マーケティングや広告、デザインの知見を注ぎ込む
中村:また、宮城県立図書館に通って過去の文献を読み漁り、九重本舗玉澤の歴史や伝統を調べ上げました。その上で、ブランドのコンセプトやターゲットを明確にし、商品のラインナップや価格設定を見直しました。SNSも活用して、Twitter(現X)広告で1500円ずつA/Bテストを繰り返すなど、大企業ではなかなかできない小さな施策からコツコツと試していきました。
鈴木:私は2021年ごろ、とある電話を中村にかけたタイミングで「玉澤の商品パッケージを変えたいんだけど」と相談を受けて、そこからボランティアで参加しました。パッケージやビジュアルアイデンティティの刷新に取り組ませてもらいました。
近江:2024年10月には、創業350周年を前に仙台の中心部に本店をオープンしたんですが、店舗デザインも鈴木の紹介でRABBITの増田総成さんにお願いしました。
中村:2024年1月にフラッグシップ店舗立ち上げ計画をつくり、5月に物件が決まり、10月にオープン。まさに文化祭のようなテンションとスピード感だったよね(笑)。
2024年10月にオープンした本店(仙台市青葉区)
同窓生が続々参加、「自由と個性の融合」でヒット生む
近江:同窓生には建築士や保険屋などその道の専門家も多いので、彼らの力を借りながらみんなで店をつくり上げていきましたね。久しぶりに集まった一高の仲間やその友人たちはすぐに打ち解けてワンチームとなり、お互いを尊重しながらも強い個性を発揮することで、短期間で素晴らしいお店をつくり上げることができました。大変でしたが、ほんとうに楽しかったです。
――現在、「霜ばしら」は“入手困難”なお菓子として話題になり、月に一度のネット予約販売も数分で完売するほどの人気になりました。
冬季限定、数量限定で販売している人気の「霜ばしら」
中村:僕や鈴木はボランティアですが、放課後の部活のような感覚なんですよね。会社では味わえない刺激や学びがありますし、それが本業の方にも良い循環になっています。「こういうときにやらないのってダサくない?」という、仙台一高で育ったからこそ身についている感覚や使命感もあったように思います。結果として玉澤の魅力が伝わり、多くのお客さまにお求めいただけていることはとても嬉しいです。昨年は日経トレンディさんの地方発ヒット大賞に「霜ばしら」を選んでいただき、東京での発表会に近江と一緒に参加できたことはとても感慨深く、会場でハイタッチしたあの瞬間は人生のハイライトですね。
鈴木:近江の商品への思いや、仙台を盛り上げたいという情熱に共感し、みんなが自然と協力してくれたんだと思います。一高で育ったからこその恩返しでもありますし、伝統をつないでいくという喜びもあります。なにより、時を超えても、あのときのまんまで集まれるのは財産です。
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