「Panasonic Beauty(パナソニックビューティ)」ブランドを担うパナソニックの美容家電部門は、2022年からブランドマネジメント制を導入している。それまで同社では、商品企画機能と販売戦略などのマーケティング機能はそれぞれ別組織に置かれることが多かった。
顧客起点のブランドマネジメントを実践するため、P&Gや資生堂などでマーケティング組織を率いてきた音部大輔氏のコンサルティングを受けながら組織改革を進めている。ビューティブランドマネジメント部の神本暁部長は、音部氏の著書『君は戦略を立てることができるか』を部門のメンバーに配布し、「戦略」の考え方を組織に浸透させている。顧客視点の「戦略」を実践することで、どのような成果が生まれたのか。
市場変化を迅速に捉えるための組織改革
――音部さんの戦略メソッドを取り入れることになったきっかけを教えてください。
神本:「Panasonic Beauty」の総合的なブランドマネジメントを担う組織として、2022年10月にビューティブランドマネジメント部が新設されました。従来の機能別組織で起こりがちな「バケツリレー」方式の弊害である業務の分断や、市場ニーズ把握の遅れといった課題を解決するため、商品企画とマーケティングの機能を統合した組織です。立ち上げにあたり、音部さんから「ブランドマネジメントの本質は顧客起点である」とのアドバイスを受けながら、2021年頃から準備を進めてきました。
パナソニック ビューティ・パーソナルケア事業部 ビューティビジネスユニット ビューティブランドマネジメント部 部長 神本暁 氏
――そのような体制を敷いた背景や、ビューティ関連事業を取り巻く市場環境について教えてください。
神本:美容家電市場の特徴として、「美顔器」「高機能ドライヤー」「ムダ毛ケア」などの各カテゴリーに特化したメーカーが多いことが挙げられます。パナソニックはヘアケア、フェイスケア、ボディケアと幅広く全方位的に製品を展開していますが、スピード感と小回りの良さを武器とする専業メーカーに勝つためには、各分野をより深掘りし先鋭化する必要があります。そのため、商品企画段階から全職種連携による顧客視点の商品開発体制を構築する必要があると考えました。
加えて美容家電は、冷蔵庫や洗濯機のような必需品ではなく、いわば「必欲品」です。「この商品が欲しい」とお客様に思っていただける商品を開発するためには、顧客理解に基づいたマーケティングで需要を創出し、市場をリードしていく必要があります。市場変化を迅速に捉え、機動的に対応できるブランドマネジメント体制が不可欠でした。