戦略って、経営戦略のことじゃないんですか?(田中洋×音部大輔)

「違い」を探し、資源を見つけ出すことも戦略の醍醐味

田中:本書の重要な要素である「資源」についても「まさに」と膝を打ちました。ただ、人によって資源という言葉で何をイメージするかは違うような気もします。

音部:おっしゃる通りです。目的の再解釈は戦略の醍醐味と言いましたが、もうひとつの醍醐味がここにあると思っています。この説明でいつも例に出すのが映画俳優のジャッキー・チェンです。彼は映画の中で手近なものを武器として使います。それは必ずしも武器として開発されたものではないけれども、特定の条件下では武器としても使える。私はそういうものも含めて「資源」と見ています。

田中:一般的には「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」を資源と言ったりしますが、それ以外にも気づかぬ資源があるはずだということですね。

音部:その見つけ方として大事な方法は「違い」を探すこと。あいつの隣には壁しかないけど、俺の隣にはドアがあると気づけば、ドアは何かに使えるかもしれない。このように違いにフォーカスすると、およそ資源っぽくなかったとしても使えるものがあるかもしれない。違いが強みになるとしたらどういう状況なのか、ここは再解釈と考え方が似ているんですよね。

田中:担当者にしてみると、当たり前に思っているものでも意外に資源になるものがあるかもしれないということでしょうね。例えば、担当者の社外の人脈であったり、あるいは、自社が昔登録商標した中に使えるブランド名があったりします。ところで、本書は中間管理職を意識して書かれたのですか。

音部:読者ターゲットは3つ設定しました。まずは新商品開発や中期経営計画など、何らかの戦略を立てろと言われているけど、まだ立てた経験がない人。次にこれまでも戦略を立ててきたけど、自分のやり方がベストだと胸を張れていない人。3つ目が1、2のような人を指導しないといけない上司です。

「経営戦略」と「戦略」は違う?

田中:やはり目的と資源の2つを覚えれば戦略について理解できるというのはシンプルで素晴らしい。読みやすさもありますが、やはり長年の経験が凝縮されているようにも感じました。

音部:今日はありがとうございました。本書と7年前に刊行した『なぜ「戦略」で差がつくのか。』を出すことができたのは田中先生のお陰でもあるので、対談できて光栄です。

その昔、中期事業計画や新商品の戦略を立てるときに、なかなかうまくいかないと悩んでいました。「戦略なのだから、経営戦略論のフォーマットを使えばいい」と考えていましたが、どうもしっくりこないのです。

そんな時に田中先生に、経営戦略論は「英語ではStrategic Managementである」とお聞きしました。それまで経営戦略論は経営に関する戦略論だと思っていましたが、Strategic Managementは直訳すれば「戦略経営」であって、「戦略」とは違うのでは、と教えていただいて、パッと霧が晴れたのです。

いわゆる「経営戦略論」はそもそも“社長のための経営論”であって、事業部の中期経営計画、マーケティング&ブランド戦略、新商品開発戦略、人事戦略、営業戦略、メディア戦略といった我々が日常的に関与する各種戦略を立てるためのものではない、と随分と遅ればせながら理解できたのは、田中先生のおかげです。

田中:そう言ってもらえるとうれしいですね。今日はありがとうございました。

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2,200円(税込)
276ページ

『君は戦略を立てることができるか 視点と考え方を実感する4時間』(音部大輔)

マーケターを対象にした人気の「戦略講座」の4時間分の講義をまとめた1冊。戦略の要点を簡潔に理解でき、限られた資源で確実に目的を達成するための実践的な技術が得られるほか、戦略の立て方をステップごとに解説している。経営戦略や競争戦略を学んでも、マーケティングや営業の日々の意思決定に活かしにくいと感じている人、戦略を理解したうえで立案したい、戦略に強くなりたい人は必読。

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