地域企業の取り組みを紹介するマーケティングイベント「アドタイデイズリージョナル2025春」(大阪会場)が2月に開かれ、フェリシモの市橋邦弘氏とMMOL Holdings(ミリモルホールディングス)の河野貴伸氏がテクノロジーを活用したEC事業からの事業拡張について、PLAN-Bの森山佳亮氏はインフルエンサーグロースモデルについて、それぞれ紹介した。
自社の物流システムを改善し、新たなビジネスを開始
神戸に本社を構え、ダイレクトマーケティング、サブスクリプションコマース、自社システムや物流センターの運営などを行うフェリシモ。これまでに培った知見をもとに新しい事業にも取り組んでおり、新規事業のコンサルティングを行うMMOL Holdingsと交えて、新しいビジネスやブランドを立ち上げることについて対談した。
フェリシモは、第二・第三の収益の柱を立てるために、10年ほど前に新事業開発本部を設立した。
その1つが物流クライシス対策・共同配送の「FELISSIMO FULFILLMENT SERVICE」だ。自社配送センターの物流波動で生まれる余剰リソースを活用して複数の荷主を誘致。他社荷主には、荷物を一定数預かって共同配送することで手間とコストの削減を実現した。10社前後の荷主と共同配送することで、積載効率が高まり、売上と利益について徐々に貢献し始めているという。API連携により自社センターを外部から利用することができ、ECカートと自動連携させながら共同配送を実現させた。
長年培った知見をもとにECから事業拡張
また、フェリシモは神戸市の子育て支援施策「こべっこウェルカム定期便」にも地域共創事業として参画している。新生児を持つ世帯に育児用品の配送だけでなく、配達員による見守りを実施。商品も神戸ゆかりの品に加え、体験型商品なども提案した。登録までの仕組みは、通常のクーポン型ECサイトと同じ。市からの出生届情報に基づき利用券を発送し、ECサイトに登録する流れとなる。その後、利用者は初回のプレゼントを申し込み、定期便商品を最大10回受け取ることができる。
神戸市からの要望は、乳幼児や保護者の定期的な見守りを実現したいということだった。その解決策として、「要件に合わせた人材手配とシステムサポート、EC上流から運用フローの検討から構築するノウハウ、品質を担保するシステムを提案しました」と市橋氏。この活動は、日本経済新聞社・日経BPによる「共働き子育てしやすい街ランキング」で神戸市が全国1位となる後押しとなっている。そのほか、サブスク支援事業を展開し、単品販売が大半であった産地直送ECサイト運営事業者に商品企画と媒体制作を支援し旬の食材を月1回定期便で送り、食べ比べができるように。リテールメディア事業では、フェリシモ公式ECサイトに定期的に訪れる月数百万の30~50代女性に記事広告を配信し、同梱広告、座談会イベントなど、連携したコラボレーションメニューを提供している。
「当たり前のようにやっている得意なことで、他社から見るとすごいと思われることを見つけると、新規事業の可能性が高まるのではないか」と市橋氏は語る。
新規事業の成功の理由は
続いて、MMOL Holdingsの河野氏と新規事業の成功は何かについてディスカッションを行った。始めに河野氏は「新規事業は総合格闘技」だと話し、その理由に「経営やマーケティング、物流、システム、ブランディング、人事などあらゆる要素が複雑に絡み合うため成功への難易度が高い」と説明。その上で、新事業に取り組んだ感想を市橋氏に問うと、「何をしていても無駄なことはなかった、いろいろな部署で経験したこと全てが役立っている」と回答した。
さらに河野氏は「あらゆる経験がマーケティングに生きる」をキーワードに挙げ、ECと物流の知見がD2Cやサブスクなど新しいビジネスモデルをつくる上で重要だと説明。視点がどう変わったかと質問すると、「マーケティングの視点でいえば、4Pのうちの『Promotion』に焦点が当たりがちですが、商品開発やプライシング、コールセンターでの経験が生きていると思います」と答えた。
そして、河野氏は3つ目のキーワードに「ECは1チャネルでしかない」と挙げ、物販だけでなく、既存事業とオンライン・オフラインを統合して、収益源やブランド体験を多角的に創造する視点を持つことを強調した。
4つ目に「オープンイノベーション・パートナーシップ」を挙げ、自社だけで完結しないこと、地域や他企業・団体との共創が新規事業創発の大きな原動力になると話す。市橋氏は「困った時に相談できる場所に普段から出向くことが大切」だと話す。
