そんな魅力的な体験をいち早く経験できるのが、東京のレストランシーン。本記事は「エクスペリエンス・プロデューサー」の肩書で活動する、ミリモルホールディングス代表取締役の河野貴伸氏が、いま、体験すべき!とお勧めする、マーケター・クリエイターの感性を刺激する、レストランやバーを紹介する連載企画です。
店舗やメニューの紹介、そのお店の「エクスペリエンス」の何に、マーケター・クリエイターが学ぶべきポイントがあるのか、魅力を解説いただきました。
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世界には数多くの美味しいレストランがある。だが、我々のように広告やマーケティング、クリエイティブの現場に日々身を置く者にとって、「ただ美味しい」だけでは物足りなくなる瞬間があるのではないだろうか。もっと五感に訴えかけるような、心の琴線をくすぐる体験を求めてしまう。
今回、皆様にお届けするのは一軒家を改装した懐かしい佇まいのレストランたち。どこか家庭的でありながら、本物の美食と大人のセンスが同居する空間は、まるで信頼できる仲間たちと「家族のように」くつろげる場所でもある。「どこか懐かしい一軒家レストランで家族のように信頼できる仲間たちと食を囲む」というテーマで、都内に点在する4つの一軒家レストランを紹介したい。
ご家族や大切な友人、ビジネスパートナーとの会食など、場面を選ばず心から落ち着ける。それでいて、知っていれば一目置かれそうな知的好奇心をくすぐる店を厳選してみた。温故知新の精神が息づく、至福の一軒家美食をぜひ体験してほしい。
店舗紹介
懐かしさとモダンを融合した“ネオ・チャイニーズ”の新たな挑戦
淡路町雅宝ARBOL(あわじちょう アルボール/淡路町)
まずご紹介するのは、神田淡路町にある【ARBOL 淡路町】。野菜と土をテーマにした「神楽坂ARBOL」の流れをくむこの店は、神楽坂と同じく一軒家を改装し、オリエンタルなムードを演出。ベースとなるのは広東料理だが、そこに日本の旬の食材を柔軟に取り入れ、ナチュールワインとのマリアージュも巧みに提案する。そのアプローチはいわゆる“チャイニーズ”のイメージを覆すネオ・チャイニーズとでも言うべき独創性だ。特に野菜の美味しさにフォーカスした料理は、素材の持ち味を丁寧に引き出し、どこか懐かしさを感じさせながら新鮮な驚きも与えてくれる。
静かな一軒家の扉を開ければ、大人がゆったり寛げるインテリアと、センスの良い音楽が迎えてくれる。気の置けない仲間や家族同然の友人とテーブルを囲み、お互いの近況を語り合いながら、新しいチャイニーズの境地を体感してみてはいかがだろう。
★Information★
●住所:東京都千代田神田淡路町2-23-7
●電話番号:03-6811-6050
●営業時間:・平日
ランチ11:30〜15:00 (L.O. 14:00)
ディナー17:00〜23:00 (フードL.O. 21:30)
・土曜日
ランチ 11:30〜15:00 (L.O. 14:00)
ディナー17:00〜22:00 (フードL.O. 21:00)
●定休日:日曜日
●メニュー:
ランチ
週替わり御膳、酢豚御膳、麻婆豆腐御膳 など
ディナー
美桜鶏のよだれ鶏、タコとブロッコリーの葱だれ黒豚焼売、大海老のマスカルポーネーズ など多数
●ドリンク:
生ビール、クラフトビール、ワイン、紹興酒、日本酒、ウィスキー、サワー ソフトドリンクなど
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フレンチの王道を一軒家で堪能する、気品とくつろぎの宝石箱
SOMBREUIL(ソンブルイユ/飯田橋)
続いてご紹介するのは、千代田・富士見の地にあるフレンチの名門【ソンブルイユ】。ここはまるで欧州の貴族の館を思わせるフランス風の一軒家だ。門をくぐり、ひとたび邸内に足を踏み入れると、都会の喧騒からは想像もつかない静謐な空気が流れている。
エグゼクティブシェフを務めるのは、数々の名店で修業を積み、ミシュランの星を獲得し続けてきた若月稔章氏。その料理は、伝統的なフレンチの技法と革新的な感性が交わる“正統派”のスタイルだ。さらにパティシエの岩佐祐佑氏が生み出すデザートは、五感を総動員して楽しむ芸術作品のよう。
壮麗なダイニングで繰り広げられる優美なフルコースは、一品一品に込められた情熱がエスプリとして感じられ、まるでフランスを旅しているかのような余韻に浸れる。ゆっくりと語り合いたい仲間がいるならば、この気品ある一軒家で至福の時を過ごすのが最高の贅沢だろう。記念日やお祝い事にはもちろん、ただ大切な人と一緒に「贅沢な日常」を味わうのにもぴったりだ。
★Information★
●住所:東京都千代田区富士見1-8-12
●電話番号:03-5212-4121
●営業時間:
ランチ11:30~15:00(L.O. 13:00)
