体験価値を重視した、Mizkan・DeNAのデジタル活用と広告ソリューション

体験価値を重視した、Mizkan・DeNAのデジタル活用と広告ソリューション

地域企業によるマーケティングケーススタディをディスカッションし、オン・オフ統合を踏まえた事業やブランド成長へのヒントが得られる場となるよう開催された、宣伝会議主催の「アドタイデイズリージョナル2025春」。Mizkan(ミツカン)のデジタル推進本部本部長の渡邉英右氏がマーケティングにおけるデジタル活用について、ディー・エヌ・エーのPococha事業部の萱島崇氏、稲垣伸太郎氏がライブコミュニケーションアプリの広告ソリューションについて、それぞれ実例を交えて紹介した。

デジタル活用は目的を定めてから取り組むことが大事

愛知県半田市で江戸時代後期に創業し、食酢・ぽん酢・めんつゆ・鍋つゆで高いシェアを誇るMizkan。顧客接点がデジタルにシフトする現代では、デジタル接点におけるブランド体験の質が企業の大きな差別化要素となる。そこで、顧客への体験価値の向上(CX)だけでなく、社会のサスティナビリティに寄与する価値の向上(SX)、従業員へ向けた体験価値の向上(EX)を軸にデジタル活用を進めている。

デジタル活用を進めるにあたって注視しているのは「デジタルは手段であり目的ではない」「目的意識を具体的に持つ」という点。渡邉氏は「最初はデジタル活用を目的だと考えていなくても、進めていくにつれて無自覚に目的になってしまうこともある」と注意を呼びかける。

写真 人物 Mizkan(ミツカン)のデジタル推進本部本部長の渡邉英右氏

Mizkanでも過去に、データをわかりやすく可視化できるツールを取り入れたことがあったが、「導入すると何かが見えてくるのではないか」と考え、目的設定ではなく導入スピードを重視したが、結果的に社内での活用が浸透しなかったという失敗経験があるという。その後、得意先や小売企業から上がってくる売上のPOSデータの可視化を目的に、営業主導でデジタルツールを導入。担当している企業の売上が、日本全体の売上に対してどんなギャップがあるか、それに対しどうアクションしていくべきかなどの目的を明確にした。

また、従業員の活用意欲を促進するため、営業のキーパーソンが登場する動画を作成し、親しみやすい形でツールを紹介した。「最も避けるべきは、世の中でデジタル活用が流行っているから、まず使ってみようというスタート。どんな目的で活用するのか最初にきちんと掲げることが大事」と、渡邉氏は改めて目的設定の重要性を述べた。

社内を巻き込むデジタル活用推進の実例を紹介

実際にデジタル活用を進めるにあたり、ChatGPTを使うと課金が発生してしまうため、社内で一からアプリケーションを開発した。デジタル推進メンバーにはプログラミング経験者がほとんどいなかったため、取り組みを説得するのに1カ月ほどかかったそうだ。結果的には自分たちで開発できたことがメンバーの成功体験にもつながったが、社内活用を開始したものの、思ったように活用は進まなかった。

「新しいものが好きな人は使ってくれるが、社内で仕事ができると思われているような人ほど、仕事が忙しいからとなかなか使ってくれなかった」と渡邉氏は当時の状況を振り返る。その状況を払拭すべく、いくつかの取り組みを始めた。その1つが、興味を持ってくれている従業員による、自発的なコミュニティ「フレンズ会」の発足。3カ月ほど前に始め、現在は120人ほどが参加しているという。Mizkanは愛知県半田市と東京に勤務地があるため、双方の従業員をつなぐ役割も果たしている。商品開発を担当する部署の従業員がAIでつくったレシピを共有し、試食を呼びかけるなど部署を超えた巻き込みにもつながっているそうだ。

しかし、それだけでは事業のコアな部分での活用とはならない。特にマーケティング本部においては、日々の業務の忙しさからも、デジタル活用という新しい取り組みを受け入れる体制がなかなか進まなかったそうだ。そんな状況下で今年、新商品のマーケティング計画を構築する機会があった。世の中には安くていいものが豊富にあり、簡単には良い商品やサービスがつくれない中、いかに価値を創造して、他商品との差別化を図るか。

そこで生成AIを活用した。マーケティング計画をもとに、生成AIを「マーケティング専門家」「マーケティング以外の専門家」「生活者」の3者に置き換えて相談したのだ。

写真 人物 Mizkan(ミツカン)のデジタル推進本部本部長の渡邉英右氏

例えば「マーケティング専門家」としては、ターゲットの探索や固定概念の打破、アイデア出し、献立・レシピ作成など「発想を広げる」という目的、そして、STP・4Pの添削、ターゲット理解やインサイトの添削、コンセプト・商品サービス名・コピーの考案など「アドバイスをもらう」という目的で活用した。「マーケティング以外の専門家」としては、PEST分析やSWOT分析、3C分析、市場規模、原材料価格の予測など「環境認識・情報収集」に、また「生活者」としては、ペルソナ作成やカスタマージャーニーマップ作成、デプス・グループインタビュー、深層心理理解など「インサイトの理解」にも役立てた。それにより、これまでの消費者のニーズを探るうえでの人対人、アンケートでの情報収集では拾えないような、人に話しにくいリアルなニーズや細かなニーズに気づくことができたという。

