サッカー日本代表戦にみる、日本らしいサステナビリティ演出

写真 店舗・商業施設 埼玉スタジアム

3月20日、埼玉スタジアムにて。一時帰国のタイミングとちょうど重なったので、現地でサッカー日本代表戦を観戦しました。

先日、世界の国の中でいちばんはじめに、サッカー日本代表の2026年ワールドカップ出場が決まりましたね。

極めて私的な話で恐縮ですが、サッカー好きなので、埼玉スタジアムでそれぞれ開催されたバーレーン戦(3月20日)、サウジアラビア戦(3月25日)の2戦は、かなり気合いを入れて見た試合でした。日本で仕事の予定があり、米国も3月末は春休みだったので次男と一緒に帰国し、この2戦を現地で観戦していました。

私個人としては出場が決まってただただ嬉しい!という話はさておき、現地・埼玉スタジアムで、サッカーファンじゃなくとも、環境問題をはじめとする社会課題に関心のあるみなさんに紹介したいことを見つけました。

そこで、今回のテーマは「サッカー観戦とサステナビリティ」。ポートランドや米国の話ではないのですが、ポートランドなどの事情と比較して気づいた日本らしい取り組みであり、サッカーのことはわからない、興味がない、というみなさんもお付き合いください。

青いごみ袋を活用したイベント演出

まずはサムネイルにもありますが、この画像をご覧ください。

写真 店舗・商業施設 埼玉スタジアム

サッカー好きの方はテレビでも観ていたかもしれません。本戦の前、選手入場の直前に行われた、イベントセレモニーの様子です。日本代表のチームカラーである青い光に観客席が埋め尽くされ、フィールドにこの試合の意味、2026年のW杯出場を賭けた戦いであるというメッセージが示される演出でした。

この青い光は、実は来場した観客たちの参加によってつくられています。青い光をつくりだしているのは、この青いごみ袋!

写真 商品・製品 青いごみ袋

ちょっとシワが寄っているのは筆者が実際に使ったため。最初はもっときれいな新品です。

来場時、チケットチェックの直後にひとり1枚、この青いごみ袋が配布され、各々が会場で膨らませて、アナウンスの合図とともに自分のスマートフォンでライトをつけて照らした結果、先ほどの会場の状況がつくり出されたというわけです。

写真 店舗・商業施設 埼玉スタジアム

こちらの絵だともう少しわかりやすいかもしれません。

もちろん、試合終了後は、自分たちの席の周囲のごみを拾い集めてまとめることができるため、通常のごみ袋として活躍します。まさに、一石二鳥以外の何ものでもありません。

なぜ、キーアイテムが「ごみ袋」なのか?集中ではなく「分散」による効率化

写真 店舗・商業施設 埼玉スタジアム

しばしば世界のメディアでも報道されていることもあり、サッカーの試合における日本の観客によるごみ袋応援(ごみ袋を膨らませて応援する)とごみ拾いは、一部の人たちの間では、見慣れた光景になりつつあるかもしれません。

元を辿れば、現地で観戦しているサッカーファンたちが、日本のカラーである青いごみ袋を持ち込んで、膨らませて応援に活用し、それでごみをまとめて帰ったというのがスタートだとか。昨日今日の話ではなく、どうやら始まりは日本が初のワールドカップ出場となった1998年フランス大会まで遡るそうです。だいぶ長い歴史があります。

このセレモニー演出のアイテムがビニール袋であることの、環境保全の点でのメリットを紹介しておきます。

この袋をよく見てもらうとわかるのですが、「ポリエチレンを再生資源として利用した〜〜国内資源を有効利用した〜〜」とあるように、ひとつには、完全なる再利用資源であるということ。

そしてふたつめに、これは日本だからですが「焼却時における有害なガスは発生せず」。これです。

日本は世界の半分以上の焼却炉を抱える、焼却大国である、という話は、この私のコラムの第3回で紹介しましたが、日本だからこそ、のサステナブルな演出であったと考えています。

