『ファーストキス 1ST KISS』プロデューサー・山田兼司に聞く、ストーリーの力とは―「私の広告観」出張所

月刊『宣伝会議』では、社会に大きな影響を与える有識者が、いまの広告やメディア、コミュニケーションについて、どのように捉えているのかをインタビューする企画「私の広告観」を連載中。ここでは「私の広告観 出張所」として、インタビューの一部や誌面では掲載しきれなかった話をお届けします。今回登場するのは、映画『怪物』や『ゴジラ-1.0』などを手掛けてきた、映画プロデューサーの山田兼司さんです。
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山田兼司さん

1979年生まれ。慶應義塾大学法学部卒。2003年テレビ朝日入社、報道局を経て、10年以上、映画/ドラマプロデューサーとして勤務。ドラマ『BORDER』シリーズや『dele』などを手掛け国内外の数々のアワードで受賞。2019年から東宝に移籍。映画『百花』ではサンセバスティアン国際映画祭で最優秀監督賞、映画『怪物』でカンヌ国際映画祭脚本賞、クィアパルム賞の2冠。『ゴジラ-1.0』では北米の邦画興行収入歴代1位を記録し、史上初のアカデミー賞視覚効果賞を受賞。同年、個人として『怪物』『ゴジラ-1.0』で2つのエランドール賞と藤本賞を受賞。2024年よりPGA(Producers Guild ofAmerica)の正式会員に選出。最新作『ファーストキス 1ST KISS』が公開中。2025年3月より独立。

Q.山田さんは世界基準の成功作品をクリエイティブ及びビジネスの観点から分析するなど、世界で評価されるストーリーを日々研究されていると伺いました。そんな山田さんが作品づくりで大切にしていることは何ですか。

ストーリーは、人の感情を動かす“技術”です。そのストーリーを重視した作品づくりにおいて、不可欠なのは、「主人公」「欠落・欠損」「欲求」「行動」「障害」「葛藤」「変化」の「7つのエレメント」だと思っています。

ストーリーは人類だけが発明したもので、それが他の生物との差別化につながったと、『サピエンス全史』の著者で歴史学者のユヴァル・ノア・ハラリが主張しているのですが、まさにその通りだと考えていて。

“ストーリーの力とは何か”を徹底的に追求したつくり方と表現手法の刷新にこだわっています。

さらに私はストーリーの中に、「歴史」「現在性」「コンセプト」「普遍性」の4つの原則があると考えました。この4つをおさえることができているコンテンツは、言語や人種の壁すらも超えていくことを、自分自身の経験からも実感しています。

写真 人物 個人 山田兼司さん

「感情を動かすことができるのは、実はストーリーの力だけなんです」と断言する山田さん。

Q.最近はショートムービーの企画をプロデュースされたとか。

はい、「fragmentdesign」を主宰する藤原ヒロシ氏とナイキがコラボしたストーリーを制作しました。リリースされた新しいスニーカーモデルにフォーカスした約4分の映画『the OFFERING(SPIRIDON)』で、この作品には是枝裕和監督が参加して話題になりました。

ヒロシさんが培ってきたスニーカー文化のクリエイティビティの現在地に呼んでもらい、異質な自分と是枝監督の作家性を合わせたことで、唯一無二の映像作品になったのではないかと思います。

スニーカーそのものが持つ普遍性と魅力にうまくアプローチできて、SNSでは「新しい!」と新鮮な感想も出ていて嬉しかったですね。良い経験になりました。

『the OFFERING(SPIRIDON)』。今回のタッグにより、『怪物』の世界観を彷彿とさせる雰囲気が、映像全体を包み込んでいる。

Q.昨今の広告やメディアについて、どのように感じていますか。

広告クリエイティブの力を信じているので、自分にしかできないストーリーを生み出してみたいです。企業やブランドを主人公にして、映画クオリティの記憶に残るストーリーをつくるとか。

資本主義社会において、モノをたくさん売りたい企業にとって広告は不可欠な存在。だからこそ、表現の場でもあることに気付いてほしいです。

クオリティを追求すれば、芸術的な価値も付加されますし。そうすると受け手も、自分の可処分時間を取られる邪魔なものっていう発想が消えると思うんですよね。

広告クリエイティブは文化の担い手として、どんどん発展していってほしいと思います。

…山田さんのインタビュー記事全文は、月刊『宣伝会議』2025年4月号に掲載。

月刊『宣伝会議』デジタルマガジンでは、過去12年分のバックナンバー記事を閲覧可能です。

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