不動産ディベロッパー事業で進むDX 顧客に価値を創出するデータ利活用の方向性 

必要な人に、必要な情報だけ見せるダッシュボードづくりで無駄を削減

福吉:データの収集や分析が新たな事業開発につながることもあるのでしょうか。

武重:データは見るだけでは意味がないので、行動につなげることを大事にしています。一例としては、今年度東急不動産向けに作ったBCPダッシュボードです。災害時の被害情報を可視化するもので、これまでホワイトボードに手書きしたり、エクセルに入力したりしていたものをBIツールにまとめることで、経営陣もすぐに状況を把握することができるようになりました。

福吉:いろいろな企業の方と話をしていても、役員クラスの方に「ダッシュボードを見て」と頼んでもなかなかご覧になっていただけないケースが多いのですが、そこは大丈夫でしたか。

武重:経営層が見たいのは有事の際にケガ人の有無や安否確認の回答率など、大きくとらえられる情報なので、IDによってログイン先が変わるようにして、経営層に見せるダッシュボードは1枚か2枚になるように設計しています。見たい人に必要な情報が表示できるようなつくりにはこだわりました。

福吉:抵抗感を生まない全体像を描けるかどうかで大きな違いが出ますね。

武重:TFHD digitalをつくって一番最初に取り組んだのがBPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)でした。会議で数分の報告をするために何時間もかけて紙の資料や報告書を準備することは、経営層や上長には失礼かもしれませんが、やはり無駄がある。

結果的に知りたい項目というのは少ししかないので、それがわかればいい。その先を知りたいならここをタッチすれば見えますよ、というつくりのダッシュボードを用意した。一番最初に導入した住宅事業ユニットでは、今はもう週次の報告資料というものはBIツールに集約されました。

福吉:デジタルを普及させようとしたとき、経営層からでもボトムアップでも、中間層が障壁になったり、下から進めて中間層をクリアしたと思ったら経営層が拒否感を示したり、ということは多い。そこに見たい人に知りたい情報を見せるにはどうすればいいか、というニーズから汲みあげたという話には学びがあります。

前のページ 次のページ
1 2 3
この記事の感想を
教えて下さい。
この記事の感想を教えて下さい。

この記事を読んだ方におススメの記事

    タイアップ

    マーケ資料ダウンロード