田中:ビジョンみたいなものですか。
音部:そうかもしれません。それを数値化した状態がGoal(目標)です。「市場の首位にいる」ことがObjectiveとすれば、例えば「シェア30%」がGoalと設定できます。
さらに、シェア30%というのは出荷ベースではなく売り上げベースで、2025年度のどこかの1カ月ではなく通期である、などと設定するのがMeasurement(評価)。それを達成するためのStrategy(戦略)があって、これらを1枚のチャートに書かれることが多い。といった背景から、Objectiveを数値化したものをGoalとするのであれば、Objective、つまり目的で通しておけば良いのではないかというのが私の考え方です。
音部大輔(おとべ・だいすけ)/クー・マーケティング・カンパニー代表取締役。17年間の日米P&Gを経て、ダノンやユニリーバ、資生堂などで、マーケティング組織強化やビジネスの回復・伸長を、マーケティング担当副社長やCMOとして主導。2018年より独立し、現職。消費財や化粧品をはじめ、家電、輸送機器、広告会社、放送局、電力、D2C、医薬品、IP、BtoBなど、国内外の多様なクライアントのマーケティング組織強化やブランド戦略を支援。博士(経営学・神戸大学)。
モノではなく「ベネフィット」に着目する
田中:似たようなところで、KGI(Key Goal Indicator)とKPI(Key Performance Indicator)の違いについての議論もありますね。KGIは売り上げや利益などで示され、KPIはそれを達成するプロセスにある指標とされます。KPIは本書でいう「目的の再解釈」に当たるのではと思いました。
「目的の再解釈」は、本書の重要なポイントのひとつですね。企業によっては、このあたりが曖昧になっているケースが多いのではないでしょうか。とにかく売り上げを上げよと言う一方で、そのために何をするかは現場で考えなさい、と。本来はKPI、または目的の再解釈までを示すのが上長の役割ではないかと感じます。