CMとポスティングの事例から見る、生活者に届くいい広告とは 

地域企業の取り組みを紹介するマーケティングイベント「アドタイデイズリージョナル2025春」(福岡会場)が3月に開かれた。コピーライター・クリエイティブディレクターの門田陽氏(門田コピー工場)と電通九州の左俊幸氏は生活者に届くいい広告をテーマに、アトの奈須田洋平氏、松本啓佑氏はデジタル未達領域にリーチするポスティングの成功施策についてそれぞれ講演した。

「FCC賞2024」で最高賞を獲得した「如水庵」のCMが生まれた背景は

電通九州の左氏と門田コピー工場の門田氏は、2024年福岡コピーライターズクラブによる「FCC賞2024」で最高賞を獲得した、福岡県の和菓子店「如水庵」の商品「筑紫もち」のCMがどのように生まれたのかについて説明した。

2024年に放映されたCM「生産者 孫登場」篇は、1999年に制作されたCMのリメイク版にあたる。当時制作を担当したのは、電通九州に在籍していた門田氏、ワンダーランドハウスの白澤氏(現在はランニングの代表取締役)だった。「口ずさんで商品名を覚えてもらえるように制作した」と門田氏は振り返る。

写真 人物 門田コピー工場 門田氏

2020年、先代社長の息子である森正俊氏が社長に就き、電通九州の後輩関係にあたる営業担当と左氏がオリエンに呼ばれた。左氏は白澤氏と仕事をしていたため、1999年のCMを踏まえたCMをいくつか提案した。しかし、企画が通らず、当時電通を退職し独立したばかりの門田氏に無理を承知で相談し、一緒に担当することになった。

写真 会場の様子

「地元では懐かしいCMを同じ場所で、同じ人物で、同じものをつくることが、この企画の主旨であり、おもしろさになる」と社長を説得。歌詞も前回と同じとするが、1本おまけで孫が登場するバージョンも制作した。福岡のお菓子のCMは長く続いているものが多いことに触れ、「長く続けることも大事」と門田氏。完成したCMは「FCC賞2024」で最高賞を獲得することができた。左氏は「放映直後はSNSを中心に好評で、商品の売れ行きが良かったことを感謝された」と振り返る。「商品を中心としたCMで、嫌われないトーンだったのも要因だと思う」と門田氏。

いい広告をつくるために必要な考えは

左氏と門田氏は広告制作者に向けて、「いい広告はどこで生まれるか」をテーマに話した。門田氏は「今はいい広告をどこでもつくりやすくなっている」と話す。コロナ禍以降、リモートで仕事を進めるようになり、東京から東京近郊に本社を移す企業も増えている。「東北や富山など、広告を盛り上げようとする地域も増えてきているが、福岡は広告づくりにはいい地域だと思う」と門田氏。福岡のクライアントは、関東などに比べると予算は少ないかもしれないが、おもしろいものを求める傾向にあるという。

続いて、左氏は「いい広告が生まれるときのクライアントとの関係性は」と門田氏に質問した。「クリエイティブが好きで、理解力がある方がトップにいらっしゃるといい広告が生まれる」と回答。クライアントのトップの人とも話せる環境があるといいと話した。

写真 人物 電通九州 左俊幸氏

また、「若い人たちは広告制作という仕事にどう向き合っていったらいいのか」と問うと、「若い世代は自主プレの機会が少ないと思うので、ぜひ取り組んでください」と続けた。

「これからの時代の『いい広告』とはどんな広告か」というテーマでは、近年はSNSで話題になったらいい広告だという議論もあるが、「SNSでの反応を気にするクライアントが多いこともわかるが、無理にSNSに広告を落とし込んでも、SNSのユーザーの心を動かすことができない」と門田氏。

「福岡(九州)からいい広告が生まれるポテンシャルはどこにあるか」という質問に対して、「福岡のポテンシャルは高い」と門田氏が回答。大学時代にコピーライター養成講座に通った左氏は、どうしてもクリエイティブに携わりたい思いで、新卒で契約社員の雇用形態で電通九州に入社した。総合職で広告代理店に入社し、希望通りクリエイティブで働ける人もいるかもしれないが、一般的なルートとは異なる左氏だからこそ若い人にいろいろなことを伝えてほしいと門田氏は激励した。 

質疑応答の場では、門田氏に普段視聴しているYouTubeチャンネルについて質問。お笑い芸人のチャンネルを登録していることを紹介すると、「お笑いの言葉が広告づくりに生かされているか」と質問が投げられた。「コピーはクライアントの思いを世の中につなげる仕事ですが、今の時代のことを知らないといいコピーにならない。それを知るためには、お笑いが一番。お笑い芸人は今のことを話している。世間は、私たちが制作した広告をお笑いと比較して、おもしろいかどうか判断します。だから、そういったお笑いにも対抗できるような広告でないと、おもしろいとは言ってくれません」とまとめた。

