「本日も絶体絶命。」「いつだって究極の選択」「ときめき図鑑」など、ネット動画のプラットフォームを通じて配信される動画コンテンツが数百万回再生のヒットを記録し続けている。ストーリー構成や撮影、編集などの技術、著名な俳優も含むキャスティングなど、テレビ番組などと同様のクオリティが特徴だ。
仕掛けるのはKDDI(au)とコンテンツスタジオQREATION(キュリエーション)による「Project TOWA」。TikTok、YouTube ショート、Instagramリールなどの縦型動画コンテンツを次々とリリースしている。3月24日には、フリーアナウンサーの森香澄が「復讐妻」を演じるショートドラマ「合コンの悪魔」の配信が始まったばかりだ。
ユーザー数、広告市場ともに拡大を続けるネット動画領域で両社が目指すものとは。KDDIの望月祐司氏と、QREATIONの米永圭佑氏に聞いた。
3月24日から配信されている、森香澄主演のスマホ向け縦型ショートドラマ『合コンの悪魔 ~サレ妻たちの華麗なる復讐~』
スマホ時代の新たなエンタメを共創
━━両社の協業の経緯についてお聞かせください。
望月:KDDIは通信事業者として、最高のモバイル体験を提供することを使命としています。その中でエンタメコンテンツは、お客さまの生活を豊かにする重要な要素だと考えています。
KDDI マーケティング本部 R&Dセンター ARPU企画グループ 望月祐司 氏
多くのパートナーと協業していますが、QREATIONとはIP(知的財産)の育成という点で深く共鳴し、長期的な関係を構築したいと考えました。動画コンテンツの制作に留まらず、イベントやグッズ展開、さらには他メディアへの展開など多角的にIPを育て、ビジネスを拡大していくというビジョンを共有しています。この協業体制こそが「Project TOWA」の根幹を成しており、今後のエンタメ業界を牽引していく存在になりたいと考えています。
米永:QREATIONは、スマホでの動画視聴が日々の生活に不可欠となった時代に、より楽しくて見応えのある、リッチで質の高いコンテンツ体験の提供を目指して立ち上げた会社です。特に縦型動画は、表現方法や視聴スタイルの面で、テレビとはまったく異なる新しいエンタメの形として大きな可能性を秘めています。TikTok、YouTubeショート、Instagramリールなどプラットフォームも多様化しており、それぞれの特性に最適化したコンテンツが求められています。KDDIとの協業によってその思いを現実のものとし、新たなエンタメの潮流を創出できると確信しています。
QREATION 代表取締役 CEO 米永圭佑 氏/東京大学卒業後、2018年に日本テレビへ新卒入社。「有吉の壁」などバラエティ番組のディレクター・ビジネスプロデューサーを務める。2022年に株式会社QREATIONを創業。
「朝7時」のコント配信が生んだ新たな視聴習慣
米永:「本日も絶体絶命。」は、人気の実力派コント師に加え、俳優・インフルエンサーなど豪華メンバーにご出演いただいている縦型ショートコントのシリーズです。テレビ番組では大掛かりなセットを大がかりなセットを組んでコントをする機会が少なくなりつつなる中で、スマホという新たなプラットフォームで改めてコントの魅力を発見してもらい、幅広い世代にも届けたいという思いがありました。こちらは公開時刻を朝の7時に設定していますが、望月さんからの提案でしたね。
Watch on TikTok
望月:コンテンツ視聴は、通勤通学時間や休憩時間などのすき間時間に行われることが多いというデータがあります。だからこそ、朝7時という一見視聴率の低い時間帯に配信することで、新しい需要を喚起しユーザーの1日を楽しくスタートさせるきっかけを提供できると考えました。朝の情報番組を見る人、ニュースアプリをチェックする人など、既存の朝の過ごし方に加え、エンタメコンテンツを楽しむという新たな選択肢を提供できたことは大きな成果です。
米永:朝のすき間時間にコントを見るという新しい視聴習慣が生まれ、多くのユーザーに朝の楽しみを提供することができました。
アクティブユーザーが多い夕方から夜にかけての投稿が一般的だったのですが、KDDIさんのスマホユーザーの行動パターンに対する深い理解と、固定観念にとらわれない柔軟な発想が、この成功につながったと感じています。協業のメリットを最大限に活かせた好事例だと考えています。
