マリオット・ホテル、AIでマーケティング業務効率化 増分収益目標6倍を達成

MAPAとは、顧客中心のマーケティングを実現するために設計した、マーケティングパーソナライズの推進・加速フレームワーク。このフレームワークの中核を担っているのがAIだ。Adobe Experience Cloud と密接に統合されており、以下の3つの領域で実務と技術のギャップを埋めることを目的としている。

クック氏は、「私たちは、何が問題かを肌では感じていましたが、それ証明するデータや構造がありませんでした。MAPAは問題を可視化し、解決し、拡張可能なかたちに整理する枠組みです。“マーケティングが遅い/統一されていない”という感覚を、“どこに無駄があり、どう改善すべきか”という戦略へと変える設計図兼エンジンとしてAdobeの力を借り、開発しました」と当時を振り返った。

ではMEPA内でAIは何を担うのか。具体的には、ターゲットの発見と拡張、ジャーニー設計の自動化、コンテンツ生成の自動化&最適化、ABテスト&改善の自動化、リアルタイムでのインサイト自動抽出などだ。

MAPAの大まかな構造。

オーディエンスの発見においては、Adobe Audience Agentと連携。マーケターが「あるキャンペーンの目標に最も適した顧客層は?」というプロンプトを入れると、AIが、過去のデータ・傾向・プロファイルをもとにターゲット候補を提案・スコアリング。コミュニケーション先として最適な顧客を発見してくれる。

さらに、AI Assistant に「ビジネストラベラー向けに滞在延長を促すジャーニーを作成して」と指示すると、AIが過去の成果・顧客行動・目的をもとにメール・通知・オファーの構成といったジャーニーを自動で設計。しかも、複数のオーディエンスに適した分岐構造も提案される(例:ゴールド会員とレジャー客で内容を出し分け)。

コンテンツの自動生成では、Adobe GenStudioと統合。生成AIがキャンペーン用のバリエーション(テキスト・画像)を高速で作成する。さらに、すでに上記のステップの中で顧客分析は完結しているため、プロンプトの同一のオファーでも、ロイヤルティ会員/新規/週末旅行客などに応じた表現を自動生成してくれる。

仮説立案、検証をAIが担う時代、これからのマーケターは何をすべき?

AIによって自動化するのは。コンテンツを送る先の絞り込みや、ジャーニー設計、顧客それぞれに適したコンテンツづくりだけではない。これまでマーケターがデータ分析して人力で行っていた仮説立案、パフォーマンス改善もAIが自動で行ってくれるようになる。

例えば、AIによる実験とパフォーマンス改善では、Adobe Experimentation Agent を使い、AIが「このジャーニーのどこを改善すべきか」「どの施策がより効果的か」という仮説を立案する。さらにその仮説をもとにしたA/Bテストも自動設計。成果に応じて勝ちパターンを自動でスケールできるようにもなるという。

最後に、リアルタイムの顧客インサイト抽出では、2億人分にも及ぶ顧客から得られる「Marriott Bonvoy」の閲覧データや購買履歴、属性データ、問い合わせ履歴などをAIがリアルタイムで収集・分析。人気のトピックや離脱ポイント、それをもとにしたコンテンツ生成の意図などをマーケターにわかりやすく可視化できるように整えたという。

MAPA導入後の成果。

クック氏は、アドビ製品と連携させてMEPAを利用してみて、次のように述べていた。

「AIは過去の課題を一瞬で消してくれる魔法ではありません。でも、私たちが地盤を整えた上で活用すれば、“爆発的に成果を加速させる道具”になると思っています」(クック氏)。

クック氏の一連の話からわかるのは、これまでマーケターが時間をかけてやっていた業務をAIが効率化してくれる可能性があること。そして業務効率化と併せて、マーケティングコミュニケーションのハイパー・パーソナライズ化を実現する可能性があることだ。

AIでマーケティング業務が効率化されるということは、マーケターが担うべき役割も変化するということ。AIの活用が標準となったときに、マーケターに求められるスキルは何なのか。今から考えておかなければならないと感じられた。

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