フジテレビの問題を契機に、メディア企業の古い体質やコンプライアンスの不備が改めて問われている。番組制作における構造的な問題や属人的な労務管理、そして機能していない社外取締役制度。中央大学法科大学院教授で弁護士の野村修也氏は、業界全体の慣習を見直し、真に機能する統治体制と従業員によるリスクアセスメントの徹底こそが、改革の鍵になると語る。
不祥事が起こる背景を考える
テレビメディアのビジネスが複雑なのは、番組という「商品」そのものを視聴者が直接購入しているわけではない点にあります。雑誌や新聞は情報の受け手が対価を支払っていますが、民放の場合はスポンサーがお金を出している。すなわち視聴率が価格を決め、番組の質以上に「視聴者にチャンネルを合わせてもらう」ことが重視される構造です。
この構造のもとでは、どの局がより注目を集めるキャスティングができるかが競争の焦点となり、そうした能力に秀でた人物が出世しやすくなります。その結果、過剰なサービスや時代遅れの成功体験にすがる風土が生まれ、今回のような不祥事の温床となってしまったのです。
メディア業界ではもうひとつの問題として、暗黙知や属人的な業務の多さが挙げられます。契約形態もバラバラで、24時間体制の現場では労働時間の管理も困難。こうした構造を放置すれば、トラブルが起きるのは時間の問題です。