コロナ禍のなかで広報に異動 社会情勢と経営を連動させ、ストーリーをつくり発信(ANAホールディングス・坂巻 佑太さん)

広報、マーケティングなどコミュニケーションビジネスの世界には多様な「専門の仕事」があります。人事異動も多い日本企業の場合、専門職としてのキャリアを積もうとした場合、自分なりのキャリアプランも必要とされます。現在、企業のなかで広報職として活躍する人たちは、どのように自分のキャリアプランを考えていたのでしょうか。横のつながりも多い広報の世界。本コラムではリレー形式で、「広報の仕事とキャリア」をテーマにバトンをつないでいただきます。ファミリーマートの樋口雄士さんからの紹介で今回、登場するのはANAホールディングスの坂巻佑太さんです。
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坂巻 佑太氏

ANAホールディングス
広報・コーポレートブランド推進部

2004年4月 全日本空輸株式会社 入社
2020年4月 ANAホールディングス 広報・コーポレートブランド推進部兼 全日本空輸広報部へ異動。

Q1: 現在の仕事の内容とは?

現在の私の仕事は、ANAホールディングスと全日本空輸の広報担当として、主に国内報道対応を担当しています 。具体的にはプレスリリース、取材、会見、運航状況、リスク対応などの報道機関とのコミュニケーションを実施しています。

特に公共交通機関であることから、航空機の運航イレギュラー(天候・整備事由なども)の事態や危機管理に24時間365日対応することが求められます。また、コロナ禍を経て広報活動の内製化を進めました。社会情勢や世論の動向を捉え、経営、社内の動きと連動させストーリーを作ることや、取材会や会見なども記事化されるための発信力に力を入れています 。加えて、オウンドメディア(SNS、Web記事)や社内報などの広報チャネルを広報部内のチームと連携して活用し、露出の最大化を図っています 。

Q2: これまでの職歴は?

大学卒業後、2004年に全日本空輸に入社しました 。最初の配属では羽田空港の旅客ハンドリング業務(チェックインや搭乗ゲートの改札業務など)に従事しました 。なんとかお客様・先輩たちの役に立とうと必死に空港を走り回っていました。毎日が充実した楽しい社会人生活のスタートを切りました。

その後、客室乗務員として国内・国際線への乗務、航空局調整や安全・規定に関する業務、海外ベース客室乗務員の企画、委託管理、採用などに携わりました 。その後、成田空港で再び国際旅客ハンドリングの現場オペレーションを経験、2016年からはANAシカゴ空港所に異動し、空港責任者として旅客機オペレーション、貨物専用機の新規就航準備、現地組織マネジメントに従事しました 。そして、2020年4月より現職を担当しています。

広報に異動してきた2020年はコロナ禍突入のタイミングでした。会社経営が非常に厳しい状況に陥っていき、報道が加熱していく様を最前線で経験することとなりました。当時は「ANA」の名前を取り上げていただき、存在感を出すことにがむしゃらに努めました。経営が回復基調に乗ると報道関心は薄れていき、その環境下でいかにANAを取り上げていただくかに試行錯誤の日々を過ごしました。結果、一連の時間は企業広報としてかけがえのない貴重な経験となりました。

また、先にも述べましたが、経営が厳しくなる中で1円でもセーブするために広報活動をほぼ内製化しました。お客様とのエンゲージメントを維持し、コロナ禍からの回復過程では航空機利用の機運を醸成するにあたり、どのようにすればメディアに取り上げてもらえるのか、記者とのコミュニケーションを沢山とり、多くを教えていただきました。情報を集め、タイミングを見極めて、瞬発的に手作りの取材会・会見を行うことを繰り返し実践しました。

ANAでは社内でよく「ピンチをチャンスにしよう」と声を掛け合います。予算がなくて手作りせざるをえなかった経験が、今では広報部の知見として積みあがりました。

Q3: 転職や社内異動などに際して、強く意識したこととは?

私の場合、異動先は選べませんでしたが、与えられた職務を通じて極力多様な経験を積むことを意識しました。一つの専門分野に留まらず、空港オペレーション、客室乗務、企画、マネジメント、そして広報と、幅広い職務に挑戦することで、多角的な視野と対応力を養うことができました。特に、シカゴ空港でのマネジメント経験は、異文化環境での組織運営や、採用、委託会社選定、新規オペレーション立ち上げなど、広報の仕事にも通じる貴重な経験となりました 。これらの経験は、広報として社会情勢や多様なステークホルダーを理解し、最適なコミュニケーション戦略を立案する上で、大いに役立っています。

また、当然ですが「何をするか」も重要ですが「誰とするか」も、とても重要で、仲間・チーム作りにも時間を掛けてきました。今まで共に仕事をしてきた仲間の存在は私の財産であり、今でもいつも助けてもらっています。

Q4: 国内において広報としてのキャリア形成で悩みとなることは何?

広報キャリアの悩みとして、専門性の深化とキャリアパスの多様性のバランスが挙げられると思います。広報の仕事は、メディアリレーションズ、ソーシャルコミュニケーション、危機管理、社内広報など多岐にわたりますが、一つの分野を深く追求するだけでなく、変化の激しい社会において常に新しいスキルを習得し、幅広い視野を持つことが求められると思います。加えて、広報以外の経験は多角的な視点で物事を捉える力を養う重要な機会であります。広報内外双方でのキャリアの積み上げのバランスをどのようにしていくかは悩ましい点かと思います。

Q5: 広報職の経験を活かして、今後チャレンジしたいことは?

これまでの広報職の経験を活かして、今後はANAグループの企業価値向上に、より戦略的に貢献していきたいと考えています。具体的には、広報活動を通じて、ANAグループのブランドイメージをさらに高め、持続的な成長を支えるとともに、社会からの信頼と共感を獲得できるような、統合型コミュニケーション戦略を構築していきたいです。また、広報の専門家として、社内外への情報発信だけでなく、経営戦略や事業戦略にも積極的に関わり、広報の視点から企業経営に貢献していきたいと考えています。

【次回のコラムの担当は?】

ソニーグループ 広報部コーポレート広報グループ ゼネラルマネジャーの石 奈美子さんにバトンをお渡しします。石さんは誰もが知るグローバルカンパニーの広報を約10年担当されています。コーポレートから商品、技術広報など、マーケティングや技術領域の知見を活かして幅広く経験し、現在は、コーポレート領域から、ゲーム・音楽・映画などのエンタテインメント領域までご担当されていらっしゃいます。海外メディアの取材対応などグローバルPR活動にも注力され、海外に本社を持つ事業とも日々連携して業務を行っていらっしゃるとのこと。これから広報キャリアを歩んでいく方にとって、魅力的なお話を伺えると思います。

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