文字で覆い尽くしたインパクト大の表紙『無職、川、ブックオフ』のブックデザイン

マンスーン(著)『無職、川、ブックオフ』

イメージ 書影 マンスーン(著)『無職、川、ブックオフ』

2024年12月、マンスーンさんのエッセイ集『無職、川、ブックオフ』が発売された。マンスーンさんはWebメディア「オモコロ」などで活躍する人気ライターで、30歳まで無職だった。本書ではその前後のエピソードが綴られている。ブックデザインは、グラフィックデザイナーの吉岡秀典さんが手がけた。

カバーは、タイトルと著者名が勢いを感じる力強い書体でデザインされている。表紙のスペース全面を文字だけで覆い尽くしたようなデザインで、特にタイトル内の「川」という文字は、何かのマークのようにも見える。

「無職」「川」「ブックオフ」の文字が、ドン、ドン、ドンと並ぶだけで、マンスーンさんの独特な世界観を伝えられるのではないかと考えた。「ほぼ原寸大で手書きでラフをつくりました。それをデータ化して微調整しましたが、ほぼ最初のラフ通り」と吉岡さん。

一方、背表紙のタイトルと著者名は、ゴシック体のシンプルな書体を打ちっぱなしのような見せ方で配し、デジタル作業での素っ気なさでマンスーンさんの世界観を表した。

表紙と裏表紙は、花川猫さんのイラストでデザインされている。

イメージ 表紙と裏表紙は、花川猫さんのイラストでデザイン

俯瞰した視点で複雑な街並みが描かれ、その中に猫耳の少女が点在している。エッセイの中に街を彷徨っているような描写があり、そのイメージをもとに花川さんが描き下ろした。マンスーンさんが花川さんのイラストをネットで見かけ、装画を依頼した。「花川さんには表紙の倍くらいのサイズで、大きな街並みの絵を1枚描いていただきました。それをトリミングして、表紙と背表紙のほか、帯や扉などでも使用しています」(吉岡さん)。

造本も凝っている。本文の前半と後半で時間軸が異なるため、2種類の本文用紙で雰囲気をうまくずらしている。いずれも白だが、前半は赤みのある「ソリストSP(N)」で、後半は青みのある爽やかな「ソリストミルキー」を選定。本文には同じ文字がびっしり羅列されるページがあったり、何も印刷されていないページがあったりと、エッセイの独特な世界観を文字組からも感じられるデザインとした。

advertimes_endmark

スタッフリスト

AD 吉岡秀典
D 及川まどか、平良佳南子
I 花川猫


この記事の感想を
教えて下さい。
この記事の感想を教えて下さい。

この記事を読んだ方におススメの記事

    タイアップ

    マーケ資料ダウンロード