埋め立てでごみを廃棄する国であれば、たとえ再生資源でも土に還るのに時間がかかるビニール袋を5万人以上の来場客に配ることは望ましくない行為となります。

しかしながら、日本はごみを焼却しています。もしビニール袋ではなく、大がかりな何かしらの演出装置をつくれば、それはオール再生資源、とはいかないでしょうし、有害なガスを発生させない材、燃やせる材だけというわけにもいかなくなるかもしれません。

大がかりではなく小さく小分けにして5万個のビニール袋を配布することは、環境、ごみ処理の観点では理にかなっています。さらに、電飾も、個々人のスマートフォンのライトを利用します。電飾装置を観客席に設置したりすれば、人件費に加え設置費やその移動エネルギーなど、さまざまなコストが生じます。

「分散」によって効率的に電気を得るという方法はなかなか面白い!と思いました。いまの時代、ほとんどの人がスマートフォンは所有していますからね。

イベント演出とサステナビリティの両立

地球環境と人がたくさん集うイベントは、サステナビリティの観点からすると、どちらかをとれば、どちらかが立たない、そういう類のものではないかと思います。ごみの問題、人が集うことによる輸送エネルギーの問題(車が集えば周辺の駐車場の問題もありますね)、一夜限りの(廃棄されてしまうかもしれない)特別設備の問題などなど。

そんな中で、JFA(日本サッカー協会)によるこのイベント演出は、エネルギー源の分散、資源の節約、さらに日本得意の試合後の美化。そしてもう一方で、参加型にすることによる熱狂の醸成。加えて、観客がビニール袋を膨らませてライトを照らしていたと後日教えた時、テレビで見ていたうちの家族がまさかこんな仕掛けだったとは!と驚いた、デモンストレーションとしての美しさがありました。二項対立にはせず、イベントとしての面白さとサステナビリティを両立させた企画であったと思います。

今回は、日本の話でしたが、世界と比較した日本ならではの素晴らしい話ということで。2026年のW杯はアメリカ・カナダ・メキシコの共催です。日本代表チームの活躍はもちろん、サステナブルという観点でも、日本らしい、また面白い仕掛けが見られることを楽しみにしていたいと思います。サッカー日本代表のみなさん、アメリカでお待ちしています!

写真 店舗・商業施設 埼玉スタジアム

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松原佳代(広報コンサルタント/みずたまラボラトリー 代表)
松原佳代(広報コンサルタント/みずたまラボラトリー 代表)

スタートアップの広報育成・支援を手がける「みずたまラボラトリー」代表。お茶の水女子大学卒業後、コンサルティング会社、出版社を経て、2005年に面白法人カヤックに入社。広報部長、事業部長を兼任したのち子会社カヤックLivingの代表取締役に就任。移住事業の立ち上げに参画。2019年、家族で米国ポートランドに移住。一方、2015年に自身の会社「みずたまラボラトリー」を設立し、広報戦略、事業開発、経営全般にわたる経験と実績を活かしスタートアップの広報育成と支援を展開。富山県出身。富山県の経営戦略会議ウェルビーイング戦略プロジェクトチーム委員も務める。

松原佳代(広報コンサルタント/みずたまラボラトリー 代表)

スタートアップの広報育成・支援を手がける「みずたまラボラトリー」代表。お茶の水女子大学卒業後、コンサルティング会社、出版社を経て、2005年に面白法人カヤックに入社。広報部長、事業部長を兼任したのち子会社カヤックLivingの代表取締役に就任。移住事業の立ち上げに参画。2019年、家族で米国ポートランドに移住。一方、2015年に自身の会社「みずたまラボラトリー」を設立し、広報戦略、事業開発、経営全般にわたる経験と実績を活かしスタートアップの広報育成と支援を展開。富山県出身。富山県の経営戦略会議ウェルビーイング戦略プロジェクトチーム委員も務める。

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