ADFEST チェアマン・Vinit Suraphongchai氏「コクリエーションを生む“Collide(衝突)”の場を提供したい」

カンヌライオンズやアドフェストなどの国際広告賞では、最新のケースやトレンドがわかる授賞式やセミナー、作品展示に加えて、ネットワーキングのためのパーティが行われます。ここには近年、エージェンシーやプロダクションからだけでなく、アドバタイザー、つまりクライアントサイドからマーケターやクリエイターが多く参加しています。彼らは何を目的に参加し、ここで何を得ているのでしょうか。
今回は、ADFESTの創設者であり、チェアマンを務めるVinit Suraphongchai氏にお話を聞きました。

写真 人物 ADFEST Founder & Chairman Vinit Suraphongchai氏

ADFEST Founder & Chairman
Vinit Suraphongchai氏

ブランドが大胆かつ勇敢になるための場

木村:今日は、1998年の設立以来、ADFESTのChairmanを務めているVinit Suraphongchaiさんに3月に行われるADFESTについてお話を伺います。Vinitさん、まずADFESTについてご紹介ください。

Vinit:ADFEST(Asia Pacific Advertising Festival)は、1998年に創設されたアジア太平洋地域最大の広告祭の1つで、アジアのクリエイティビティを称える祭典です。変化の速い広告業界の進化と発展を反映する、アジア随一のクリエイティブフェスティバルです。受賞作品を通じてアジアのクリエイティブのベンチマークを設定するだけでなく、ナレッジやインスピレーションを通じて、その水準を高めています。

木村:他の広告祭と比べて、ADFESTにはどんな特徴がありますか?

Vinit: ADFESTは、アジア特有のローカルカルチャーを認識し、推奨し、促進することに重点を置いています。アジアという地域は非常に多様性に富んでいるため、そのことを誇りとして称えていくべきだと考えています。

木村: ADFESTをはじめ国際的な広告賞には、広告会社や制作会社のみならず、アドバタザーの方も参加されています。クライアントサイドのマーケターがADFESTに参加することで得られるものは何だと思いますか?

Vinit:本当は大胆な冒険をしたいけれど、なかなかそれができず、往々にして保守的で無難なアプローチを選んでしまう。そんな課題を持っているクライアントの方も多いのではないでしょうか。

ADFESTに参加して、さまざまなキャンペーンのシャワーを浴びることで、驚いたり、感心したり、時に気持ちが鼓舞されたりと、刺激的な体験ができると思います。そして参加後、自社のブランドに向き合ったとき、これまでよりきっと制作や企画に対して大胆かつ勇敢になり、モチベーションが高まるのではないでしょうか。

木村:なるほど。本コラム第1回でヤマハの加藤剛士さんは、広告祭は自分たちの取り組みを堂々と世界に問う場だとおっしゃっていました。第2回に登場いただいた味の素の向井育子さんは、広告を体系的に学ぶのに最高の場所だとおっしゃっていましたが、ブランドが大胆かつ勇敢になるための場でもあるんですね。

Vinit: はい。そして、もうひとつ得られるものがあります。ADFESTは特にネットワーキングの場として、これ以上ない広告祭なんです。

木村:確かに!私は毎年参加していますが、ADFESTでできた友達は多いですし、ここで出会った人々とその後一緒に仕事をすることが数多くありました。なぜADFESTはネットワーキングに最適な広告祭なんでしょうか。

Vinit:それは、私たちがこれまで積極的に取り組んできたことの一つだからです。参加いただいた方はわかると思いますが、このフレンドリーな「ADFEST体験」は、私たちのフェスティバルならではの特徴であり、誇りでもあります。

それから、フェスティバル会場だけではありません。サンサンと輝く太陽の下、心地よい気候、砂浜、海、そしてもちろんタイ料理やタイならではのおもてなしもありますからね。ここを訪れる人が気に入らない要素があるでしょうか?

木村:今後はどのような広告祭を目指しますか?

