CD 松田翔太氏に聞く、「偉人たちの愛用品」をコンセプトにしたZoffのメガネのクリエイティブ

クリエイティブチーム結成から6日後に、社長プレゼン

「コロナをきっかけに、いろんな仕事に対する向き合い方が自分の中で変化しつつあって。いろいろと考える中で、自分の興味があることを中心に、僕が好きな人と仕事をするということが、これからの人生において大事にしてくべきことなんじゃないかなと思い始めたんです。そうして考えていく中で、自分はやはり映像の世界が好きだなと。その中でも特に広告が、自分の感覚と合うというか、興味のあるところでした」と話すのは、俳優として活躍する松田翔太さん。

かつてクリエイティブ誌『ブレーン』でも連載を持っていたほど広告好きで、新旧の広告クリエイティブに詳しい松田さんだが今回、広告に「出演」するのではなく、ついに自ら広告を「ディレクション」したのである。

それが2024年10月に公開されたZoffの新商品「Galileo(ガリレオ)」のクリエイティブだ。特設サイト、YouTubeチャンネル、公式Instagramで映像が公開されたほか、東京・原宿のURAHARA WILD POSTINGでは屋外広告を展開した。

「学生時代に留学していたときも広告が好きで見ていたし、役者として出演させていただくようになってから、クリエイティブという仕事をさらに理解するようになり、現場にいる人たちと一緒に、自分も広告をつくる仕事をしたいなと思い始めました。そういう気持ちが強くなって、よし、やるぞ!と自分で決めたものの、つくるきっかけがつかめませんでした」

そんな松田さんの想いを実現するきっかけとなったのは、ファッション、カルチャー、音楽のプロデューサー・クリエイティブディレクターとして活躍している藤原ヒロシさんとの仕事だった。

松田さんは自身がアートディレクターを務めるピアスブランドで、藤原さんと共同制作を行っている。2024年8月には藤原さんをアドバイザーに迎え、ヘアサロンをオープンした。こうした経験を経て、映像や広告のクリエイティブにおいても「自分らしいものがつくれるのではないか」という想いがさらに沸いてきたのだ。

そのときに出会ったのが、藤原さんが2023年に展開した講義「FRAGMENT UNIVERSITY」でプロデューサーを務めていた博報堂 相良泰至さんである。
「FRAGMENT UNIVERSITY でヒロシさんから松田さんを紹介いただきました。2024年のゴールデンウィーク明けに、マネージャーの安藤さんを介して広告の制作に携わりたいという意向があることをお伺いしました。ちょうどその頃、Zoffさんから新商品のお話をいただいていたんです」

新商品「Galileo」は金属を一切使用せず全てのパーツをラバーのみで成型、特殊構造による独創的なフォルムのメガネだ。「デザイン性と機能性を兼ね備えた画期的なメガネの発売にあたり、アーリーアダプター層に打ち出し、新市場を確立したい。さらには新しい感覚のクリエイターにお願したい」というクライアントの意向を聞いたとき、相良さんは「松田さんに相談してみよう」と思ったという。

「TVCMがあるプロモーションではなかったので、当初はまさか松田さんに受けていただけると思ってもいませんでした。ところがお会いしたその場ですぐに、実際にかたちになったビジュアルのアイデアが出てきて。あっという間に企画がまとまってしまい、じゃあ、それでプレゼンしましょうとなりました」

そして、クリエイティブチームにはアートディレクターに小杉幸一さん、プロデューサーに稲垣護さんが参加。スタッフ全員が集まってから6日後に、松田さんはメガネブランドZoffにプレゼンをすることになった。

「当初から映像のイメージが浮かんでいたものの、これ一発で決めようなんて思ってもいませんでした。なにしろ初めてのプレゼンで、クライアントにどの程度プッシュしていいのか、そのバランスもわからずでした。でも臆病になっても仕方がないし、思い切って提案してみたら、クライアントさんに予想以上の反応をいただくことができました」(松田さん)

このプレゼンでは、松田さんが作成した企画書を提出した。iPadを使って縦型につくった企画書は、松田さんにとって「頭の中を整理するためにつくっていたので、正直これでいいのかわからない」ものだったが、それを見た小杉さんは「従来の方法論とはまったく違った企画書のつくりかた」に驚いたという。というのも、松田さんがつくった企画書は、自分が考えたプロセスをそのまま見せるという流れになっていた。また通常、企画コンテを見せてから演出コンテを見せるというステップを踏むが、一つの流れの中で、そこまですべてが掲載されており、誰が見ても非常にわかりやすい内容だった。

「これまで僕もいろんなチームで仕事をさせていただきましたが、そのプレゼンは初めてとは思えないものでした。企画書には考え方から解像度の高い演出まですべてが一つの流れの中で構成されていた上に、話し言葉のように自然な流れで言葉が全部デザインされていたので、聞いている人みんなの頭の中にスーッと入ってくる。一緒に企画を出し合う時も、瞬発的にアイデアを出して、まさにアイデアで会話をしていくという進め方。このプロセスが松田さんの個性。僕もいい刺激を受けました」(小杉さん)

映像のコンセプトは「偉人たちの愛用品」

メガネの広告として成立させるためにクリエイティブに必要なものは何かを具体的に考える上で、キーワードとなったのが、「偉人たちの愛用品」だ。

「その中でも最上の人は誰かと言えば、例えばスティーブ・ジョブス。彼が履いていたニューバランスのスニーカーやリーバイスのジーンズ。その人が身につけることで決して高価なものでなくてもいいものであることが伝わり、商品に対する信頼感が生まれる。『Galileo』は機能が優れ、ラバーという特徴的な素材を使っているけれど、今回の企画ではそれを全面に出すのではなく、眼鏡のある場所やどう存在しているかを大事にしたいと思いました。機能や素材、デザイン性のどちらかに行き過ぎてもよくないし、広告ゆえに伝えるメッセージは一つにしたい。そのため、too muchにならないよう、引き算で考えていきました」(松田さん)

