戦略って、経営戦略のことじゃないんですか?(田中洋×音部大輔)

田中:確かに、20億円のためには何人に売るというヘッドカウントに終始してしまうと、売り込む発想になってしまいますが、話を聞いていると、パンパースなら子どもをケアするという価値観ものをどう示していけばいいのか、という風に行動が変わっていきますね。

音部:ベネフィットだと誰にどんな意味を提供するかという認識にできるのでモノから独立できます。最近はこの部分に執着するともうひとついいことがあるのではないかと思っています。

AIDMAやAISASといった消費者行動モデルが悪いというわけではありませんが、少し時代を感じるのは最後がAction(行動)で終わっていること。青臭い意見かもしれませんが、私が大事だと思っているブランドマネジメントで目指すべきところは、買ってもらうではなくて、愛着を持ってもらうことです。愛着を持ってもらえれば人に勧めてもらえるし、継続的に買ってもらえる。

リピートというのは利益にとっても、トライアルよりも圧倒的に大きいので、愛着を持ってもらうことは重要です。AIDMAではトライアル購入が最後の段階のアクションで、そこで一旦終わる感じがしますが、パーセプションフロー・モデルではモノを使ってもらうための手続きでしかなくて、ゴールではないのです。

田中:私は、AIDMAもAISASも消費者反応が順番に生起することを前提にしているから適切ではない、と考えています。そもそもAIDMAに先立つAIDAという考えは20世紀初頭に通信販売が全盛期のアメリカで考えられた考えですし、AIDMAに至っては日本語英語で欧米圏ではほとんど使われてすらいない用語で、理論や法則などと呼べる代物ではない。実際の消費者の行動は、理性的な判断や感情的な反応、行動反応の3つが相互に生起しているわけです。この点については音部さんと意見が一致していそうです。

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