マーケティングの裏には数字で計れない「人の心」という誤差がある

マーケティングに重要なのは「わからなさを認めること」

━━マーケティングで大切にしていることは?

入社してわかったのは、メルカリのマーケティングは非常にデータドリブンだったこと。しかし、数値による可視化には限界があります。例えば、マーケティングの投資効果を分析し、次の意思決定に活かすことは重要ですが、商品の売上など、投資効果につながる要因は複数存在し、個々のマーケティング施策の効果の厳密な把握は極めて困難です。

だからこそ、大切なのは「わからなさを認めること」。科学のアプローチと同じように計測の限界の中で誤差の範囲を把握する、つまり「確からしさ」を見極めることが重要だと、私は思うのです。そこでメルカリでも定量的な価値だけでなく、「定性的」な価値に目を向けるべきだと考えました。

例えば、2023年には不要品の価値の可視化を目的に、イベント「メルカリで出会えるモノでつくったウチの実家」を開催。以前のメルカリでは、アプリの機能性を訴求するようなプロモーションが中心でしたが、お客さま目線でメルカリ使用時の共感を得ることに徹した同施策は、5日間で約1800人が来場するなど大きな反響を獲得。私含めマーケティング部のメンバーが皆、メルカリのヘビーユーザーだったからこそ発想できた企画だと思います。

マスメディアン
取締役 国家資格キャリアコンサルタント
荒川直哉
マーケティング・クリエイティブ職専門のキャリアコンサルタント。累計4000名以上の転職を支援する一方で、大手事業会社や広告会社、広告制作会社、IT 企業、コンサル企業への採用コンサルティングを行う。転職希望者と採用企業の両方の動向を把握しているエキスパートとして、キャリアコンサルティング部門の責任者を務める。「転職者の親身になる」がモットー。

━━若手マーケターへのメッセージをお願いします。

定量的な計測には限界があると忘れないでください。例えば、広告をクリックしたのは興味からか、単に間違えただけかは、クリック数のデータだけでは判断できません。背後にある人の意識や行動、つまり「人の心」まで数値から理解するのは不可能です。そこで1件1件クリックした人に理由を聞いたとしましょう、それだって人の心を完璧に理解したことにはならないのではないでしょうか。だからこそ、マーケティングは「確からしさ」にも投資をし、企業やサービスの新たな可能性を生み出すべきだと思うのです。

また、私はこれまでマーケティングを専門にしてきたわけではありません。今の役職はマーケティング責任者ですが、このポジションにいる理由は、マーケティングの外に出たことがあるからだと思っています。採用や経営の経験によって、マーケティングコストの原資の生み出され方、会社組織の動きを理解できました。

たとえ大企業からスタートアップに転職しても、今はそれでキャリアが行き詰まる時代ではありません。スタートアップの経験が大きな糧になり得るでしょう。転職でも異動でもいいと思います。自ら意図的に広い分野での経験を積み、戦略的にキャリアを築いてください。

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荒川 直哉(マスメディアン 取締役 国家資格キャリアコンサルタント)
荒川 直哉(マスメディアン 取締役 国家資格キャリアコンサルタント)

マーケティング・クリエイティブ職専門のキャリアコンサルタント。累計4000名を超える方の転職を支援する一方で、大手事業会社や広告会社、広告制作会社、IT企業、コンサル企業への採用コンサルティングを行う。転職希望者と採用企業の両方の動向を把握しているエキスパートとして、キャリアコンサルティング部門の責任者を務める。「転職者の親身になる」がモットー。

荒川 直哉(マスメディアン 取締役 国家資格キャリアコンサルタント)

マーケティング・クリエイティブ職専門のキャリアコンサルタント。累計4000名を超える方の転職を支援する一方で、大手事業会社や広告会社、広告制作会社、IT企業、コンサル企業への採用コンサルティングを行う。転職希望者と採用企業の両方の動向を把握しているエキスパートとして、キャリアコンサルティング部門の責任者を務める。「転職者の親身になる」がモットー。

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