写真 人物

そのほか、議論のテーマを与えたうえで、ペルソナを作成し、グループディスカッションをさせるなどの活用もしている。大テーマを与えれば、生成AIが章立ててポイントを整理し、求めるペルソナの視点から議論を進め、要約まで仕上げてくれる。また、生成AIを活用してアジア向けのWebサイトを制作。人手がない、時間がない、コストがかけられないという状況下において、生成AIでイラスト作成や、コンテンツのライティング、英語・繁体字・韓国語・タイ語の翻訳をし、従業員2人で3カ月の構築期間、数百万円の予算で2つのサイトを開設したという。渡邉氏は生成AIについて、「小難しいものではなく、優秀なパートナー。的確に指示をしてあげれば動くヤツと捉えれば上手く活用できる」と明言し、話を締めくくった。

現代に求められるコミュニティ型アプリ

続いて、ライブコミュニケーションアプリ「Pococha(ポコチャ)」が提供する新たな広告ソリューションについて、ディー・エヌ・エー(DeNA)ライブコミュニティ事業本部Pococha事業部アドエクスペリエンス部の萱島崇氏、マーケティング部の稲垣伸太郎氏が講演した。

写真 人物

DeNAといえば、プロ野球の横浜DeNAベイスターズやスマホ向けアプリ「ポケポケ(Pokémon Trading Card Game Pocket)」のイメージが強いかもしれないが、会社全体ではゲーム事業に次ぐ売上規模があるのはライブコミュニティ事業で、その中心が Pocochaだと稲垣氏は話す。Pocochaとは、ライバーとリスナーによる双方向コミュニケーションで一緒にライブ配信を盛り上げる「つながるライブ配信」アプリ。ライバーによるライブ配信をコメントやアイテムでリスナーが参加して楽しむ。YouTubeやInstagram、TikTokはインフルエンサーや芸能人がライバーとなり、一般の人が視聴するというスタイルの「メディア型」だが、Pocochaのライバーは一般の人が多い。

一つの配信枠に集まるリスナーは数十人と小規模の場合が多いためコメントが拾いやすく、双方向のコミュニケーションが成立し、ときにはリスナー同士のやりとりも発生する「コミュニティ型」であることが特徴。「毎日多くのライバーが配信し、そこに10~100人ぐらいのリスナーさんが訪れて、おしゃべりを楽しんでいる。いわば、学校の部室での会話のようなイメージ」だと稲垣氏は語る。

写真 人物

2024年12月時点での累計ダウンロード数は652万、一般的なユーザーの平均視聴時間は1日181分。萱島氏はPocochaが支持される理由について、「5~10年前と比べて、つながりの機会が減っていることが要因のひとつ」だと明かす。同社の調査によると、飲み会の数も、友人との外出頻度も、同僚との仕事以外の会話も減っており、4人中3人(75.1%)が普段のコミュニケーションに何らかの物足りなさを感じていることが明らかとなった。

広告を会話のネタにするプロモーション

Pocochaが提供する広告手法の1つは、企業の商品やサービスをPocochaで使えるアイテムとして登場させるというもの。いわば、絵文字やスタンプのようなものだ。リスナーがライバーの活動を応援する気持ちを表現したり、ライバーがリアクションする際に使ったりする。また、アイテムがきっかけで話題が広がったりもする。普段のコミュニケーションの延長線上に存在するため、広告でありながら、ライバーもリスナーも楽しみながら利用するのがポイントだ。実際にユーザー満足度は平均70%であり、企業のPR情報を届けながらも、UXを毀損していないことがわかる。

写真 人物

また、企業とのコラボアイテムに合わせた歌やダンスを楽しんだり、「お腹空いたね。みんなでピザでも食べる?50%クーポンあるよ」といった会話の流れから、クーポンを使用してデリバリーしようと呼びかけ、みんなで一緒に食べているような感覚を共有したりと、ユーザーにとって自然な形で、深いブランド体験の創出を生み出すことができている。これらの“楽しい”広告接触により、ユーザーのコラボ企業や商品・サービスに対する「認知度」「好感度」「魅力度」いずれも、体験前後の比較で向上しているというデータもあり、ポジティブな態度変容に貢献できているようだ。稲垣氏は「広告でありながらも、コンテンツという意識でやっている。会話のネタとしてみんなで共通のことを一緒に楽しんでもらうようなイメージ」だと、今後のPocochaのような広告ソリューションのニーズの高まりにも期待を寄せた。

advertimes_endmark

お問い合わせ

株式会社ディー・エヌ・エー

MAIL:pococha_ad_x_my@dena.jp


この記事の感想を
教えて下さい。
この記事の感想を教えて下さい。

この記事を読んだ方におススメの記事

    タイアップ