最後に河野氏は「マンパワーだけで押し切らない」を挙げ、テクノロジーやAIで人不足を回避することが大事だと話す。「これを機に何かご一緒出来たらと思います。皆さんの得意なことと掛け合わせて、何か新しい取り組みができたらうれしいです」と市橋氏はまとめた。
自社では気づかない魅力がインフルエンサーにより明らかに
インフルエンサーマーケティングを手掛けるPLAN-Bは、「Cast Me!」というサービスで、1.5万人を超えるインフルエンサーとのマッチングツールを展開し、消費者目線のクリエイティブを大量生成できる環境を構築している。
森山氏は、インフルエンサー施策のコストを抑えて、売上を最大化させる方法を説明するにあたり、インフルエンサー投稿による成功事例を紹介した。
ドウシシャは、インフルエンサーの投稿が300万回以上再生され、売上に大きく貢献。アサイン費用は2万円だった。DINOS CORPORATIONは、インフルエンサー投稿をきっかけにユーザーコミュニケーションが活発に。しまうまプリントはインフルエンサー投稿を広告に活用し、リーチ単価15%減に加え、新たなターゲット発掘ができた。
「インフルエンサーグロースモデル」における4つのステップとは
森山氏は、インフルエンサー施策をうまく回す秘訣を4つ紹介した。1つ目は、成果につながる人選となる「マッチング」だ。フォロワーの属性との相性や、インプレッション数・保存数を伸ばせるかどうか、さらにインプレッション単価を抑えられるかを重視するという。インプレッション数と保存数については、過去のPR案件から判断する。Instagramのコンセプトが「興味のあるものや欲しいものに出会う」であることから、投稿の保存数が増えれば増えるほど、アルゴリズムで上位表示され、さらにバズりやすくなる。インフルエンサーの投稿をバズらせるためには、商品情報をしっかりと伝え、「欲しい」と思わせることが重要だそうだ。
また、森山氏は、インフルエンサー施策を行うときに「インプレッション単価が3円を超えると高いと認識すべき」と伝えた。インフルエンサーは、1人あたり1円とフォロワー数を基準に料金を相談することが多いが、「事業者側としてはどれだけインプレッションできるかで判断した方が得策」と話す。
2つ目は、勝ちパターンを特定する「インフルエンサークリエイティブ」だ。インフルエンサーの投稿を作って終わらせるのではなく、どの切り口や表現が効果的だったかを分析する必要がある。高反応だった投稿の共通点を抽出し、ターゲット別の訴求軸や表現の傾向を可視化させる。そうすることで、コンテンツとインフルエンサーの掛け合わせパターンを整理できるようになる。
3つ目は、二次利用によって拡大を図る「インフルエンサーアンプ」だ。森山氏によると、投稿を特に広告素材、LP、Webサイトなどに再利用することが重要だという。バズった投稿はアルゴリズムにより次第に止まってしまうが、広告に転用することで再現することができる。ショート動画のプロ達をうまく活用すればアカウントのフォロワー数も伸ばすことができる。ショッピングサイトの「コレイヨ」はインフルエンサー投稿により、売上が3倍に上り、売上の増加とともにInstagramアカウントのフォロワーも大きく伸長したという。
4つ目は、ブランド戦略へ展開を図る「ブランディングアンプ」だ。人選びからクリエイティブ、二次利用のサイクルを回し続けると、成果が上がり、ブランドの新しい戦い方が備わるという。森山氏は「最適なインフルエンサー施策のPDCAを回していくことで、新たな訴求の切り口や商品開発のヒントなど、ブランディング戦略における新たな気づきを得ることができます」と話す。
最後に森山氏は、「Cast Me!」のサービス内容を説明。在籍する1.5万人のインフルエンサーと自由にマッチングできるプラットフォームで、商品数、案件数、採用人数など全てが無制限で利用できる。インフルエンサーとのマッチングは、案件を公開募集する公募式、好みのインフルエンサーを探し、直接オファーをかける指名式がある。投稿クリエイティブは、すべて2次利用無料という点もある。また、「ノウハウの不足を解消するためにカスタマーサクセスも設けていますので、ぜひご検討いただければと思います」と締めくくった。

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