フジテレビのCM本数と指名検索スコアの変化
下記データは、フジテレビのCM放映数(ACジャパン以外)と指名検索スコアがどのように変化したのか、問題発生前後で4区間に区切ってまとめたものです。
CM本数は激減、しかし検索誘発力は2倍近くに?
- ● CM本数の大幅ダウン
- 1万本を超えていた①②に比べ、問題発生後の③④は2000~3000台へと激減しています。これは多くのスポンサーが出稿を見送ったことを如実に示す数字です。
- ● 指名検索スコアの上昇
- CM1本あたりの検索誘発力を示す指名検索スコアは、問題前が300~400台だったのに対し、問題後は600台後半~700近くに上昇しています。「CM放映本数は激減したものの、1本あたりの検索行動はむしろ高まる結果となりました。
この背景には、フジテレビの問題が注目を集める中で、「どの企業がCMを続けているのか?」と関心が向けられた可能性があります。また、CM本数が減ったことで、放映されたCMがより目立ちやすくなったという構造的な要因も考えられます。いずれにせよ、「テレビ広告の効果が急激に低下した」というわけでは決してなく、むしろ効果は高まっていることが、こうした数値から見えてきます。
他局への影響は限定的
続いて、下記のグラフはフジテレビを除く主要キー局(TBSテレビ、テレビ朝日、テレビ東京、日本テレビ)の指名検索スコア推移です。2024年12月~2025年2月にかけての時系列で見ると、1月20日前後で大きなスコア変動は見られませんでした。
問題がフジテレビ単独で発生した以上、フジテレビに放映予定だった広告主が他局に流れた影響で何らかのコスト上昇が生じている可能性は高いですが、“指名検索スコア”という広告効果の観点から見ても、とくに顕著な上下動はなかったと考えられます。言い換えれば、フジテレビ問題の影響がテレビ業界全体に波及するわけではなく、他局のCM効果自体が大きく変わるような現象は起こらなかったと言えるでしょう。
テレビ広告は本当に終わりなのか?
今回のフジテレビ問題を受けて、「CM出しても効果がない」といった論調もネット上で散見されました。しかし、ノバセルトレンドによるデータから読み取れるのは、テレビ広告全般の効果が一葉に低下したわけではないという点です。
- 1. フジテレビ自体、CM本数は激減したが1本あたりの検索誘発はむしろ伸びている
- ⇒ 数量が少なくなったぶん注目が集中し、“残った広告”に興味を抱く視聴者が一定数いる。
- 2. 他局に関しては、特に指名検索スコアが大きく上下した形跡はない
- ⇒ 他局の広告効果に顕著な変化はなく、問題がテレビ業界全体の広告効果に波及したわけではない。
この結果からも、テレビ広告そのものが機能しなくなったわけではないことがわかります。むしろ、局単位でガバナンス不備が明るみに出ると、スポンサーが一斉に離脱するリスクが高まったという事象を示したにすぎないのです。テレビCMという枠組みそのものを否定するのには早計と言えるでしょう。