ディナー17:30~22:00(L.O. 19:00)
サロンドテ13:30~16:00(2時間制)
●定休日:月曜夜、火曜日
●メニュー:コース料理
ランチ9900円、13800円、15800円のコース
ディナー19800円、23100円、29700円、38500円のコース
●ドリンク:グラスシャンパン2640円~、グラスワイン2530円~
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路地奥の旧い日本家屋で味わう、四季折々の中国割烹
月居 赤坂(げっきょ あかさか/赤坂)
赤坂のメイン通りから少し外れた路地に、ひっそりと佇む古い日本家屋。【月居 赤坂】は、四季折々の食材を取り入れながら、毎月メニューが変わる中国割烹の名店だ。落ち着いた雰囲気の個室も用意されており、料理が目の前で仕上げられていくカウンター席では、丁寧な手仕事を見守ることができる。
鶏や野菜、魚介といった食材の滋味を限りなく引き出す中華の技法は、日本家屋の静謐な空気と相まってどこか懐かしい安らぎを感じさせる。その一方で、味わいは力強くも繊細で、何皿も続いても飽きさせない多彩なアレンジが光る。
慌ただしい都会の日常から離れ、昔ながらの家屋で仲間やビジネスパートナーと向き合い、ゆったりと食を囲む。そんな貴重な時間を演出してくれるこの店は、今宵、ふと立ち寄りたくなる憩いの空間だろう。心がほどけるような“ホーム感”と洗練された割烹の妙技を一度に味わえるのは、この赤坂の路地奥にある隠れ家ならではだ。
★Information★
●住所:東京都港区赤坂5-1-30
●電話番号:03-3589-5514
●営業時間:17:30~22:00
●定休日:月曜夜、火曜日
●メニュー:月毎のおまかせ16500円(税込)
その日の食材より10品程度
●ドリンク:ビール、焼酎、日本酒、ワイン、ソフトドリンクなど
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家族のように肩肘張らずに楽しめる、焼き鳥の名店
鳥よし 中目黒分店(とりよし なかめぐろぶんてん/中目黒)
最後に紹介するのは、焼き鳥激戦区ともいえる中目黒で愛され続ける【鳥よし】の分店だ。創業以来継ぎ足しの秘伝タレが魅力の“つくね”をはじめ、多彩な部位を丁寧に備長炭で焼き上げる匠の技が光る。店内は木の温かみが感じられる上質な空間で、白木のカウンター席に腰掛けると、その香ばしい煙とともにどこか懐かしい雰囲気が漂ってくる。
この店のユニークな点は「予約を受け付けない」という独自のスタイル。ふらっと立ち寄って美味しい焼き鳥を楽しめる気軽さが、仲間たちとの食事にも最適だ。ロゼワインを中心にそろえたワインのラインナップも豊富で、焼き鳥とワインのマリアージュが気軽に楽しめるのも魅力のひとつ。
お互い顔を見合わせながら、焼きたての串を次々と手渡しされる。まるで家族の食卓を囲んでいるかのような温もりを感じながら、ふんわりと柔らかい“伊達鶏”の旨みを存分に味わえるはずだ。気取らず、されど上質――この絶妙なバランスが“家族のように信頼できる仲間”との時間を濃密にしてくれるだろう。
★Information★
●住所:東京都目黒区上目黒2-8-5
●電話番号:03-6412-8801
●営業時間:16:00~22:00
●定休日:火曜日
●メニュー:
【鶏肉】つくね、かしわ、血肝 など
【野菜】アスパラ、しし唐、しいたけ など
【一品料理】唐揚げ、出し巻 など
【ご飯もの】そぼろ丼(たれ/塩) など
●ドリンク:ビール、焼酎、日本酒、ワイン、ソフトドリンクなど
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「どこか懐かしい一軒家レストランで家族のように信頼できる仲間たちと食を囲む」――そんな一見シンプルな光景こそ、実は誰もが心底求めるひとときではないだろうか。都会の喧噪の中で働く我々が、一瞬でも“家のような安らぎ”を感じられる場所。それでいて、しっかりと料理の完成度やホスピタリティを満喫できる場所。今回紹介した4軒はいずれも、それぞれの個性の中でこの“二律背反”を見事に両立させている。
ときには大切な家族や友人、仕事仲間と一緒に、あるいは自分自身へのご褒美として、ゆったりと流れる時間を堪能してみてほしい。懐かしさと新しさ、落ち着きと刺激――そのすべてを包み込み、食卓を通じて人をつなぎ、心をほどいてくれるのが、一軒家レストランの魔法なのだ。広告やマーケティングの世界で日々忙しく動き回る私たちだからこそ、この“温故知新”の体験から得られるインスピレーションは大きいに違いない。ぜひ次の食事会は、この4つの空間に足を伸ばしてみてはいかがだろう。心温まるひとときが、きっと待っている。
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