Vinit:ADFESTは、ナレッジの提供やクリエイティブのレベル向上を通じて、今後も引き続きこの地域のクリエイティビティの最前線であり続けます。クリエイティビティと新しいテクノロジーの進化のバランスを保ちながら、時代とともに変化し、そのコアバリューを維持していく考えです。

新しいつながりから、新しいクリエイティブが生まれる

木村:2025年のADFESTのテーマは“Collide”、つまり衝突です。これは何を意味するのでしょうか?

Vinit:「衝突」という言葉にはネガティブな意味合いを想起される人も多いかもしれません。しかし、本質的には2つ以上の要素が融合することを意味します。私たちの考える“Collide”は破壊ではなく、コクリエーションやコラボレーションのプロセスです。多様性には美しさがあり、これまでつながったことのなかったもの同士が結びつくことで想像を超える結果が生まれます。今年のADFESTはそういう衝突を受け入れて、みんなで祝いたいと思います。来場される皆さんがここで出会い、つながり、これから一緒につくり出していくであろうものの可能性を見つけたり、体験できる場になってほしいと思っています。

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木村:最後に、これから参加される方や参加を検討している方へメッセージをお願いします。

Vinit: ADFESTへの参加を現在検討している皆さんへ、私からのメッセージです。

1 もうすでに知っていると思うことは忘れて、オープンマインドで参加してください。
2 好奇心を持ってください。Why? What? How? と問い続けてください。
3 勇気を持って、積極的に参加し、関与してください。
4 そして準備してください。航空券を予約し、パスを取得し、荷物をまとめてください。
ADFESTは、あなたを刺激し、無限の可能性を触発するユニークな学びの機会を提供します。

木村:ありがとうございました。会場でお会いできるのを楽しみにしています。

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イメージ バナー ADFEST2025年の審査委員の皆さん。日本からは、ADKマーケティング・ソリューションズ 小林慎一さん、Uber Japan 鈴木あいさん、電通 松永美春さん、電通 尾上永晃さん(審査委員長)、博報堂  キム ジョンヒョンさん、Droga5 杉山元親さんが審査委員として参加する。

ADFEST2025年の審査委員の皆さん。日本からは、ADKマーケティング・ソリューションズ 小林慎一さん、Uber Japan 鈴木あいさん、電通 松永美春さん、電通 尾上永晃さん(審査委員長)、博報堂 キム ジョンヒョンさん、Droga5 杉山元親さんが審査委員として参加する。


木村健太郎(博報堂 執行役員、インターナショナル・チーフ・クリエイティブ・オフィサー / 博報堂ケトル ファウンダー)
木村健太郎(博報堂 執行役員、インターナショナル・チーフ・クリエイティブ・オフィサー / 博報堂ケトル ファウンダー)

博報堂にてマーケティングからクリエイティブ、デジタル、PRと領域を広げ、2006年に「手口ニュートラル」をコンセプトに博報堂ケトルを設立。2017年から本社グローバルMD局の局長を兼任し、2021年よりグローバル領域とクリエイティブ領域を担当する執行役員。これまで10のグランプリを含む150以上の国内外広告賞を受賞し、40回近い国際賞審査員経験を持つ。2024年カンヌライオンズデジタルクラフト部門審査員長。The One ClubとADFESTのアドバイザリーボードも務める。

木村健太郎(博報堂 執行役員、インターナショナル・チーフ・クリエイティブ・オフィサー / 博報堂ケトル ファウンダー)

博報堂にてマーケティングからクリエイティブ、デジタル、PRと領域を広げ、2006年に「手口ニュートラル」をコンセプトに博報堂ケトルを設立。2017年から本社グローバルMD局の局長を兼任し、2021年よりグローバル領域とクリエイティブ領域を担当する執行役員。これまで10のグランプリを含む150以上の国内外広告賞を受賞し、40回近い国際賞審査員経験を持つ。2024年カンヌライオンズデジタルクラフト部門審査員長。The One ClubとADFESTのアドバイザリーボードも務める。

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