今回のフジテレビ問題は、メディアにとって「信頼」が生命線であることを改めて浮き彫りにした。メディア論の専門家・飯田豊氏は、問題の根本は「説明責任」の欠如にあると話す。企業とメディアは、広告の意図や報道の方針を事前に明示し、透明性を確保することでしか信頼は取り戻せない。情報があふれる今だからこそ、質と信念に基づくメディアの在り方が問われている。
これからは“炎上前”の説明がカギ
今回のフジテレビを巡る問題は“氷山の一角”であると多くの人が捉え始めているなかで、メディアも広告主も「広告を出すということはどういうことなのか」を根本から考えるべきだと飯田氏は指摘する。そして、広告主は「なぜ広告を出稿し」「なぜこのメディアを選んだのか」といった意図を説明できる準備をしておく必要があると強調する。
例えば、3月30日にタレントの萩本欽一氏の事務所「萩本企画」がフジテレビで放送したCMには、厳しい批判の声が集まった。
「萩本氏は制作会社・テレビマンユニオンの大株主のひとりでもあり、今回の問題で疲弊しているであろう現場スタッフをねぎらう気持ちもあったと考えられます。もし事前にご本人から何らかの説明があれば、ここまで大きく炎上しなかったのでは。従来は“炎上後”の初動が重視されていましたが、メディア不信の広がりを前提にすれば、これからは“炎上前”の説明がカギになると考えます」。
これは放送局も同様だという。これまで放送内容の判断は法令やガイドラインに基づいて行われてきたが、今やネットで簡単に情報が得られる時代。「なぜ報じないのか」「圧力がかかっているのではないか」と、視聴者の不信感は強まっている。
例えば、自殺報道であればWHOが示す国際的なガイドラインがある。こうした「伝えない理由」を積極的に説明する姿勢が、今後は不可欠になるだろうと飯田氏は指摘する。