そうした中、Hakuhodo DY ONEは、いち早くAIエージェント導入支援サービスの提供を開始した。AIコンサルティングの最前線で活躍する中原柊氏と渡辺亮介氏に、その狙いやAIエージェントの現状と未来、導入を検討するにあたり留意すべきことについて聞いた。
AIエージェントが組織にもたらすインパクト
2022年のChatGPT登場以降、AIはあらゆるビジネスシーンに急速に浸透しつつある。2025年は、「AIエージェント元年」と呼ばれているが、これまでのAI活用とは何が違うのか。
Hakuhodo DY ONEで企業のAIの導入・活用支援を行う渡辺亮介氏は、OpenAIが開発したAIエージェント「Operator」を例に挙げて説明する。
「〇〇というレストランを19時に2人で予約したい」と指示するだけで、OperatorはWebサイトにアクセスし、条件に合うレストランを探し、予約手続きまでの一連の流れをOperator自身が判断し、自律的に遂行する。仮に希望の時間帯が満席だった場合は、前後の日時の空き状況を確認したうえで「19時45分なら空いていますが、どうしますか?」と指示者に相談のうえ調整し、「予約する」というミッションを完遂する。まるで気の利いた部下のようだ。
チーフAIストラテジストの中原柊氏は、「従来のAI活用は、生成AIなどを用いた業務効率化、いわば『AIアシスタント』としての利用が主流で、全社員の生産性を薄く広く向上させることを目的としていました。しかしAIエージェントは、特定のタスク・業務の生産性を飛躍的に向上させる、より大きなインパクトを持つ技術です」と語る。
Hakuhodo DY ONE チーフAIストラテジスト 中原柊 氏
AIエージェントの導入と実用は国内外ともに始まったばかり。その最初の「ターゲット」として挙がりそうなのがマーケティング部門だという。「マーケティング領域は、他部門と比較して比較的収益へのインパクトを見せやすい領域でもあるため、AIエージェントの活用による成果への期待が高まっています」(中原氏)
一部領域はすでに「コンサルタント5~6年目レベル」
そもそも「AIエージェント」とは何か。リサーチ大手のガートナーによると、「デジタルおよびリアルの環境で、状況を知覚し、意思決定を下し、アクションを起こし、目的を達成するためにAI技法を適用する自律的または半自律的なソフトウェア」と定義している。
Hakuhodo DY ONE シニアサービスプランナー 渡辺亮介氏
「これまでは、『バナー広告をつくりたい』という場合、キャッチコピー作成、画像生成、それらの組み合わせといった個別のタスクをそれぞれのAIに指示を与える必要がありました。AIエージェントであれば、『バナー広告がほしい』という最終目的を伝えるだけで、テキスト生成AIや画像生成AI、編集ソフトにそれぞれ必要なタスクを振り分け、自律的に実行してくれるのです」(渡辺氏)
AIエージェントは、必要な複数のタスクに分割して進行することが可能
これらのAIエージェントの特徴は、「作業設計」「報連相(報告・連絡・相談)」「守備範囲」という3つのキーワードで説明される。
まず「作業設計」とは、タスクを分解し、実行手順を計画する能力のこと。LLM(大規模言語モデル)の進化により、AIエージェントは人間が自然に“タスク”だと認識する粒度の作業を分解し、実行手順を計画できるようになった。そのような漠然とした指示で仕事をこなそうとすると、当初想定していなかったトラブルが起こる確率も高まる。
そこでAIエージェントが人間と連携する際に重要な要素が「報連相」だ。AIエージェントは、想定外の事態が発生した場合、人間に相談する判断を行う。そのため、特定の目的だけに特化された生成AIなどの集合体として、AIエージェントが対応できる業務領域の「守備範囲」が広がり、より複雑なタスクにも対応できるようになった。
「現在のAIエージェントはまだまだ発展途上です。ただ、ネットリサーチなど特定領域では実用レベルに達しており、私の感覚ですがアウトプット精度は5~6年目のコンサルタントに匹敵します。AIエージェントは新卒社員への業務指示の粒度でタスクをこなしてくれる存在であり、状況に応じて適切な報連相も行うまさに“デジタル従業員”といえます」(中原氏)
組織改編の必要性も AIエージェント導入は経営課題
Hakuhodo DY ONEは2023年4月から、DXコンサルティング事業の一環として「AIコンサルティングサービス」を提供している。具体的には生成AI活用支援、PoC(概念実証)実施、コーチング、人材育成などのメニューがあり、AIシステムの導入だけではなく、企業内で最大限に活用するための仕組み・気運づくりまでを目的としたフルサービス型の体制を整えている。