コロナ禍を経てポスティングの市場が成長

ポスティング事業を手掛けるアトは、全国に58拠点、月間稼働配布パートナー数を約2万人保有しており、ポスティング業界最大規模の組織である。売上高推移は、コロナ禍を機に右肩上がりになっている。

電通が発表した「2023年 日本の広告費」によると、新聞折込やDM、フリーペーパーなどは軒並み落ち込んでいる中、ポスティングは2022年より6.1%アップし、市場において成長を見せている。その背景には、コロナ禍以降の在宅率の上昇が挙げられる。テレワークなどによる在宅率・受け取り率、フードデリバリーサービスのポスティング需要が増加した。また、新聞折込広告の部数の減少により、ポスティングへ移行したことや郵便料金の値上げによりDMから取って代わったことも要因となった。

写真 人物 アト 松本啓佑氏

ポスティングに適したクリエイティブ

アトのポスティングプランは2種類。商圏・ターゲットが限定される飲食店や学習塾などには「エリア指定プラン」、多店舗型、通信販売など商圏・ターゲットが広域な場合には「エリアフリープラン」がある。エリアマーケティングが可能だが、個人ではなく世帯の特性によって行われる。国勢調査データを使ったGISツールによるセグメントを導入し、最大650項目の内容から希望に合った属性をセグメントすることができる。

続いて、奈須田氏はポスティングのクリエイティブについて、「ポスティングが見られるのは、わずか2秒です。その時に興味を持ってもらえるかが重要」と説明。

写真 会場の様子

その上で、「新聞折込用に使っていた広告をポスティングに流用しても効果が得られないので、ポスティングに向いたデザインや形状にする必要がある」と強調し、6つの事例を紹介した。

ハイクラス転職サイトはハガキ型から招待状型に変更したところ、反響率が2倍以上に向上。サプリメント通信販売は、一般的なA4サイズ等ではなく封書タイプにすることで視認性の向上を実現した。大手フィットネスジムは、サービス開始時にはB3縦型サイズで情報量の多いチラシを制作。一般的なチラシより大きいサイズで展開することで差別化を図り、サービス認知後は、A4縦型のタイプに変え消費者目線で求められる情報を掲載した。

大手配車アプリは、サービス開始時にスマホを模した型抜きの形状でポスティングを実施。魅力的なダウンロードオファーも記載することで、アプリのダウンロード数も順調に獲得できた。CMの放映、OOHの施策が始まったタイミングで、ブランドイメージをチラシに落とし込むクロスメディア施策も実施。CM起用の俳優をチラシに掲載したり、配布する時期を合わせたりと季節感のある原稿を作成した。

化粧品通信販売会社では、これまで折込チラシで利用していたB4横型のデザインをA4サイズに縮小してポスティングしていたが、A4縦型のチラシに変更。商品画像を大きく、米ぬかの良さをイメージで伝えられるビジュアルを採用することで反響は4倍に。フードデリバリーアプリの場合は、懸賞型のチラシや型抜きチラシ、金券型チラシ、ICカード型チラシなどを展開した。

各ターゲットに合わせたポスティング

最後に奈須田氏がアトのサービスについて説明。低コストで大量投下ができる「MEGA POS」、都心富裕層へリーチできる「yoff」、メーリングサービスのIMURAと提携した宛名無DMの「MEGA LETTER」、サイバーエージェントと提携した「エレベーター・サイネージ」など幅広く展開している。そのほか、地域情報を載せた熨斗紙に包んだ広告物をギフトとして配布する「@LETTER」がある。

写真 人物 アト 奈須田洋平氏

さらに近日リリースされる、24時間いつでも広告を発注できる「ADX」について紹介した。店舗数が多い場合には複数店舗の発注が可能で、エリアなどの配布条件を詳細に設定でき、設定したターゲットへのリーチ数推計も表示可能だ。また、配布レポートの共有ができるため、今後の集客に活用することもできる。見積は簡単で、取扱い媒体はポスティング、新聞折込、DSP配信。DSP用のバナー画像はAIを活用しながら手軽に作成することができる仕組みを今後実装予定。「各企業様に合わせた提案が可能ですので、ぜひお気軽にお問合せください」と締めくくった。

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株式会社アト

住所:〒102-0083 東京都千代田区麹町6-6-2 番町麹町ビルディング5F We Work麹町
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