一連のフジテレビ問題を受けて、3月31日に発表された親会社フジ・メディア・ホールディングスとフジテレビの第三者委員会による報告を受けての波紋が広がっている。多くの広告主による同局へのCM停止は1月に始まり、今も出口が見えない状況が続いている。
広告主からは、フジテレビへの出稿を想定していた予算を他に振り分ける「アロケーション」の議論が聞かれる。野村総合研究所(NRI)が単純に他のキー局に振り分けた場合のリーチをフジも含めた5局への出稿シミュレーションと比較したところ、驚きの結果が出た。NRIの梶原光徳氏が解説する。
出稿局数の減少でリーチ率はどう変わる?
いわゆるフジテレビ問題をきっかけに、1月中旬より同局へのテレビCM出稿を取りやめた広告主が多数存在した。CMがACジャパンに切り替わっていることを目にした読者も多くいらっしゃるのではないだろうか。4月に入ってもなお、テレビCM出稿を控える広告主が多いとみられる。
テレビCMは、獲得できる広告接触者数(広告リーチ)の多さが魅力のひとつである。また、一般的に、関東でテレビ出稿をする際には、キー5局に出稿するケースが多い。このため、広告主としては、フジテレビへのテレビCMの出稿を行わないことによる、広告リーチへの影響は気になるところではないだろうか。そこで、本コラムでは、実例とシミュレーターを用いて、この影響を分析した結果を紹介する。
事例として取り上げる広告は、2025年3月にフジテレビを除いた関東キー4局に出稿しており、個人GRP400%程度の出稿があった。ターゲットは、30~50代女性がメインとみられる。弊社の調査結果では、この広告の30~50代女性へのリーチ率は、36.2%*であった。
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同じ出稿量でも22万人相当のリーチの差
一方、同じ出稿量を、フジテレビ含めたキー5局に出稿する場合のシミュレーション結果をみると38.7%となった。同じ出稿量にも関わらず2.5ptのリーチ率の差が生じていることになる。これは、1都6県の30~50代女性の人口を約860万人としてターゲットへの広告リーチ人数を計算すると、22万人弱に相当する。
当該事例におけるテレビCMのリーチ率の実績値(4局出稿)とシミュレーション値(5局出稿)
実際には、局による出稿単価の違いやテレビCMが流れる時間により、上記のシミュレーション値通りになるとは限らないが、そのブレがあったとしても、広告主としては、これは無視できないレベルではないだろうか。
今回のような事態はあまり発生しないと思われるものの、発生した際には、広告主はターゲットの広告リーチを確保するために、予定していた出稿計画の見直しや予算の再配分、つまり「リアロケーション」の検討や実行をすることが望ましい。そのために、状況把握やシミュレーションを行える環境とそれらをもとに対応を検討できる体制を整えておきたい。
* NRIが実施する広告効果測定調査で、当該テレビCMに5回以上接触した人をリーチ者として計算

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