テレビCMとポスティングに見る、効果的なクリエイティブ戦略とは?

「アドタイデイズリージョナル2025春」(名古屋会場)が2月に開かれ、中部CM合同研究会の会長でメニコン国内マーケティング戦略室室長の加藤秀樹氏と、ポスティング事業を手がけるアトの森傑氏、丸山豊氏がそれぞれ講演した。

中部地方のCMの質向上を目指す「中部CM合同研究会」

中部CM合同研究会は、中部地区の広告主や放送局、広告会社、制作会社、タレント事務所、デザイン事務所などで構成され、同地区のCMの質の向上に向けて活動している。「ACC TOKYO CREATIVITY AWARDS」北陸・東海地区地域審査会の運営や、「AICHI AD AWARDS」(愛知広告協会)の審査の一部を担う。

写真 人物 メニコン国内マーケティング戦略室室長の加藤秀樹氏

加藤氏は研究会の活動やメニコンのマーケティングを踏まえ、これからのCMについて講演した。まず広告の役割について、商品・サービスの情報を提供すること、ブランディングを行うこと、社会的メッセージを伝えることの3つと説明。その上で、テレビCMは商品の想起、購買行動促進だけを目的とするものではなく、認知向上、ブランディングを実現し、最終的には売上向上を目的とするものであると説明した。また、「Scale-Up(さまざまな人に届ける効果)」「Speed-Up(いち早く伝える効果)」「Interest-Up(興味関心を持たせる効果)」の「3UP効果」も発揮できる。「ターゲット以外にも伝わることがテレビ広告の大きな特徴です」と述べた。

写真 人物 メニコン国内マーケティング戦略室室長の加藤秀樹氏

CMのターゲットの変化

メニコンのテレビCMを振り返ると、初期のものは生活者向けのものであるのに対し、1990年代以降は啓発的広告や本業以外のことをアピールすることで、従業員のモチベーション向上や社会に対する問題提起といった目的も含んでいるという。加藤氏は「時代の変化につれ、テレビCMのターゲットも変わってきている」と指摘した。

例えば、ロームのテレビCMは従業員を含むステークホルダーに向けた内容だ。CMを実施することで多くの人にロームを知ってもらい、社員のモチベーション向上につなげることが目的と見られる。リクルーティングを目的とした村田製作所のテレビCMは、学生の帰省時(夏休みや年末年始などの長期休暇のタイミング)に 放映し、BtoB企業である同社の事業内容や社会貢献活動をわかりやすく伝え、保護者への安心感につなげている。社会貢献のメッセージを伝えるトヨタイムズニュースのテレビCM の冒頭では、「カーボンニュートラルや世界各地のトヨタの最新ニュースなどを現場取材を通じて伝えます」とアナウンスされている。

加藤氏は「商品の想起や購買行動促進を行うテレビCMが、将来従業員となり得る人や現在の従業員、その家族のエンゲージメントを高めつつ、社会貢献を通じてブランディングを実現し、最終的には売上の向上を実現するという構図になっています」と語る。

写真 人物 メニコン国内マーケティング戦略室室長の加藤秀樹氏

テレビCMの今後の課題は、ネット動画広告、Web広告などのデジタル広告との連動性だ。テレビCMであれば想起・興味関心・購入、ネット動画広告であれば好意・内容理解・購入意向といったそれぞれの特徴を理解し、目的や役割を明確にした効果的な資源投下が重要だと加藤氏は話す。「クライアント企業として、プロモーション全体を俯瞰した戦略立案が求められる。誰に何をどう届けるのか、いつ何をどうしたいのかを明確にする必要がある」と語った。

コロナ禍を経てポスティングの市場が成長

ポスティング事業を手掛けるアトは、全国に58拠点、月間稼働配布パートナー数を約2万人保有しており、ポスティング業界最大規模の組織である。売上高推移は、コロナ禍を機に右肩上がりになっている。