2025年からは、企業のニーズの高まりを受け、新たにAIエージェント導入支援サービスを開始した。一般的に、AIシステムの導入が生産性を「広く・薄く」向上させるのに対し、AIエージェントは「狭く・深く」インパクトをもたらす。AIエージェントに業務の一角を任せるために必要な業務プロセス・システム構想支援、組織変革・文化共創促進支援まで、包括的なコンサルティングサービスを提供している。博報堂DYグループの強みである生活者発想、クリエイティブ力、戦略プランニング力をベースに、コンサルティングファーム出身者による高度な分析力・企画力を融合した課題解決力が強みだ。
Hakuhodo DY ONEの「AIコンサルティングサービス」に新たにAIエージェント導入支援を追加
博報堂DYグループのデジタルコア(デジタル中核企業)を掲げるHakuhodo DY ONEは、自社内でのAI活用も積極的に推進している。AIエージェント活用のポイントについて渡辺氏は、「『24時間365日働けるデジタル従業員』が入社してくるようなもの。既存業務に組み込むにあたって、組織構造や人員配置を含めたリソース配分の見直しが必要になるケースが多い」と語る。
例えばコンテンツ制作でAIエージェントを導入した場合、大量生産が可能になり「制作」工程が効率化される一方で、「チェック」や「企画」工程に新たなボトルネックが移っていく可能性があるということだ。
業務の「ボトルネック」が変わり、人的リソースの再配置が必要になることも
「『AIで楽になった分、人間は高付加価値業務を』という理想形は、簡単に実現できません。人間のリスキリングは時間がかかりますし、AIの進化の方が早いですから。営業担当者のリサーチ工数が半分になり、空いた時間で提案活動に注力するとしても、今まで提案営業をしてこなかった人がすぐに提案内容を考えられるようにはなりません。単なる技術導入の側面だけでなく、AIエージェント導入後の業務プロセス、組織構造、人材育成までを考慮した包括的なプランニングを行い、経営戦略全体を再考する必要があります。そこに、私たちのコンサルティングの介在価値があると考えています」(中原氏)
マーケティング部門は、他部門に比べて外部パートナー(ベンダーや広告会社など)が多い傾向にあるため、「どの仕事を人間が行うか」「どこをAIに任せるか」の選択肢も複雑で多様になりがちだ。さらに、AIエージェント導入となると、DX推進部門やIT部門、営業部門、経営企画部門など、他部署との連携も必須だ。
「マーケティング部門は、全社的なAI活用を推進する際のパイロットになりやすく、経営陣からの期待も高く注目されやすい。他部門が将来直面するであろう課題を先取りする『課題先進領域』だからこそ、AIエージェント導入支援にはマーケティング部門特有の難しさとやりがいがあります」(中原氏)
博報堂DYグループのDNA「生活者発想」に強み
Hakuhodo DY ONEは、AI、業務・組織、ITといった多様な領域の専門家がワンチームとなりプロジェクト推進できることが強みだ。「戦略策定、システム構築、業務設計といった各フェーズをワンチームで対応できるため、クライアント企業の負担を軽減できます。専門家チームは同じ会社に所属していることもあり、物理的にも近い距離で連携しています。そのため、迅速かつ柔軟な対応が可能です」(渡辺氏)
「博報堂DYグループの強みは『生活者発想』です。AIエージェントは、企業の生産性を高める『デジタル従業員』であると同時に、企業と生活者の接点を担う重要な存在でもあります。企業目線だけで開発を進めると、生活者から敬遠されるAIが生まれてしまうかもしれない。1億2000万人の生活者一人ひとりに愛されるAIエージェントを開発できるかが私たちの腕の見せどころであり、生活者発想という博報堂DYグループのDNAが活きる領域だと考えています」(中原氏)
AIエージェントコンサルティングサービスの資料ダウンロードはこちら

お問い合わせ

株式会社Hakuhodo DY ONE
住所:〒107-6316 東京都港区赤坂5丁目3-1 赤坂Bizタワー
URL:https://www.hakuhodody-one.co.jp/
お問い合わせフォーム:https://form.hakuhodody-one.co.jp/contact-c
DIGIFUL:https://digiful.hakuhodody-one.co.jp/
Hakuhodo DY ONE Service:https://solutions.hakuhodody-one.co.jp/