企業アプリのネットワーク化で拡大する、リテールメディアの可能性とは

2024年12月より宣伝会議主催で開催されている、講演や対談会で1つのテーマを深掘りする「テーマ別研究会」。3月24日には、小売企業が自社メディアに広告を配信するリテールメディアについて見識を深める「リテールメディアカンファレンス」が行われ、DearOne(ディアワン)の河野恭久氏が登壇。「リテールメディアネットワーク活用の最前線」について解説した。

写真 人物 DearOne(ディアワン)の河野恭久氏

アプリ開発企業DearOneが注目したリテールメディア

BtoC企業とユーザーとのコミュニケーションをアプリの開発で円滑にするDearOne。事業内容は大きく分けて3つあり、1つ目は伴走型アプリ開発サービスModuleApps2.0の提供。2つ目はデータ分析から施策まで、ツールとコンサルティングを合わせてサポートするグロースマーケティング。3つ目は当講演のテーマとなる、リテール企業の公式アプリに一斉に広告配信ができる、MAU3,850万の媒体を束ねたリテールメディアプラットフォームARUTANA(アルタナ)の提供である。

DearOneがリテールアプリの広告発信に注目した理由は、自社の得意領域であることはもちろん、国内のEC化率が諸外国に比べると低い点、POSとのデータ連携のしやすさ、リテールの収益性だという。中でもリテールの収益性には重きを置いており、「人が集まる場所でこそ広告の価値は高まる。リテールメディアは人を集められる場所だからこそ、我々はその価値をきちんと捉え、収益化することが重要」という考えを語った。

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リテールメディアの中でも販促施策・認知施策にも効果的なリテール公式のアプリ広告

河野氏は公式アプリのリテールメディアとしての活用について、「リーチ層、視認性の高さ、タイミング、購買データ活用にある」と解説。1つ目のリーチ層とは、小売店の売上の80%を占めるロイヤルカスタマーのこと。河野氏は「ロイヤルカスタマーはリテールアプリユーザーである確率が高く、売上の大半を構成する顧客にアプローチすることができる」と語る。視認性という点においても顧客にとって受け身となるテレビCMと比べると、アプリは自ら能動的に立ち上げるため、より広告の視認性が高い。

また、広告に接触するタイミングとしても、アプリにはクーポンや会員証機能が備わっていることから店内という購買に近いタイミングでの起動率が75%と高く、最適なタイミングで顧客にアプローチすることができる。さらに、精算時にかざすクーポンや会員証のバーコードから蓄積された購買データにより、「過去3カ月以内に商品を買った人、もしくは買わなかった人にだけにアプローチしたい」といった、メーカーの要望に応じての広告の出し分けも可能になるという。

アプリ広告のメリットは販促効果だけに留まらず、「環境的分脈依存効果により認知施策としても効果的」と河野氏は語る。環境的文脈依存効果とは、物事を覚えたときと思い出すときの環境が一致している方が、一致していないときよりもその物事を想起しやすいという現象だ。「想起させたい場所である店内で商品の記憶を刷り込むことで、もう一度来店した時に商品が想起される。それを実現できるのが、店内で起動するリテール公式アプリであり、想起させる場所に加え、広告をCMとのクリエイティブなどと連動をさせることで認知施策の高い効果が期待できる」と力説した。

イメージ 図 販促施策・認知施策にも効果的なリテール公式のアプリ広告

イメージ 図 販促施策・認知施策にも効果的なリテール公式のアプリ広告

リテール公式のアプリ広告の課題である配信規模を解決するのがリテールメディアネットワーク

販促策・認知策としての効果が期待できるリテール公式のアプリ広告だが、国内で大々的に取り組んでいくには、小売一社あたりの売上規模がメーカーの広告宣伝費と合わないという課題があった。スーパーマーケットを例に比較すると、アメリカの上位4社の寡占率が99%に対して日本の上位4社のスーパーの占める割合は60%。1社あたりの売上高を見ても、アメリカで大手のWalmartの79兆円に対して国内トップのスーパーは10兆円、アプリのユーザー数は1.2億人に対して430万人と規模が圧倒的に違う。Walmartはリテールメディア単体で成功しているが、日本ではそこに達するサイズのスーパーが存在しない。

そこでDearOneが考案したのがリテールメディアのネットワーク化。河野氏は「小売同士がタッグを組み、複数のリテールアプリに一斉に広告配信できるシステムの開発に取り組んだ」と、リテールメディアプラットフォームARUTANAの誕生の経緯を振り返った。

DearOneはこれまでも多くのリテールアプリを手掛けてきたため、まずはそこに一斉に広告配信する仕組みがARUTANAのはじまりだったが、「大手リテールほど『1社だけでは広告予算を吸収できない』と気付いており、当社がアプリを手がけていない企業にも参画ただいている」と、立ち上げから1年で新規参画企業が急増。ARUTANAはMAU数3,850万、インプレッション数約3億にのぼるメディアに成長を遂げた。

リテールメディアネットワークの拡大で実現する世界

現在DearOneでは、リテールが持つID-POSにNTTドコモの9000万人分のデータ、DearOneのアプリデータ、電通と博報堂によるテレビの視聴データ、unerryの行動・位置情報などのデータをつなぎ合わせてARUTANAの統合基盤をつくっており、河野氏は「今後はさらに緻密に広告を出し分けたり、詳細なレポーティングが展開できたりするようになる」と明かす。

さらにこの総合基盤により、「自宅で朝テレビCM見て出社前にコンビニ寄ると、CMと同じクリエイティブがコンビニの公式アプリに表示される」「会社帰りに立ち寄ったスーパーやドラッグストアでも同じクリエイティブが表示され、忘却していくはずの情報がここでもう一度想起される」という世界が実現。「ARUTANAにより、あらゆる場所で情報がリマインドでき、最大限購買促進ができるようになる」と河野氏は言葉に力を込めた。

講演最後に、河野氏はリテールメディアの特性を「消費者、リテール、メーカー全員にメリットがある三方良し。ポテンシャルの高いメディアである」と語り、「メーカー・リテール・ベンダーそれぞれが既成概念を取り払い、一丸となって大きな可能性を秘めたリテールメディア市場を育てていけたらと思っている」と締めくくった。

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写真 人物 DearOne(ディアワン)の河野恭久氏

お問い合わせ

株式会社DearOne

https://www.dearone.io/arutana/

 
リテールメディアとは?メリットや成功事例をわかりやすく解説
https://moduleapps.com/mobile-marketing/retail-media/


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