2025年3月8日に創業65周年を迎えたデザインエージェンシーのたきコーポレーション。同社は周年事業の一環として、パーパス「つくる。その喜びで、生きる。動かす。」を体現する12の企画を実施することを発表した。その目的のひとつは、さらに先の“100周年”を見据えた組織基盤の構築にある。デザインを軸にさまざまな領域に挑戦し続ける同社の未来について、代表取締役社長の滝澤寿一氏と、今回の周年事業をリードしたCDOの藤井賢二氏に話を聞いた。
藤井氏が手にしているのは、同社の65周年キャンペーンキャラクターのライヴィー(左)とムーヴィー(右)。
カンパニー制導入から4年生成AIやメタバース領域も強化
たきコーポレーションは2021年に社内カンパニー制を導入し、組織体制を変更。長年事業のコアとして提供してきたグラフィック制作に加え、これまでにブランディング、動画、UXデザインなど、さまざまな専門領域に特化したチームを立ち上げてきた。直近ではJR東日本クロスステーション デベロップメントカンパニーが4月7日に開業するエキナカ商業施設「エキュート秋葉原」のWeb情報サービスデザインを担当。生成AIとメタバースを活用した、空間設計やリテール課題の解決に取り組んでいる。
代表取締役社長の滝澤寿一氏は「それぞれのカンパニーが成長することで、コーポレート全体の総合力強化につながると考えています。メタバース領域への本格的な挑戦も今回が初。クライアントの皆さんの課題に柔軟に対応できるよう、事業の拡大を図ると共に、各カンパニーの強みをさらに強化しているところです」と話す。
65周年記念ロゴ。2024年夏に社内コンペを行い、投票によって選出された。ロゴと共に示されているパーパスもまた、社員によるワークショップから生まれたもの(2023年3月策定)。創業当時から同社の根幹にある「つくる」ことへのこだわりが込められている。
65周年を迎えた同社が見据えるのは、さらに15年先の「2040年」だという。CDOの藤井賢二氏は「社会環境が大きく変革するこの数年の動きが重要」と話す。藤井氏が今回65周年事業の指揮を執るのも、近い未来を見据えた構想があってのことだ。
「“65周年”というのは、少し中途半端なタイミングに見えるかもしれません。でも重要なのは周年、節目に関係なく、動ける時に動くということ。実験的な社内プロジェクトを発動させることで、次のステップに活きてくるのではないかと考えました」(藤井氏)。
そこで今回、同社では「つくる。その喜びで、生きる。動かす。」というパーパスの体現を目的とした12の社員主導型企画を、1年をかけて実行していくことを発表した。
2万人動員の企画展が周年事業の大きなきっかけに
今回の周年施策に至る直接的な転機となったのが、2024年3~4月に東京で開催した「人生の大切なことをゲームから学ぶ展」だった。同イベントは日本デザイン振興会主催の「第3回GOOD DESIGN Marunouchi 公募企画展」に自主企画として応募し選出されたもの。その後各地で開催され、延べ2万人以上を動員した。
滝澤氏は「このゲーム展では私たち社員も生活者と直接接することができ、“人が動く”とはどういうことか目の当たりにしました。デザイン会社としてのあるべき姿や立ち位置を、改めて実感したのです」と振り返る。開催に向け、人員の確保をはじめとした大きな投資の意思決定が必要ではあったが、イベント単体では業績として直接的な成果を期待していたわけではなかった。しかし結果的に、これをきっかけに仕事の依頼を受けたり、社員一人ひとりのスキルやモチベーションの強化にもつながったのだという。
「やはり社員がポジティブに、自身の領域を超えて活動する経験が何よりも大事だと感じました」と藤井氏。そこで今回の周年事業では、経営層が主導するのではなく、社員が自ら企画立案・実行することを軸に置いた。2024年の夏に企画案の社内公募を行い、集まったのは16件。そこからブラッシュアップし、12の企画が成立した。社内向けのイベントだけではなく、公開セミナーやホワイトペーパーのリリースなどを通して、デザインを軸とした同社の専門性を、社会に還元していく。
「自分から手を挙げてくれる人がこれだけの人数いたこと自体が大きな財産。パーパスに掲げた“動かす”という言葉が、今まさに体現されつつあると感じています」と、滝澤氏は喜びと期待を語る。
2025年3月~ 2026年2月に実施する、社員主導型企画の一部。藤井氏が企画書のフィードバックを行い、これから本格的に始動していく。「社員同士の交流につながるだけでなく、自主企画で知見や経験を積むことで、クライアントワークにも生きてくると思います。社内や自身のリソースやスキルをどう活かしていくか。社員には実験の場として捉えてもらいたいという想いがありました」(藤井氏)。
あらゆるデザイナーが共存する人が集まる場をつくっていきたい
2025年4月時点で、同社の社員数は約400人。そのうち約160人がデザイナーで、そのほかにクリエイティブ領域を担う職種として、コピーライターやプランナー、プログラマーなどが所属するが、今後さらに人材の多様化を進めていく方針だ。藤井氏は「100年間企業体として成立し続けるためには、日本だけでなく、世界や宇宙まで活躍の場を広げていくようなデザインエージェンシーを目指さなくてはいけない」と語る。
「そのためには、あらゆるデザイナーが共存している集合体であることが重要。職種だけでなくジェンダーや国籍も同様です。さまざまなバックグラウンドを持った人たちが、楽しそう、面白そうと、自然と集まってきてもらえるような、そんな場をつくっていきたいと考えています」(藤井氏)。
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