(左から)花本氏、本間氏、柴山理事長、国枝准教授
アンケートで明らかとなった広報に対する「理想と現実のギャップ」について、日清食品の広報責任者を務める花本氏は「広報が何をしてくれるのか、分かっていない経営者も相当数いる」と指摘。広報は会社によって役割やできることが違う点を考慮しつつ「広報の使い方を啓蒙していく必要もある」と話した。
NTTデータグループの広報部長も務めた経験がある本間氏は、経営者の広報に対する期待が「正しい期待なのかどうか」という点に触れた。「経営者層が広報の力を十分に理解したうえでの期待なのか、広報と一緒に取り組むという覚悟の上での期待なのか」という視点が重要だと指摘した。
国枝氏は「(経営者は)広報が何をしてくれるか分からない一方、広報をあらゆる問題解決につながる『魔法の言葉』のように捉えている場合もある」と指摘。大学経営においても「広報を使えば受験生が増える」といったあいまいな 期待が経営層に散見されるという。
ディスカッションでは、こうしたギャップは経営者が広報を正しく理解していないことに起因しているとされた。それを踏まえ、本間氏は「経営者層になる予定の人は、広報を学ぶ機会があってもいい」と話した。広報を学ぶことで、どのように動いてもらうべきかを理解し、期待に近づくような組織体制が整うと見ている。「経営機能としての広報」という定義は、広報側も自覚しなければならないとも述べ、広報がトップ経営層の背中を押し、共に行動する覚悟が必要であると話した。
経営に資する広報について、花本氏は「(広報の)課題発掘の力がさらに必要である」と指摘した。達成したいことや解決したい課題を踏まえたメディアプランニングが求められ、単にメディアに露出するだけでなく、「メディアに出てどんな効果があったのか」を考える必要があり、その成果を経営層と共有することも重要だと述べた。
広報に求められるスキルも議題にあがり、本間氏・花本氏ともに「機能的価値」だけでなく、物語性を持たせるなどの「情緒的価値」も重要だと述べた。本間氏は「ステークホルダーに対して難しい事業内容を面白く魅力的に伝えるスキル」と指摘。花本氏は「(広報は)人の気持ちや意識を変えるために表現力が求められる」とし、「広報の人材はいろいろな能力が必要だ」とまとめた。
