花王時代に経験したデプス調査を学校の市場調査にも取りれる
民間企業の花王を離れ、民間企業出身の校長として2回目の春を迎えました。私が校長を務める茨城県の下妻一高では、4月8日に高校生240名、附属中40名の生徒を迎え入れ、晴れやかかつ厳粛なムードの中、入学式が挙行されました。
少子高齢化で中高生の生徒数が減っている中でも、本校の高校の志願倍率は、県教育委員会でデータを取り始めた平成9年以降の過去29年間で、過去最高の倍率となりました。校長1年目でこの結果が出たことを、とても嬉しく思っています。
茨城県全体だと約1倍という志願倍率数値の中、下妻一高の志願倍率は1.38倍(志願先変更前)と、県全体の平均を大きく上回りました。この倍率につながった背景には、学校経営における「マーケティング戦略」が大きく関わったと考えています。
具体的に何を行ったかというと、まずは下妻一高に通っている出身市町村の中学校の人数を分析し、各市町村が出している人口予測を見ながら、今年度の志願者数の予測を立てました。どのエリアもそうですが、人口減少問題は深刻で、下妻市付近のエリアも同様に子供の数が少ない厳しい市場環境でした。
一方で市場が拡大しているつくばエリアを潜在的なニーズがあるエリアとしてターゲットに定めました。電車で通学しても1時間以内で学校に着きます。また駅から徒歩5分以内なのも大きな魅力です。
さらに私が考えたのは、下妻一高の“どの”特徴を伝えれば、つくばエリアから下妻一高に生徒が来てくれるのか、ということです。つくばエリアの学校を競合と捉え、近隣の中学校を実際に訪問して、下妻一高に対する良いところと悪いところを、志望先の中学の校長や教頭先生に聞いて回りました。
花王時代のマーケティングの仕事で経験した、デプス調査を学校の市場調査にも取り入れ、マーケティングでいう自社分析を徹底的に行いました。
「アントレプレナー教育といえば下妻一高!」のスローガンでブランディング
この調査で分かったことは、進学実績もさることながら、勉強だけではない、部活や課外活動も行わせたいというニーズが多く、その受け皿になる学校が少ないということでした。
このニーズをチャンスとして捉え、文武両道を課外活動である探究活動について広報活動をして行こうと決定。また下妻一高といえば伝統がある進学校というイメージが強いので、新しいことにもチャレンジしている事実を伝えるため、「アントレプレナーシップ教育」に力を入れていることも発信することとしました。
今後は「アントレプレナー教育といえば下妻一高!」というキャッチーなイメージやブランディングをしていきたいと考えています。ブランドもそうですが、自分に何をしてくれるブランドなのかが分かりやすいと、ヒット商品につながる経験がありますので、こういう経験も活かせているかもしれません。
公立高校の学校運営には、学校経営戦略が必要だと思っています。この戦略を立てるために役立っているのが、マーケティングスキルです。マーケティングと経営戦略は密接に関係があると実感しています。
私立高校の授業料無償化などが始まり、公立学校が置かれている環境は厳しいものがありますが、しっかりと中長期戦略を立てて、実行すれば必ず勝機はあると思っています。128年の伝統校のアップデートを行い、未来の下妻一高をつくっていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします!
