3月4日、5日に開かれた「宣伝会議マーケティングサミットPREMIUM 2025」に登壇したカカクコム 求人ボックス事業本部 Head of Marketingの小島塁氏と、RTB House Japanの加藤貴大氏が、求人ボックスのマーケティング戦略やRTB House の強み、使用した成果などについて語った。
2つのキーワードを掲げ、戦略を強化
求人ボックスは、エリアや雇用形態、職種、年齢などを問わず、誰もが利用できる求人検索サービスだ。求人掲載数は2000万件以上、新着求人は毎日100万件以上で、月間ユーザー数は1100万人以上(2025年2月時点)と、非常に多くのユーザーが利用している。「価格.com」や「食べログ」などの大規模サイトを運営するカカクコムの中でも売上比率を高めており、すでに20%弱を占めるなど会社の成長もけん引している。
10年目という節目にあたり、世の中にとってなくてはならない存在になっていくという目標を掲げ、マーケティングを強化。業界内の他社サービスとの「同質化」と「差異化」という戦略キーワードを設定して、メンタルアベイラビリティとフィジカルアベイラビリティを意識した戦術に取り組んでいる。
「『同質化』とは、業界内の他社サービスが当たり前に行っていることを、求人ボックスでも行うようにすることです。反対に『差異化』は、人材領域の出自を持つ企業ではないことを生かして、カカクコムならではの価値や体験を磨き込んでいくことを目指しています」(小島氏)
カカクコム 求人ボックス事業本部 Head of Marketing 小島塁 氏
メンタルアベイラビリティを意識した戦術として、新たにブランドコンセプト・ロゴ・クリエイティブを刷新。多くの求職者はストレスや不安を抱えながら求職活動をしていることから、求人ボックスには不安やストレスに寄り添う機能が備わっていることを伝えた。
フィジカルアベイラビリティは有形商材に対して用いられることが多い概念だが、「時代の変化によって、デジタル上においても通用する概念になっている」と小島氏は考えているという。
「欲しい情報がすぐに手に取れるような状態、リアルで言えば店舗に配荷されているといった状態を、デジタルの中で意識して作っていこうと考えています」(小島氏)
ディープラーニング(深層学習)が導く実施効果の高さ
そうした戦略の一部をサポートするのが、RTB Houseだ。ポーランド発のDSPで、ダイナミックリターゲティングの機能が特長。ディープラーニングの活用によって、非常に高い効果を得られることが大きな強みとなっている。日本市場には後発サービスとして2018年に参入したが、右肩上がりで順調にビジネスが伸長。すでにリターゲティング広告を実施している企業の多くが導入しているという。
「一定のROASやROIを担保しながら配信量を拡大しようとすると、どうしても既存の媒体では限界を感じることがあります。その中でRTB Houseは、我々の求めるROASやROIを担保しながら非常に拡大できているので、すごく助けられています」(小島氏)
高い効果のカギであるディープラーニング(深層学習)は、マシンラーニング(機械学習)よりも膨大なデータを処理できるように開発されたAI技術だ。その学習プロセスには人間が介入せず、機械自身が自分で考えながらチューニングを行っていく。そのため、人間が思いつかないようなアプローチも行いながら最適な答えを導き出していくという特徴がある。
ダイナミックリターゲティング広告の配信には、無数の変数が関係している。ユーザー一人ひとりが閲覧している商品やそのタイミングも異なれば、購入したいと思うタイミングも異なり、配信を最適化するためにはそれらをすべて掛け合わせて計算する必要があるが、まさにそれはディープラーニングの得意とする分野だ。また、それをリアルタイムで計算、分析してビッティング(入札)を実行するというスピード感も強みとなっている。
「精度を上げるためには大量のデータが必要となりますが、当社の基準さえクリアできていれば、ほとんどのクライアントで期待する効果を達成できます」(加藤氏)
通常、リターゲティング広告はサードパーティCookieを利用して配信されるため、世界的なCookie規制が進む中で、今後リターゲティング広告はどうなっていくのかと懸念する広告主も多い。まさに小島氏も加藤氏にそう問いかけたところ、加藤氏は次のように回答した。
「結論から言えば、サードパーティCookieがなくなってもリターゲティングは可能です。当社はGoogleの提供するCookieの代替ソリューションである『Privacy Sandbox』の開発にも携わっており、当社の提案も採用されています」
RTB House Japan ビジネスディベロップメント ディレクター 加藤貴大 氏
RTB Houseが強調するのは、効果の高さだ。加藤氏はセッションの最後にも、「当社はディープラーニングという競合他社とは異なる考え方のアルゴリズムを持っているため、競合他社と同時にリターゲティングを配信したとしても、競合他社と同水準のコンバージョンが獲得できることを市場に啓蒙していきたい」と、自信をのぞかせた。
