東京コピーライターズクラブ(TCC)が主催する、コピーの最高峰を選ぶ広告賞「TCC賞」。その入賞作品と優秀作品を収録したのが『コピー年鑑』です。1963年に創刊され、すでに60冊以上刊行されています。
広告クリエイターを目指す人や駆け出しのコピーライターにとっては、コピー年鑑は憧れの存在であり、教材であり、自らを奮い立たせてくれる存在でもあります。TCC会員の皆さんは、コピー年鑑とどう向き合ってきたのか。どう活用しているのか。今回は、2024年度のTCC新人賞を受賞した横井優樹さんです。
言葉が苦手で絵ばかり描いてきた私は、配属前に「年鑑を写経しなさい」と言われるがまま、1人会社でコピー年鑑を真似ることしかできませんでした。
しかし、いくら字数を削っても、語尾を取り入れても、法則を見つけた気になっても、なかなかコピーや企画が採用されることはなく、増える脳の拘束時間に悩まされる毎日。
そんな日々を励ましてくれたのは、年鑑に並ぶ受賞者の言葉でした。
苦労を語る方もいれば、淡々と解説する方もいらっしゃいますが、どうしてそのコピーに辿り着いたのか、その思考の過程が、人柄が、感謝が、受賞コメントに垣間見えました。
何よりコピー年鑑に載っている方々は、「成功した人」ではなく「努力した人」だと写ったのが嬉しくなりました。
そんな素敵な考え方をする人たちと、少なくとも同じ業界にいて、それぞれが膨大な時間を費やして言葉を世の中に送り出している。
若かった自分は、コピー年鑑を読むことで一人ではないと感じられました。
そして先輩方の知見をお借りしつつも、自分の視点をもって仕事に臨まなければと、年鑑を開くたびに背中を押されていました。
それから10年余り経ち、小さな私の仕事がそこに掲載していただけたことが奇跡のような想いです。
もしも誰か、一人悶々とする同業者の目に入ったとしたら、少しは自分が考え続ける意味があるのかもしれないと感じます。
