従来の半額以下でキャッシュレス化 サントリー独自の自販機アプリ「ジハンピ」

7月には阿部サダヲと桜田ひよりを起用した新CMも公開

サントリービバレッジソリューションは、自販機向けのキャッシュレスアプリ「ジハンピ」を独自開発した。近年、現金を持たない人が増えているにもかかわらず、自販機のキャッシュレス対応の遅れが販売機会の損失を招いていた。その背景にはコスト面の課題があったが、「ジハンピ」は低コスト化を実現し、設置費用も従来の半額以下に抑えた。2025年中に15万台の導入と200万ダウンロードを目指す。

森祐二社長(左)と、マーケティング本部の井上尊之副部長

国内の飲料自販機のキャッシュレス対応率は約4割と推定され、9割が対応しているコンビニなどと比べて遅れをとっている。同社の調査によると、自販機がキャッシュレスに対応していなかったために購入をあきらめた経験がある人は3割に上った。対応自販機でも「買い方が複雑」「購入までに時間がかかる」といった課題が指摘されている。

同アプリの開発グループの一員であるマーケティング本部の井上尊之副部長は「自販機の本来の価値は『どこでも買える』『すぐに買える』ことだ」と指摘。一方、キャッシュレス対応の遅れにより、「どこでも買える」という利点が薄れつつあると話した。キャッシュレス対応の自販機であっても、利用方法の複雑さなどが原因で「すぐに買える」という本来の利点が損なわれていると考えている。

自販機は無人であり、使い方を尋ねる相手がいないため、購入を諦めるケースも考えられる。井上氏は「自販機そのものが選択肢に入らない人が増える」と危機感を募らせる。「不便な自販機はもはや自販機ではない」という考えのもと、同アプリの開発に至った。開発期間は約3年で、若手社員が中心となってプロジェクトを推進。「ジハンピ」は「本来の自販機の価値を取り戻す」ためのアプリとしている。

従来の半額以下にコストを抑えた「ジハンピ」

「ジハンピ」は、アプリを起動し、対応自販機の端末にスマホをタッチするだけで購入できる。支払い方法はクレジットカードや「PayPay」など13種類の電子マネーのほか、「楽天ポイント」など5種類のポイントにも対応している。

同アプリは、キャッシュレス化の課題であった運用コストの削減を徹底している。従来、キャッシュレス端末の運用コストはメーカーが負担しており、その結果、対応によって赤字となる自販機が多かったことが、キャッシュレス化の遅れにつながっていた。

そこで着目したのが、スマホの高機能化だった。従来は自販機の端末側で様々な種類のカードに対応しており、端末の高機能化と高コスト化につながっていた。現在のスマホはNFCリーダーなどが標準搭載されていることが多く、これらを最大限活用することで、自販機側の端末を低コスト化することに成功。この仕組みは特許も取得している。

操作や設定はシンプルで、登録に必要な情報は電話番号のみという点も特長だ。登録情報などのデータを別の用途に活用する予定はなく、プライバシー面の不安も払拭している。

ポイント対応も大きな特長で、購入時に使用できるだけでなく、1本につき1ポイント貯めることも可能。多くの人がポイントを使いきれず失効させている現状を踏まえ、低単価な自販機でポイントを活用できる仕組みは、新たな購入シーンの創出につながると考えている。

昨年12月から先行展開を実施した北海道エリアでは、「早くて便利」「登録が簡単」といった好意的な声が寄せられた。昨年12月から今年3月25日までに約4万台の自販機へ設置され、アプリのダウンロード数は約50万に達している。

今後の普及策として、「ジハンピ」をダウンロードすると、同アプリ対応自販機の商品から3本が無料になるキャンペーンを実施する。7月に放映予定のCMではタレントの阿部サダヲと桜田ひよりを起用。デジタル広告などを活用したコミュニケーション活動も展開していく。

自動販売機の市場は、コロナ禍以降ダウントレンドが続いている。一方、自販機は全国に約210万台存在しており、同社はコンビニよりも規模の大きい顧客接点として位置付けている。

自販機事業を成長させるため、自販機専用商品の開発など品ぞろえの強化や「ボスマート」などの法人サービスを進めている。AIを活用したルート再編や生産性向上を目指したオペレーション改革も行っている。

その結果、2022年からの3年間で既存台の500ミリリットルペットボトルの売上は30%増、法人企業向けサービスは1万7000台増加(24年12月末時点)。ルート生産性も25%向上した。

「ジハンピ」によるキャッシュレス化を自販機事業の戦略の柱としており、同アプリによって新たな価値提供と基盤強化につなげる考えだ。

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