ユーザベースがパーパスを取り下げた理由 「信じられる言葉」を生み出すために尽力した理念の再考

2025年12月、ユーザベースは2021年に掲げたパーパス「経済情報の力で、誰もがビジネスを楽しめる世界をつくる」を取り下げ、かつてのミッション「経済情報で、世界を変える」を改めて掲げ直した。この「パーパス改定プロジェクト」に取り組んだ、同社執行役員 プロフェッショナルサービス事業 組織人材領域担当の小川望氏と、執行役員 カルチャー&ブランドコミュニケーション統括の菅原弘暁氏に背景や狙いを聞いた。

写真 小川望氏と菅原弘暁氏

小川望氏(左)
リクルートで保育系事業「キッズリー」を立ち上げ。ドリームインキュベータではブランディング組織を発足し、投資先支援や自社のMVV策定等を遂行。2024年より現職。RCSC連携研究員。

菅原弘暁氏(右)
2014年にPR Tableを共同創業し、広報コンサル、SaaS立ち上げ、カンファレンス主宰などシリーズCまで事業と組織の成長を牽引。20年12月に取締役を退任し、21年7月よりユーザベースに参画。

違和感は「使われ方」から

━━パーパスを見直そうと考えたきっかけを教えてください。

菅原:2021年にパーパスを策定した時点では、私自身は特に違和感を持っていませんでした。当時は入社して間もなく、「新しいパーパスになるんだな」と受け止めていました。違和感を覚え始めたのは、その後しばらく経ってからです。特に印象的だったのは、経営陣が外部登壇などでほとんどその言葉を使わなかったことでした。

使わない理由を聞いてみたところ、「長くて覚えられない」「言いづらい」という答えが返ってきました。ただ、本当に信じている言葉ならば長さは関係ないのではないかとも感じていました。

「長いから使わない」という説明には腑に落ちないものがありました。言葉の問題ではなく、本当に腹落ちしている言葉になっていないのではないか。そんな違和感が積み重なっていったのです。

━━経営陣の腹落ち具合への違和感があったのですね。

菅原:社内での受け止められ方に対して思うところもありました。「誰もがビジネスを楽しめる世界をつくる」という言葉は、本来は顧客や社会を含めた広いステークホルダーに向けたものでした。しかし実際には、「誰もが」の対象が従業員自身に寄って解釈される場面が少なくありませんでした。

例えば、「この組織目標では、私はビジネスを楽しめていない」といった声を耳にすることもありました。その人たちが悪いわけではなく、そう受け取られるような環境や文脈があったのだと思います。

コロナ禍を経た価値観の変化や従業員の意思を大切にする当社の組織 文化もあり、「誰もがビジネスを楽しめる」という言葉が従業員自身へのメッセージとして受け取られるのは自然なことだったと思います。本来込めていた意図と実際の解釈との間にはズレがあり、それが少しずつ蓄積していきました。

写真 図

AI時代を見据え理念を再考

━━見直しが本格的に動き出したのはいつ頃だったのでしょうか。

菅原:違和感自体はかなり前からありました。ただ、実際に動き出したのは2025年に入ってからです。大きな理由のひとつはAIです。AIの進化により、これまで提供してきたサービス価値がそのまま通用するとは限らないという危機感がありました。

同時に単独CEO体制へ移行した時期でもあり、当社は何を目指し、どんな価値を提供するのかを改めて問い直す必要があると感じていました。

ちょうどその頃、中期経営計画を策定していたのですが、ある場で経営陣の一部から「まず中計を作り、その後で理念を考えればいいのではないか」という意見が出たのです。ただ私は、その順番は違うと思いました。もちろん中計は重要です。しかし、本来は理念やミッションがあり、その実現手段として戦略や中計があるはずです。いくら忙しいとはいえ、理念より先に中計を作るという発想に、強い危機感を覚えました。

そこで代表の稲垣と目線を揃えて、中計策定と理念再定義を同時進行で進めることを決定しました。

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