若者はいま、「SHIBUYA」で何をつくれるの? 「渋谷未来デザイン」と、「まち」広告の未来を考える!

「SHIBUYA」は国内のみならず、世界的にもその名が知られる、日本の都市の一つ。渋谷駅前のスクランブル交差点やハチ公像、109やPARCOなどの商業施設は、観光スポットとしてだけではなく、アニメや映画など創作のなかでもよく描かれ、東京の「まち」の象徴(=アイコン)として機能しています。

 

SHIBUYAという名前やアイコンが広く認知されているということは、その「まち」の大きな強みになり、これが「まち」に「ブランド」をもたらします。

 

これまで「まち」自体が強力なブランド力を持ち、そして広告としての機能も果たし続けてきた渋谷は、これからどこに向かうのでしょうか。また渋谷がこれまでは若者の街としてのブランドを帯びてきた歴史をふまえたとき、これからの若者は、どのように「SHIBUYA」の「まち」づくりに貢献していくことができるのでしょうか。

 

そんな渋谷の未来を構想し、まちづくりのデザインを担うのが、「渋谷未来デザイン」です。渋谷区では2017年に策定された「ちがいを ちからに 変える街。渋谷区」の基本構想に沿って、2018年4月に産官学民連携組織である「一般社団法人渋谷未来デザイン」を設立。「渋谷未来デザイン」は、渋谷を拠点に、産官学民をつなぎ、「未来の都市」のあり方をデザインしていく組織です。

 

今回は、現在理事・事務局長をお務めの長田新子さんに取材をしました。本記事は、教育学を専攻する現役大学生、そして若者としての筆者の視点も交えながら、お届けしたいと思います。

 

※本記事は情報、メディア、コミュニケーション、ジャーナリズムについて学びたい人たちのために、おもに学部レベルの教育を2年間にわたって行う教育組織である、東京大学大学院情報学環教育部の有志と『宣伝会議』編集部が連携して実施する「宣伝会議学生記者」企画によって制作されたものです。企画・取材・執筆をすべて教育部の学生が自ら行っています。

※本記事の企画・取材・執筆は教育部所属・佐藤良祐が担当しました。

写真 人物 渋谷未来デザインの長田さん(写真右)と取材を行う、学生記者の佐藤さん(左)。

渋谷未来デザインの長田さん(写真右)と取材を行う、学生記者の佐藤さん(左)。

--渋谷未来デザインは、産官学民の連携を促進する組織として設立されたと聞きました。私自身は現在、大学に通う学生なので、産官学民のうち「学」がどのように参画しているのかを教えてほしいです。

長田:例えば、私たちが企画・運営する行政、企業や地域が共創プロジェクトを生み出すプラットフォームである「SOCIAL INNOVATION WEEK」は、まさに産官学民連携を目指すソーシャル&カルチャーデザインの祭典です。

この中で「学」との取り組みで言うと、例えば文化服装学院の生徒さんとコラボしたファッションショーを開催したりしています。2024年10月~11月に開催した「SOCIAL INNOVATION WEEK」では、文化服装学院の生徒さんと「スマートドリンキング」を提唱する、アサヒビールさんが連携。スマドリを体験できるノンアル・ロー アルバー「SUMADORI-BAR SHIBUYA」で提供するドリンクを イメージしたコーディネートを企画し、披露してもらいました。

このように「SOCIAL INNOVATION WEEK」に限らず、民間企業の方にお題を出してもらい、そのお題に対する企画を学生さんとコラボして実現。加えて、それを街の中で実装する、インストールすることまで目指すようなプログラムはよくやっています。

写真 2024年10月18日〜11月10日に開催された「SOCIAL INNOVATION WEEK 2024」には総勢244名のスピーカーが参加し、連携イベントを含む全会場の来場者とオンライン視聴者の合計で、延べ15万人が参加した。パネルディスカッションでは、長田氏がモデレーターも務めた。

2024年10月18日〜11月10日に開催された「SOCIAL INNOVATION WEEK 2024」には総勢244名のスピーカーが参加し、連携イベントを含む全会場の来場者とオンライン視聴者の合計で、延べ15万人が参加した。パネルディスカッションでは、長田氏がモデレーターも務めた。

渋谷区は多様性を重視した街づくりを推進しているのですが、産官学民の取り組みに学生さんのような若い方が入ってくると、プロジェクトに違う視点がもたらされると感じます。そして違う視点を持った人たちが集い、一緒にプロジェクトを推進することで、イノベーションも生まれるはず。そこで私は、学生さんとのプロジェクトには、可能性を感じています。

--地方自治体が渋谷区のように、もっと「官」は「学」との連携を増やすためにはどうしたらよいと思われますか。

長田:私自身が産官学民の取り組みを進める中で一番難しいなと思っているのは、行政と大学とか、行政と専門学校とか、直でやると一過性のイベントで終わってしまい、社会実装につながるようなプロジェクトにまで至らないことです。学生さんとの取り組みでも、単にアイデアを聞いて終わりではなく、何かしら街の中で実装できるところまで進められるとよいのではないでしょうか。

行政も企業も若者の皆さんの意見は欲しい。ただ意見をもらった後に、その意見をどのように実際にプロジェクト化するのかとか、あるいは一緒に何かを生み出すみたいなプロセスはうまくつくれていないな、と感じています。

そこで、私は渋谷未来デザインのような中間組織が関係者の間に入り、調整することで、実装につながるプロジェクト化ができるのではないか、と考えて活動をしています。

--街は、ゾーニングの機能もはたしますよね。渋谷という地域に紐づくことで、プロジェクトに触れる人を意図的に制限することができる。その共同体のなかで信頼関係が構築されているのであれば、若者も挑戦がしやすくなって、新たな文化を生み出していくことができるのではないかと思います。

長田:渋谷区という街の魅力は、常に新しい文化の発信源となってきたことにあります。例えば、原宿などは常に新しいファッションを生み出してきましたよね。渋谷という街では人とは違う格好をしていても、あまり気にされないというか、受け入れてもらいやすい。
これって、渋谷だからこその特性だと思うんです。

一方でいま、私たちが懸念しているのが、再開発が進む中で、そうした渋谷ならではの文化が薄れることにならないか、ということです。高層ビルが立ち並び、新しい商業施設が次々と登場しているけれど、どこも同じようなお店が入ってつまらなくなったりしていないだろうか、と。

すでにこうした課題感をもって、ディベロッパーの方と地域の商店街の方などが集まり、議論を始めています。

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