テレビCMは本当に終わりなのか? 指名検索スコア推移から分析する

テレビ広告+αの組み合わせが重要に

一方で、テレビというメディアの在り方が変化しつつあるのも確かです。総務省やビデオリサーチなどの調査結果からも、若年層のテレビ離れや、同時接触メディア(スマホ・SNS・YouTubeなど)の増加傾向ははっきりと数字に表れています。視聴率が下がることは、必ずしもテレビCMの効果の消失を意味するわけではありませんが、従来のマスリーチ戦略だけでは対応が難しくなってきているのは事実です。

ただ、ここで押さえておきたいのは、「視聴率が下がる=CM効果の完全な消失」ではないという点です。マスリーチは確かに減るかもしれませんが、テレビ番組をリアルタイムで視聴する層は、依然として一定のボリュームを持っています。少数であれ、テレビを見る習慣のある視聴者にとってCMのインパクトは依然大きい。さらに録画視聴やタイムシフト視聴でもCMが流れる場面はあり、特定の番組やコンテンツには根強いファンが存在します。今回のフジテレビ問題をめぐる一連の騒動から学べるのは、テレビ広告を「効果ゼロ」と断ずるのも、「テレビだけですべて完結する」と固執するのも、どちらも危ういということです。そのため、今後の広告戦略では、テレビCMとデジタル広告の組み合わせによる相乗効果の最大化、ターゲットに応じたメディアミックスの最適化といった視点が一層重要になってきます。


変わりゆくメディア環境と広告戦略の再考の時期

フジテレビ問題は、スポンサー企業に「テレビCMを止めても売上が急落するわけではない」という気づきを与えた一方で、今回ノバセルトレンドで示した指名検索スコアの推移を見ても「テレビ広告の影響力は依然として無視できない」という事実も浮き彫りにしています。も、テレビCMはブランド認知向上や商品イメージ醸成に、まだまだ有効な手段であるといえます。

今回の一件は、企業がリスクをどう捉えているかを鮮明にしました。今回の指名検索スコアのデータが示すのは、テレビ広告が衰退するのではなく、進化の過程にあるということです。企業の広告戦略においても、「テレビ広告が効かなくなった」と断定するのではなく、「どのように活用するのか」を考えることが今後ますます求められるでしょう。テレビを含めた多彩なメディアをどう“使いこなす”かが企業の競争力を左右する時代に突入しているのです。

次回以降は、テレビ以外のメディアの位置づけや「デジタル広告との最適な配分」など、広告効果を最大化するうえで外せない論点をさらに深掘りしていきたいと思います。企業のマーケティング担当者にとっては、今回のフジテレビ問題をひとつの“学び”として、改めてメディアミックス戦略を見直すきっかけになるのではないでしょうか。テレビが死ぬか生きるかという二択ではなく、どう活かすか――その答えを見つけるためのヒントが、今まさに必要とされています。

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田部 正樹(ラクスル上級執行役員CMO/SVP of Novasell 兼 ノバセル 代表取締役社長)
田部 正樹(ラクスル上級執行役員CMO/SVP of Novasell 兼 ノバセル 代表取締役社長)

1980年生まれ。大学卒業後、丸井グループに入社。主に広報・宣伝活動などに従事。2007年にテイクアンドギヴ・ニーズ入社。営業企画、事業戦略、マーケティングを担当し、事業戦略室長、マーケティング部長などを歴任。14年8月にラクスル入社。マーケティング部長を経て、16年10月から現職に就任。ラクスルの成長をけん引したマーケティングノウハウを詰め込んだ新規事業「ノバセル」を立ち上げ、マーケティングの民主化をビジョンに急成長を続けている。22年にノバセルを分社化、代表取締役社長に就任。業界問わず成長を求める企業の経営×マーケティングのアドバイザー。経済産業省主催「始動」講師/メンター。著書に『指名検索マーケティング』(翔泳社)

田部 正樹(ラクスル上級執行役員CMO/SVP of Novasell 兼 ノバセル 代表取締役社長)

1980年生まれ。大学卒業後、丸井グループに入社。主に広報・宣伝活動などに従事。2007年にテイクアンドギヴ・ニーズ入社。営業企画、事業戦略、マーケティングを担当し、事業戦略室長、マーケティング部長などを歴任。14年8月にラクスル入社。マーケティング部長を経て、16年10月から現職に就任。ラクスルの成長をけん引したマーケティングノウハウを詰め込んだ新規事業「ノバセル」を立ち上げ、マーケティングの民主化をビジョンに急成長を続けている。22年にノバセルを分社化、代表取締役社長に就任。業界問わず成長を求める企業の経営×マーケティングのアドバイザー。経済産業省主催「始動」講師/メンター。著書に『指名検索マーケティング』(翔泳社)

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