コピーライター×歌人が探る「言葉の隙間」

日々、私たちは無数の言葉に囲まれて生きています。心を揺さぶる広告コピー、ふとした瞬間に胸に響く言葉はどのようにして生まれるのでしょうか。

 

コピーと短歌、それぞれの視点から見つめる表現の共通点や違い、人を動かす言葉に必要な要素とは。コピーライター・阿部広太郎氏と、歌人・枡野浩一氏、異なるフィールドで「言葉」を追求する二人が紐解きます。

コピーと短歌、似ているようで違う「言葉」の世界

対談ではまず、コピーと短歌の関係性についてから始まった。阿部氏自身、宣伝会議コピーライター養成講座の同期生でもある木下龍也氏の歌集発売時に、短歌の五七五七七のリズムを意識したコピーを作成した経験がある。

阿部氏は、コピーを「新しい物事の見方や考え方、ハッとするような気づきへと導いてくれる『矢印』のようなもの」と捉える。一方、かつて広告会社でコピーを書いていた経験を持つ枡野氏は、最終的に多くの人の手が加わり「誰が考えても同じようなコピーになってしまった」という苦い経験から、短歌を「スポンサーがいない、自分の気持ちのコピーとして」書き始めたという。

コピーには明確な目的やクライアントが存在する一方、短歌は個人の内面や情景描写により重きを置く側面がある。しかし、どちらも受け手の心に作用し、新たな視点を与える点は共通しているようだ。

陳腐化との戦い、表現の「隙間」

言葉は時代とともにその意味合いや響き方を変えていく。

阿部氏は、駆け出しの頃に枡野氏の詩集『くじけな』に深く影響を受けたと語る。「くじけないで」から二文字減らした「くじけな」という言葉。枡野氏は「『くじけな』はそんなにヒットしなかったおかげで、そんなに陳腐になってないんですけど、もしあれがものすごく流行っていたら、もう多分今『くじけな』とか言うと、ちょっと鼻白むんじゃないかと思うんですよ」と語る。

どんなに新鮮な言葉も、広く知れ渡ることで手垢がつき、効力を失ってしまう「宿命」があるという意図だ。言葉にも旬とか鮮度があるので、コピーを考えるときも、当たり前になっているものを疑うところから始めるといいのではないかと阿部氏が続ける。

心に残る言葉を生み出すためには「突飛すぎず、凡庸すぎない、ちょっとした隙間」を突く難しさがあるとも語る。新鮮さを感じさせつつも、人の心に届く言葉を探し続けることが、言葉を扱う側に求められている。

トイレ、美術館。日常の「あるあるコピー」をアップデート

対談では、具体的な「コピー」を題材に、表現をアップデートする試みも行った。例えば、公共のトイレでよく見かける「いつもキレイに使っていただきありがとうございます」という貼り紙。これらは広く知られることで陳腐化し、意味をなさなくなってしまったコピーともいえる。

「面白いのは、あらかじめ『ありがとう』ということで、お礼が先回りしてるってことですよね。先に言うことによって意識をしてもらおうって作戦」と枡野氏。

この「先回りするありがとう」に対し、阿部氏は「立ち去るあなたの後ろ姿に、ありがとう」と、ありがとうを言うタイミングを未来にずらす案を提示。枡野氏は短歌で、
●「本日のトイレ掃除は(顔写真)阿部浩一が担当します」
●「美しくトイレをつかうあなたにはよい一日がありますように」
●「どのような器のものか厠での振る舞い方でわかる。謙信」
と3つの表現を提案した。

また、美術館などで見かける「撮影はご遠慮ください」という注意書きについても議論が及び、それぞれ短歌とコピーの視点から、一風変わった新しい表現が生まれた。

――本対談の全編は、宣伝会議公式YouTubeにて公開中です。是非ご覧ください。

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