━━「ときめき図鑑」は女性の共感を生むコンテンツを目指し、スタートしたものですね。
望月:スタート当初は「元カレ図鑑」というタイトルでしたが、わずか1カ月後にリブランディングを行いました。これは、配信後のユーザーの反応やデータ分析に基づき、コンテンツの方向性を修正した結果です。単に数字を追うだけでなく、ユーザーの声に真摯に耳を傾け、コンテンツを進化させていくことがソーシャルメディアとの関係において重要だと考えています。
QREATIONの柔軟な対応力と的確な分析力、そしてプロジェクトメンバーによるスピーディーな意思決定が、プロジェクトの成功に大きく貢献していると思います。
米永:SNSコンテンツは、投稿してすぐにユーザーの皆さんから反応をもらえることも大きな強みです。公開後、ユーザーの反応や視聴データなどを分析し、より早く軌道修正することで、多くのユーザーに響くコンテンツづくりが可能になります。リブランディングはKDDIとの強固な信頼関係があるからこそ、大胆な軌道修正を実現できました。KDDIさんの柔軟性と迅速な意思決定が、このプロジェクトの成功を支えています。このスピード感こそが、変化の激しいデジタル時代において生き残るための必須条件だと考えています。
「いつだって究極の選択」は、ジェイアール東日本企画とのコラボで、JRの電車内のビジョンで放映される「TRAIN TV」とスマホの両方で視聴でき、それぞれで異なる結末を用意しました。電車とスマホ、つまりリアルとデジタルの相互送客で新たな視聴者を獲得することも狙っています。
上質コンテンツで企業のコラボレーションの機会を増やす
━━企業とのコラボレーションも受け入れていると伺いました。
米永:マーケティングでコンテンツを活用したい企業との共創機会を拡大していきたいと考えています。スマホ時代において、コンテンツと広告の境目がなくなり、ユーザーが見たいものを選んで見るようになってきています。そうした中で、これまで通りのCMや広告をSNSに流してもすぐにスキップされてしまう。だからこそ、広告も「コンテンツとして面白い」ことが重要になってきていているのではないかと思います。
例えば、新商品をPRする際に、「本日も絶体絶命。」で中島結音さん演じる人気キャラ『“新人ギャルOL”が、新商品を開発するコント』として届けていくことで、コンテンツの面白さと商品訴求が両立した自然なプロモーションにもつなげていけると思います。
Watch on TikTok
望月:両社の取り組みを通じて、再生数という観点でたくさんの方々に見てもらえていることに加えて、多くのコメントで「auさん面白い」「使い続けます」といった声が寄せられています。視聴者が本当にコンテンツを楽しんでくれて、ブランディングにも大きく貢献していると実感しています。良質なコンテンツを提供し、視聴者に見てもらえることが非常に嬉しいので、今後も続けていきたいですね。
米永:良質なコンテンツへのタイアップやコラボを通じたプロモーションが、これからの時代に求められる形のひとつになっていくと考えています。「本日も絶体絶命。」をはじめとする既存のコンテンツへのタイアップや協賛はもちろんのこと、パートナーとして、一緒に新しい番組やオリジナルコンテンツなどを開発することも可能です。すでにいくつか準備を進めているところです。
「Project TOWA」は、3月28日にKDDIとQREATIONが共同で立ち上げた「次世代型エンタメIP創出プロジェクト」
━━今後の展開についてお聞かせください。
米永:私たちは「上質なコンテンツ・IP」の開発を常に追求しています。企画や演出、そして出演者のキャスティングなど、コンテンツの質を高めるためのあらゆる要素にこだわっています。毎日、無数のコンテンツが投稿・視聴されるスマホ時代においても、信頼性が高くブランド価値向上にも貢献できる質の高いコンテンツを提供していくことで、企業とユーザー双方にとってメリットのある共創関係を築けると考えています。
望月:KDDIは「Project TOWA」を通じて、単なる動画配信にとどまらないIPビジネスの確立を目指しています。「Pontaパス」や「ローソン」など、KDDIグループのリソースと連携することで、さらなる相乗効果を生み出せるはずです。
お問い合せ
株式会社QREATION
Mail:info@qreation.jp
URL:https://qreation.jp/contact