写真 人物 アトの森傑氏、丸山豊氏

電通が発表した「2023年 日本の広告費」によると、新聞折込やDM、フリーペーパーなどは軒並み落ち込んでいる中、ポスティングは2022年より6.1%アップし、市場において成長を見せている。その背景には、コロナ禍以降の在宅率の上昇が挙げられる。テレワークなどによる在宅率・受け取り率、フードデリバリーサービスのポスティング需要が増加した。また、新聞折込広告の部数の減少によりポスティングへ移行したことや、郵便料金の値上げによりDMから取って代わったことも成長の要因となった。

ポスティングに適したクリエイティブ

アトのポスティングプランは2種類。商圏・ターゲットが限定される飲食店や学習塾などには「エリア指定プラン」、多店舗型、通信販売など商圏・ターゲットが広域な場合には「エリアフリープラン」がある。エリアマーケティングが可能だが、個人ではなく世帯の特性によって行われる。国勢調査データを使ったGISツールによるセグメントを導入し、最大650項目の内容から希望に合った属性をセグメントすることができる。

続いて、丸山氏はポスティングのクリエイティブについて、「自分にとって必要な情報だと感じてもらえなければ持ち帰ってもらえない」と説明。その上で、「新聞折込用に使っていた広告をポスティングに流用しても効果が得られないので、ポスティングに向いたデザインや形状にする必要がある」と強調し、6件の事例を紹介した。

写真 人物 アト丸山豊氏

ハイクラス転職サイトはハガキ型から招待状型に変更したところ、反響率が2倍以上に向上。サプリメント通信販売は、一般的なA4サイズ等ではなく封書タイプにすることで視認性の向上を実現した。大手フィットネスジムは、サービス開始時にはB3縦型サイズで情報量の多いチラシを制作。一般的なチラシより大きいサイズで展開することで差別化を図り、サービス認知後は、A4縦型のタイプに変え消費者目線で求められる情報を掲載した。

大手配車アプリは、サービス開始時にスマホを模した型抜きの形状でポスティングを実施。魅力的なダウンロードオファーも記載することで、アプリのダウンロード数も順調に獲得できた。CMの放映、OOHの施策が始まったタイミングで、ブランドイメージをチラシに落とし込むクロスメディア施策も実施。CM起用の俳優をチラシに掲載したり、配布する時期を合わせたりと季節感のある原稿を作成した。

化粧品通信販売会社では、これまで折込チラシで利用していたB4横型のデザインをA4サイズに縮小してポスティングしていたが、A4縦型のチラシに変更。商品画像を大きく、米ぬかの良さをイメージで伝えられるビジュアルを採用することで反響は4倍に。フードデリバリーアプリの場合は、懸賞型のチラシや型抜きチラシ、金券型チラシ、ICカード型チラシなどを展開した。

各ターゲットに合わせたポスティング

最後に森氏がアトのサービスについて説明。低コストで大量投下ができる「MEGA POS」、都心富裕層へリーチできる「yoff」、メーリングサービスのIMURAと提携した宛名無DMの「MEGA LETTER」、サイバーエージェントと提携した「エレベーター・サイネージ」など幅広く展開している。そのほか、地域情報を載せた熨斗紙に包んだ広告物をギフトとして配布する「@LETTER」がある。

写真 人物 アトの森傑氏

さらに近日リリースされる、24時間いつでも広告を発注できる「ADX」について紹介した。店舗数が多い場合には複数店舗の発注が可能で、エリアなどの配布条件を詳細に設定でき、設定したターゲットへのリーチ数推計も表示可能だ。また、配布レポートの共有ができるため、今後の集客に活用することもできる。見積は簡単で、取扱い媒体はポスティング、新聞折込、DSP配信。DSP用のバナー画像はAIを活用しながら手軽に作成することができる仕組みを今後実装予定。「各企業様に合わせた提案が可能ですので、ぜひお気軽にお問合せください」と締めくくった。

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お問い合わせ

株式会社アト

住所:〒102-0083 東京都千代田区麹町6-6-2 番町麹町ビルディング5F We Work麹町
TEL:0120-555-001
URL:https://www.ato-co.jp/


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