居住者や記者の声を事業に活かす 防音マンションのリブランの広報術

様々な業務に向き合う広報パーソンは、“広報”をどのようにとらえ、どこに魅力を感じているのか。自身の転機を踏まえながら、広報観について聞く。
※本記事は『広報会議』2025年4月号の特集「新・インターナルブランディング」に掲載されている内容の転載です。

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戸口木綿子氏

リブラン
宣伝部課長 広報担当

防音賃貸や自然素材のリノベーション、新築マンションや戸建を扱う不動産企業のリブランで宣伝部の課長として部下をマネジメントしながら広報業務も担っている戸口木綿子氏。

同社の顧客は「賃貸契約を検討している人」と「マンションを建てたい人(オーナー)」の双方。それぞれ求める情報や魅力に感じる内容が異なるため、情報発信の際やメディアリレーションにおいては、どちらに向けてどのメディアで何を発信するか戦略を立てているという。

コロナ下に広報活動を開始

戸口氏には音大の声楽科を卒業し、オペラ歌手としてイベントなどで歌唱するという一面も。リブランでは、24時間楽器の演奏が可能な防音賃貸マンション「ミュージション」を開発・販売しており、同氏は自身が持つ全てのスキル・人脈・アイデアを活かせると考え、営業職として2013年に入社。その後、宣伝部に異動し、広告出稿などの宣伝業務に携わっていた。

従来は現地での看板や電車内の交通広告、チラシなどで物件の情報を発信していたリブランだが、コロナ禍で人々の外出が減ったことから、オウンドメディアやSNSでの発信を強化。

「特に当社の防音賃貸マンションを利用する皆さんはそれぞれの活動に応じたユニークな暮らしをされています。その方々の声を発信することで、ミュージションを検討している人にとって有益な情報を届けられるのではないかと考えました」と戸口氏は話す。広報業務は未経験であったが、SNSをはじめたことで他社の広報担当者と横のつながりが生まれ、他社の活動から広報を学んでいったという。

その中で、「新たな顧客層にアプローチするためには自社で発信するだけではなく、メディアを通して第三者の視点で語られることも重要なのでは」と考えるように。そこからメディアリレーションも積極的に行うようになったと話す。

社会起点で考える広報

同社の広報活動の転機となったのは、ミュージションの『日経MJ』トレンド面での掲載だった。

掲載のきっかけのひとつとなったのは戸口氏がプレスリリースでミュージションに関するストーリーを発信したことだったという。

「ミュージションがどのように生まれ、開発段階ではどのようなハードルがあったのか、当時の反響などをストーリー化してひとつのコンテンツにまとめたことで、記者の方に興味を持っていただけて掲載に至りました。プレスリリースで既にミュージションの概要を知っていただけていたので、記者の方からも『このような居住者の方にインタビューがしたい』といった具体的な依頼を最初からいただけていたことも、より魅力的な記事掲載につながったように思います」(戸口氏)。

現在、ミュージションには音楽活動をしている人以外に、ゲーマーや実況配信をする配信者からの問い合わせも増加。そこから新たな商品として「ゲーミングマンション」が誕生した。開発にあたってはゲームの展示会「東京ゲームショウ」に出展してゲーマーに実際の困りごとや部屋に関する要望をヒアリング。さらに、メディアに対しても「どのような設備・仕様の部屋であれば取材したくなるか」などを聞いて商品に活かしている。

「普段はユーザーと直接的な接点を持ちにくい開発担当者にもユーザーの声を届けることができたので、新しい発見につながるなど良い循環も生まれています。広報に大切なのは自社が発信したいことを発信するだけではなく、幅広いステークホルダーの声をしっかりと聞き、その声を事業に活かしていくこと。自社起点ではなく、社会起点で考えることで、自社と社会をつなぐことができ、そうすることで広報は経営に貢献できると感じています」と戸口氏。

また、社内においても部署を超えた関係構築により、協力体制をつくっておくことも広報にとっては重要だと同氏は話す。

「『この情報が広報発信に役立つのではないか』と多くの人に思っていただき、共有してもらえる体制が必要だと考えています。全員が広報的な視点を持てるような環境をつくれるよう、まずは自分から行動して部署を超えたコミュニケーションを積極的に行っていきたいです」。

【CASE】「東京ゲームショウ」に出展

リブランは、防音賃貸マンションの新しい価値を探るべく2023年と2024年に、ゲーム展示会「東京ゲームショウ」に出展。2023年はゲーマーやゲーム配信を行う配信者を中心に日々の活動の中での課題をヒアリング。2024年には、ブース内に防音室を設け、来場者がその中で大声で叫んだ声の音量を競う「大声チャレンジ」を実施。多くのインフルエンサーが「大声チャレンジ」に挑戦する様子を自身のSNSアカウントなどでアップした。また、テレビ番組でもアナウンサーやキャスターが大声を出す様子が放送され、大声で叫んでいるのに外には音が漏れないことを訴求。結果、50以上のメディアでの掲載につながった。

イメージ 「東京ゲームショウ」

【CASE】テレ東BIZ『番組まるごと・林会議』に出演

林修氏と企業の社員がディスカッションをしながら、企業の課題や新しいビジョン、商品などを考えていくテレ東BIZの『番組まるごと・林会議』にリブランの社員が出演(2024年10月)。

ミュージションの紹介とともに、“音”という財産を活かした新規事業を林氏と社員が一緒に考えた。番組放映後は、BtoBの観点で、アライアンスを結びたい、共同開発したいといったオファーも舞い込むなど新たな広がりを見せている。

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イメージ テレ東BIZ『番組まるごと・林会議』

『広報会議』2025年4月号

【特集】
新・インターナルブランディング
パーパスを軸にした事業創造、組織文化の醸成
●進化するインターナルブランディング
新たなファクトの創発、事業創造を促す動き
森門教尊(博報堂コンサルティング)
●case study
カンロ、カシオ計算機、新日本製薬、タカラベルモント、freee、日本製紙クレシア
 
【レポート】
フジテレビ再会見
●露呈した3つの問題
危機管理広報のプロが解説
浅見隆行(弁護士)
●ベテラン広報が振り返る
フジテレビはどこで対応を誤った?


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