食料品の高騰が続く中、「わざわざ訪れたい」と思わせる楽しい売り場づくりで、顧客を魅了している北野エース。レトルトカレーの箱を本棚に本が並んでいるように陳列する「カレーなる本棚」の実施など、単なる商品販売にとどまらない売り場戦略で差別化を図っている。本記事では北野エースの運営会社であるエースのバイヤー・富岡勇斗氏に、「カレーなる本棚」実施の裏側を聞いた。
本記事は月刊『販促会議』2025年4月号の転載記事です。
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1962年に兵庫県で創業し、首都圏を中心に食料品専門店を展開する北野エース。高品質な商品とユニークなラインアップに加え、バイヤーがこだわって展開する厳選商品が人気だ。
個性的で多様なニーズに応える商品を展開する同店の中でも、近年好評を集めているのが、「カレーなる本棚」という取り組みだ。
これは、北野エースが生んだユニークなカレーの陳列方法。カレーの箱を本棚に並べるように背表紙を見せて並べるスタイルで、地域のご当地カレーや特選カレーなど約100~300種類を取り揃える豊富なラインアップが特徴だ。カレーの種類は店舗ごとに異なるが、各店舗のスタッフがおすすめするカレーも店舗独自で展開し、オリジナリティ溢れる売り場は人気を集めている。
この売り場づくりが生まれた背景について、エースの富岡氏によると、「偶然の産物だった」と語る。
「約15年前、とある新店オープンを前に、レトルトカレーを想定よりも多く発注してしまったことがありました。その時、少しでも多く店頭に商品を並べてみようと、試しに棚差ししてみたところ、書籍の背表紙を見せているように見えて、まるで“本棚”のような見え方になったことが、『カレーなる本棚』誕生のきっかけでした。その後、調布パルコで初めて正式に展開し、現在では北野エースの代名詞的な売り場となっています」(富岡氏)。
まるで書店のようにカレーを並べている。陳列されているカレーの種類は店舗によって異なるが、展開店舗には約100~300種類を取り揃えている。
その後、レトルトカレーを効率的に陳列する方法として考案された「カレーなる本棚」に、ガイドラインを制定。「100種類以上を品揃える」「背表紙の見える陳列にする」といったルールを踏まえて、現在は全国店舗の約7割以上に展開している。
定価販売でも支持される品揃えと売り場の工夫
また、棚づくりにおける独自のガイドラインを制定するだけでなく、商品の選定においては、2000円を超える高価格帯のカレーや、グルテンフリー、米粉使用など、特徴的な商品を積極的に取り扱うことで、量販店とは異なる“ニッチな”品揃えを実現している。
さらに近年は、カレー以外にも、ドレッシングや“めしとも”にも特化。全国の北野エースのスタッフ全員が1年間で最も美味しいと感じたドレッシングの中から選ばれた商品を称える「ドレッシング大賞」や、同様にご飯のおともを厳選した「めしとも大賞」などを実施し、店頭では受賞商品を一堂に販売する。これらの実施背景にも、モットーである「量販店にできない、ニッチな品揃え」がある。
「量販店では取り扱っていないような、ニッチで特徴的な商品を揃えているのが北野エースの強みです。ニッチな商品を集めた売り場づくりは一見非効率に見えるものの、他店との差別化を際立たせる効果もあります。こだわり抜いた、ある意味尖った商品を集めることで、北野エースでしか味わえない売り場体験につながっていると思います」(富岡氏)。
さらに富岡氏は、商品の良さを届けるための「伝え方」にもこだわりがあると続ける。
「価格競争を主としない当店は、価格だけで言ったら他店に負けてしまいます。それでも来ていただけているのには……
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