クライアントは当初機能性を重視して考えていたが、松田さんのプレゼンを聞いて世界観を重視してクリエイティブを進めることに納得したという。

「『Galileo』は機能性に優れた商品ですが、Zoffというブランドはやはりライフスタイルに近いところで表現したほうがより伝わるように感じました。例えば軍や警察、プロスポーツで使われているブランドとは明らかに違いますから。機能を重視しすぎてしまうと、Zoffらしさが無くなってしまうという懸念もありました。だから、生活におけるきれいな感覚、美しいという感覚を見せることで、気持ちよさそうなメガネと感じてもらうことが大事かなと思いました」(松田さん)

そうして生まれたムービーは、ゆったりした音楽が流れる中、かつてのフィルム映画を思わせるような映像が続く。9歳の少年(ガリレオくん)から見たパパとパパの彼女との物語だ。「Galileo」だからこそ提供できる、メガネを気にしない幸せな日常を「自由」と定義し、キーメッセージ「自由を発明せよ。」。本メッセージは「Galileo」シリーズに加えて、メガネへの深い探求心でイノベーティブな商品を生み出すZoffの開発姿勢も表現している。

そのコンセプトは、イタリア人がよく口にする言葉「Dolce far niente(ドルチェファールニエンテ)」だ。日本語に訳すと、「何もしない美学」。モデルのキャスティングからディレクションまでを松田さんが務めた。

「自由を発明せよ。Galileo」篇

「Galileoというメガネはかけている時に気にならない上に、踏んでも壊れない。このメガネをかけていることがすごいのではなく、メガネをかけて何かをすることの素晴らしさを伝えることの方が大事ではないかと。その考え方に、『Dolce far niente』という言葉が合うと思いました。

僕はイタリアに一時期住んでいたことがあり、自分の中に美しい海の記憶があります。その海と同じような美しさを映像で表現できれば、それを見た人には海がきれいだなという感覚と同時に、そこの場所でかける気持ちよさそうな眼鏡として印象を残せるのではないかと思いました。広告だからもちろん主役は眼鏡なのですが、ムービーの主役は決してメガネではないんですね」

撮影を手がけたのは、ロンドンを拠点とするフォトグラファーのPiczoさん。撮影は九州・天草で行われた。

「『偉人が使っている愛用品』というコンセプトを思いついたけど、実際に偉人を登場させるのは難しい。偉人の代わりに品格のある世界に存在する人たちやものたちへと変換する必要があり、そのためにはPiczoさんの写真ならではの柔らかさや品がほしいと思い、お願いしました」

普段はロンドンを拠点とするPiczoさんが偶然東京にいたこともあり、企画はさらにとんとん拍子に進んでいったという。

アートディレクションは、もちろん小杉さんが担当したが、モデルの位置、ロゴの置き方など、松田さんのディレクションは明確だった。公式インスタグラムのディレクションも松田さんが担当している。そして最終的に言葉がなくても伝わる1枚絵をつくりあげ、そこに小山佳奈さんが書いた「自由を発明せよ。」というコピーが載せられた。

これまで広告に出演をしてきたものの、ディレクションに回るのは初めての松田さん。今回、スタッフにどんなディレクションをしたのだろうか。

「皆さんの仕事を知っていたので、それぞれの領域はお任せして間違いないだろうと思ったし、対立するようなことが起きる方向には行かないだろうという確信がありました。ディレクションというよりも、むしろ一緒に体験することを大事にしました。一緒に考えたり、考えたことを紹介しあう、そういうプロセスを企画会議やそれ以外の席でも大事にしていました。そのときに、この人は全く考え方が違うと思ったりすることもなかったので、もうあえて指示することなく進んでいきました」(松田さん)

松田さんは、かつてロンドンの美術学校で建築デザインやインテリア、写真などを学んだ経験を持っている。

「普段からあらゆる領域において、こうやったら何かできないかと考えています。俳優は総合的にいろいろなことに携われる仕事だなと感じていますが、自分がやりたいことがやれる人生にしたいと思い、これまで自分の環境を整えてきました。今後も俳優業は続けるのですが、毎回チームが変わって新参者になることに少しストレスがあり、それよりも自分の好きなチームでモノづくりをしたいし、それが楽しい。いまようやくそういうことができる時期が来たのかなと感じています」

小杉さんは、「松田さんのそういう姿勢が伝わってきて、現場は常にポジティブでした。何があっても良い方向にみんなが向けるようにアイデアを出して、まるで合気道のような進め方だったかもしれません」と振り返る。

「若さと勢いと体力で1点を見つめて猛ダッシュした20代、人脈と経験値を積ませてもらった30代を経て、これから40代を迎えるにあたり、いまはもうやっていくしかないなという境地になっています。やはり何かをつくることが好きなので、とにかくクリエイティブで、アイデアのために動いているという人生にしていきたいと思っています。今後も機会があれば、広告制作にぜひ参加したいです」(松田さん)

スタッフリスト

CD 松田翔太
AD 小杉幸一
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C 小山佳奈
企画・プロデュース 相良泰至
撮影 Piczo
Pr 稲垣護
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