食品CMならではのハードルを軽々と乗り越える「巧みさと勇気」/日清食品

どうしてあのようなCM企画が通るのか?

私は食品企業で38年間、パッケージデザインから広告の企画・制作に至るまでを担ってきました。今回、日清食品の「日清焼きそばUFO」・「日清どん兵衛」・「チキンラーメン」3本のCMを論評するというコトで、非常に武者震いというか緊張を強いられています。

日清焼そばU.F.O.「疲れブチ抜く野球部 篇」(30秒)

食品CMというと、多くのお客様はまず、湯気の立つ料理や、商品そのもの食べるカットなど、いわゆる料理シズル・食べシズルと言われる映像と、好感度が高く明るい印象のタレントを思い浮かべるのではないでしょうか?

今回のこの3本には、完成された商品(料理)のカットがあり、食べるカットは、「日清焼きそばU.F.O.」「チキンラーメン」で、「日清どん兵衛」にはありませんでした。自分が現役時代の日清食品のCMのイメージは、過激・目立つ・斬新と形容できるようなもので、食品CMのセオリーとは一線を画していました。

どうしてあの様なCMの企画が社内を通るのか、現役当時から不思議でなりませんでした。

食品企業、老舗ならではの難しさ

日清のどん兵衛「朝どん兵衛ありかも 篇」(30秒)

食品というカテゴリーは、お客様の毎日の生活を支える重要なインフラでもあるので、よく言われる“安心・安全”が最優先されるのは当然のことでもあります。

ですから、その“安心・安全”がCMの表現にまで影響を及ぼしてしまうことがよくあります。日清食品であれ、私の卒業した会社であれ、即席、インスタントという言葉が商品にまとわりつきます。つまり本物が存在するのです。どうしても商品が限りなく本物に近いものであると表現したくなるというか、それを求められていたと思います。

さらに、老舗とも言われる歴史もあるためか、よく「おたく“らしく”ない」とのご指摘をいただくことがあります。大口を開けて食べるシーンの表現や、箸の持ち方、持ち手、画面の端に見えた焼き海苔の表裏に至るまで、数多くのコメントをいただきました。日本の食のもつマナーやしきたり習慣など、良き伝統として残すべき点でもありますが、一つ間違えれば、CM取り下げにまで及びかねないと怯えてしまうようなコトも経験しました。

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