発祥ではないものが多いです。例えば、大人気な「塩パン」も日本の塩パンがもとになっているそうです。

ソンスにある1日7000個売れる大人気の塩パン専門店「ジャヨンド塩パン」。

ここでポイントなのは、「海外で流行っているものを持ってくる」のではなく、「流行るポテンシャルのあるものを国内外問わず“発掘”する」という点です。

日本だと、タピオカが流行ったから上陸し、グリークヨーグルトが流行ったから上陸し……と、国外で流行ったものがそのまま入ってきます。

しかし韓国では、塩パンのように「別に今バズっているわけではないけど、外国で安定で人気があるもの」や、マラタンのように「外国の伝統的な料理」などもどんどん取り込み、自国流にして流行らせていきます。

このように【国内外からトレンドの原石を発掘する→自国流にアレンジして国内でトレンド化する→国内で流行ったアレンジ商品が国外でもトレンドに】という仕組みで、トレンドが世界へと波及していくのです。

③「流行っている」状態の可視化がうまい

①②に続いて、「流行っている」状態を可視化するのが上手という特徴もあります。

例えば、『イカゲーム』だと、大人気のキャラ「KAKAO FRIENDS」とコラボしたり、世界のさまざまな国でポップアップやイベントを開催したり、とにかく巨大なビジュアルを出したりと、可視化していくことで「今これが流行っています!」という雰囲気を出すことが上手です。

「KAKAO FRIENDS」とのコラボ。

新大久保で体験できる『イカゲーム』のポップアップ。

④コンビニの持つ大きな役割

韓国のトレンドの誕生には、コンビニも大きく貢献しています。

韓国のコンビニは日本のコンビニに比べ、コラボ商品がたくさんあります。前編で紹介した、「栗ティラミス」もそうですし、キャラクターとのコラボも多いです。ドバイチョコレートも、瞬く間にコンビニで発売されました。

日本では、ドバイチョコレートがやっと2025年1月に発売されたので、このスピード感の違いは一目瞭然かと思います。

⑤コラボまでのスピード

前編でも紹介したように番組で出た「栗ティラミス」が、番組最終回の2週間後にはコラボ商品として発売されているなど、コラボまでのスピードがとにかくはやいです。

これは韓国の「빨리빨리(早く早く)」という文化に起因していて、韓国では仕事もメッセージの返信もすべてはやいです。

⑥トレンドの掛け算

例えば、マラタンフルの歌とダンスがSNSで大バズりして、タンフルが人気になったり、『白と黒のスプーン』のように番組が大ヒットして、そこから栗ティラミスが人気になったりと、トレンドからトレンドが生まれる「トレンドの掛け算」で大きな流行が生まれています。

⑦ネーミング

今回紹介できなかったトレンドのひとつに「ヨアジョン」というヨーグルトアイスのチェーン店があるのですが、この店名は“ヨーグルトアイスの定石(ジョンソク)”を略した名前です。

また「タオルケーキ」も、“タオルとケーキ”というなんの共通点もない組み合わせのネーミング。「モッパン」も“먹는(食べるシーン)”と“방송(放送)”を組み合わせて「モッパン」になっています。

ベスキンラビンス(サーティーワンアイスクリーム)のアイスのメニュー名も「ママは宇宙人」「風と共に去りぬ」など、もはや味が想像できないようなユニークな名前をつけられていたりします。

このように、韓国では“なんか気になる・頭に残るネーミング”の商品が多いように思います。

⑧ミームになりやすい素材があるか

『白と黒のスプーン』では、料理人たちのセリフなどから、たくさんのネットミームが生まれました。タンフル・マラタンなども、歌やダンスがSNSのショート動画でたくさん使われています。

やはり今の時代において、“バズ”が生まれるためにSNSは欠かせません。しかし、SNSでバズらせるには何かしらの“バズる要素”が必要になってきます。

このように、ミームになりやすい素材があると、どんどんと勝手にバズり、浸透していくのです。

⑨世界を見据えたマーケティング戦略

『イカゲーム』がまさにそうですが、“なんか世界でも流行った”ではなく、最初から「世界を見据えた戦略」を立てています。

これは国土が小さく、人口も多くない(=国内の市場規模が小さい)ためです。K-POPが国外でも大人気なのも、世界に向けてどんどん発信しているからなのです。

⑩文化

トレンドがたくさん生まれる仕組みとして、韓国の文化がマッチしているというのも大きな理由です。

1つ目は、⑤でも紹介した「빨리빨리(早く早く)」で、とにかくすべてにおいて、スピード感を重視しています。

2つ目は、タオルケーキでも紹介した「남는 건 사진 밖에 없다(残るのは写真しかない)」で、写真をたくさん撮る文化なので、やはりビジュアルに惹きがあるものが流行りやすいのです。

3つ目は、「全員が合わせる」文化です。韓国の友人にも聞いたのですが、韓国では、服も髪型もコスメもスポットも、流行っているものを皆一様に選ぶそうです。

日本では「流行っているから嫌だ」という気持ちを持つ人も多いですが、みんなに合わせることが良しとされている傾向にあるようです。そのため、一度トレンドになりかけると、どんどんと雪だるま式に大きなトレンドになっていくのだと思います。


以上、実際に流行っている(流行った)ものから、トレンドが生まれる秘訣を考えてみました。

3.まとめ

今回は、韓国のトレンドと、トレンドが生まれる秘密について、分析しました。ここまで読んでくれた皆さま、ありがとうございます!

さて、次回のコラムのテーマは「K-POPアイドルから学ぶ、コンテンツプロデュース ①KPOPアイドルの仕組み」篇です!

次回もぜひお楽しみいただけると嬉しいです。

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佐々木日菜(kakeru プランナー/イラストレーター)
佐々木日菜(kakeru プランナー/イラストレーター)

大学時代、フリーのイラストレーターとして活動。過去に制作した展示は、「どっちかといえばこっち展」「いい人すぎるよ展」「やだなー展」「みんなどんな感じ?展」「いい人すぎるよ美術館&切ないすぎるよ博物館」「うれしいすぎるよ展&そういうことじゃないんだよ展」など。展示ではイラストも担当している。著書に「いい人すぎるよ図鑑」。

佐々木日菜(kakeru プランナー/イラストレーター)

大学時代、フリーのイラストレーターとして活動。過去に制作した展示は、「どっちかといえばこっち展」「いい人すぎるよ展」「やだなー展」「みんなどんな感じ?展」「いい人すぎるよ美術館&切ないすぎるよ博物館」「うれしいすぎるよ展&そういうことじゃないんだよ展」など。展示ではイラストも担当している。著書に「いい人すぎるよ図鑑」。

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