見かけなくなった職場結婚、ビール離れの実際、たばこに代わる嗜好品、奢る・奢られ論争の最前線――「えっ?そうなの?」大人が知らない「ビーリアルな」Z世代理解に迫ります。
配慮意識が高いとされているZ世代の若者にとって、飲み会はどのような場所になっているのだろうか。Z世代の飲み会に密着同行をしてきました。
今回の密着対象者
Wさん(22)大学4年生
2002年生まれ。都内私立大学在学中の女子大生。バンドサークルに所属し、ギターボーカルを担当。カラオケも大好き。現在就活と並行してベンチャー企業でインターンし、バイタリティあふれる大学4年生。将来は広告系や企画職で働いてみたい。
「コンプラ」が大学生の流行り言葉に?
同行したWさんの飲み会は「お酒離れ」を感じさせない飲みっぷり、盛り上がりようだ。そんな飲み会では、「コンプラ」という言葉がよく聞こえてくる。
今どきのZ世代の飲み会とは?
確かによく「コンプラ」って言ってますね。誰かが過激なことや毒づいた発言をしたら、みんながツッコミで「コンプラ~」って言います。「コンプライアンス」のことです。
大人だけでなく、大学生まで「コンプライアンス」を意識している、ということなのだろうか。
私が大学に入った2021年には先輩が使っていたので、私も自然に「コンプラ」って言ってました。テレビでも大学でも日常的に、コンプライアンス違反がどうの、とかって見ますよね。特に最近はいろんなところで不祥事が起きて取り沙汰されてるな、って思います。
確かに、最近は様々な業界での不祥事がニュースになっていると筆者も感じる。大学生の耳にも筆者と同じく不祥事やコンプライアンスに関わることが入ってきているようだ。
飲み会では、会話が途切れないように、グラスが空いている子に声を掛けたり、適度に場を回すように心がけています。でも、こんなご時世なのでコンプラ違反したくないというか、自分がアルハラにならないかはかなり気にしています。お酒が飲める相手であっても、いま飲みたいのか、飲みたくないのかって、状況によって変わると思うので、常にアンテナを張っています。無理に飲ませないように注意しないといけないんです。
さらに、「飲み会を楽しんでいる自分と、それを俯瞰している自分がいる感じ」と話すWさんは、お酒に酔うことを楽しみながらも、自分に求められている立ち位置を無意識的に判断しているという。
他人の恥は自分の恥…Z世代が感じる「共感性羞恥」
「飲み会を俯瞰している自分がいる」
そう話すWさんだが、そういった思考に至った背景には、一体何があったのだろうか。
Wさんが大学に入学した2021年は、コロナが依然として収束を見せず、緊急事態宣言が続いていた。多くの飲食店では、時短営業やパーテーションの設置が行われていた。
コロナが徐々に収束してきた頃、サークルの飲み会でクラスターが発生したことがありました。それもあって、居酒屋でどんちゃん騒ぎするのは、「自分たちの楽しさだけを優先して騒いでいる」と白い目で見られるのが気になって、周りではAirbnb(民泊サービス)を使って飲み会をする人も多かったですね。
Airbnb飲み会、通称エアビー飲み会の様子
居酒屋ではあくまでも形式ばった飲み会を、とにかく騒ぎたい時はAirbnbでの飲み会を、そんな風に自然と使い分けていたことで、参加する飲み会がどのような場かを判断し、状況にあった振る舞いを無意識的に行うようになったのかもしれない。
さらに、彼女が飲み会を俯瞰するようになった要因には、「共感性羞恥」も大きくあったという。「共感性羞恥」とは、他人の失敗や不適切な行動を見たとき、自分のことのように恥ずかしさや居心地の悪さを感じる心理のことで、この意識が、Wさんの飲み会での気遣いに大きな影響を与えているようだ。
飲み会で、飲み過ぎてしまう人や飲みゲーで盛り上がる人を見て、ああなりたくない、周りの人もそのような状況にさせてはいけないと強く思うようになった。
この意識が、飲み会での気遣いの根底にあるようだ。
パーテーションがもたらした「マス目」意識
コロナ禍がZ世代の飲み会にもたらした影響は、そのほかにもあったのだろうか。
パーテーションがある飲み会では、自分がマス目で割り振られたような感じがして、物理的な距離がある分、自分の八方位にいる人が楽しめているか、全マス(個人)が均等に話せているか、かなり意識していた気がします。パーテーションで仕切られているから、余計に自分の意識が上がった気がしますね。
そう話すWさんは、パーテーションで物理的な距離が生まれたが、逆に、それが飲み会参加者への気遣いや管理能力を高めてくれたのではないかと推察する。
パーテーションがある飲み会を経験したから、「マス目の中での自分」みたいな俯瞰した意識が高くなった気がします。上の世代からすると、一見大人しいように感じるかもしれませんが、大人世代よりもリテラシーやマナーが高い感じがしますね。
Z世代は大人しいとよく揶揄されるが、それはコロナ禍のパーテーションで仕切られた飲み会を経験して、各々が適度な距離感をもって気配りをしているのかもしれない。
まとめ
Z世代は配慮意識が高いとよく言われるが、盛り上がり一辺倒の飲み会をするかつての若者とは少し異なった感覚を持っているように筆者は感じた。
コロナ禍を経た若者が飲み会においても心理的なパーテーションを仕切って、ほどほどの距離感を保つ。
それが世代らしさだとすれば、私含め大人世代はZ世代との飲み会では、距離感を間違えないようにしたいものである。
