「AdverTimes.」ではふだん、マーケティング・コミュニケーションの話題をお届けしていますが、週末向けのコンテンツも拡充していきたいと考えています。仮称「AdverTimes. TIMEOUT」。本記事では、編集部が映画の上映形態のひとつ「応援上映」の今をレポート。制作・劇場・ファンのパワーが相乗効果をもたらしてさらなる話題を呼んだ事例を紹介します。
もはや人気作品では定番の上映方法となりつつある、映画の「応援上映」。特に熱狂的なファンを抱える作品では、単なる映画鑑賞の枠を超えた一大イベントに発展。地域ごと、映画館ごとの特色もあり、遠方の劇場まで足を運ぶファンも多い。
応援上映とは、通常は声を出さず、静かに鑑賞することが求められる映画館で、その上映中に観客が声援を送ったり、ペンライトなど応援グッズの使用ができる映画鑑賞スタイルのこと。2010年代から広まった映画鑑賞のスタイルである。通常は観るだけの映画に、参加する要素が加わることで、劇場全体が一体となって作品を盛り上げる独特の体験を味わえるのが魅力と言える。
熱狂的なファンは複数の映画館を訪れ、同じ作品を何度も何度も、ときに100回を超えるほど、鑑賞する人も存在する。ファンたちが劇場を変えてまで何度も「応援上映」を楽しむのはなぜなのか。
「応援上映」の体験は一期一会 その日の参加者で体験は大きく変わる
例えば劇中のキャラクターに声援を送ったり、逆に呼びかけに対して応えたり。応援上映が広まったきっかけのひとつとも言われている「KING OF PRISM」シリーズでは、“プリズムアフレコ”と呼ばれる仕掛けが特徴的で、表示された字幕に対して観客が声を出し「アフレコ」を行う。

2025年6月27日に公開される最新作「KING OF PRISM-Your Endless Call-み~んなきらめけ!プリズム☆ツアーズ」のティザービジュアル。
ⒸT-ARTS/syn Sophia/エイベックス・ピクチャーズ/タツノコプロ/KING OF PRISM Project
© T-ARTS / syn Sophia / テレビ東京 / PSプロジェクト
©T-ARTS / syn Sophia / ILPP
また、各シーンやライブ演出(劇中では「プリズムショー」と呼ばれる、歌とダンス、フィギュアスケートを組み合わせたようなショーを行う)に合わせて適した色のペンライトを振るが、場面に応じて一斉に消灯させることもある。
ライブ中のトラブルで会場が真っ暗になり、観客が歌い出す…という場面では、映画を観ている人々も「どこからか自然と声が聞こえ、それがだんだん大きくなり心がひとつになる」ように、ちゃんと演技をする。
上映前のCMにもエールを送る。コーポレートカラーや企業のモチーフに合わせてペンライトの色を変え、複数本のペンライトを駆使して文字を形づくり、CMソングを口ずさむ。その地域でなじみ深い地元企業CMへの応援を目にするのも、他地域から遠征したときの醍醐味だ。
こうしてその場に居合わせた観客の人数や地域によって、その1回の上映で体験できる内容は変わる。何が起こるか分からないことが、何度も、かついろいろな場所に足を運ぶ、ひとつの理由になっている。
ただし、それぞれの価値観や姿勢がかみ合わず、自分の求める最大限の楽しさや幸せを得られないこともある。応援上映ではなく通常上映を選ぶ人も、もちろん多い。
単純に自分とキャラクターの1対1で愛を表現するというよりは、この場所をより素敵なものにしたいという、そこに居合わせた人々への愛が、応援上映では大切だといえそうだ。